ここは尸魂界(ソウル・ソサエティ)学園高等部。変な名前のとおり変な学校で来てるやつも変なやつばっかしだ。
今日もその変な学校に行くために朝から準備してんだけど・・・・・・・親父がうぜぇ・・・。全力で絡んできやがるからこっちも全力で突っ込まなきゃなんねぇし・・・・あぁもぅ!恋次のやつまだこねぇのかよ!!いつもはもぅちょい早く迎えに来るくせに!!
 そう思った矢先けたたましく呼び鈴が鳴る。このせわしない鳴らし方は明らかに恋次だ。やっと親父から解放される!!
『いっっっっっっちごーーーーーーーーーー!!もぅ行くのかぁぁぁぁ!!』
『だぁぁぁッ!!うっるせぇな!!聞こえてんだろ呼び鈴!!恋次来てんだよ!!』
 俺は足に絡み付いてくる親父を蹴り飛ばし全力で走って外に出た。
いつもの事ながら勢いよく出てきた俺に恋次はビクッとする。
『ゎり・・・・待たせた・・・はょ』
『ぉ・・・ぉう・・・いつものことだがすさまじいなお前ん家』
『もぅあいつほんとどうにかしてくれ・・・・・ってか早くここから離れようぜ。あいつしつけーからまた絡んできやがるぞ・・・』
 親父から逃げるため俺は恋次の腕をひっぱり急がせる。恋次も俺の親父のしつこさを知っているため、俺の歩幅に合わせて小走りで歩き、学校へ向かった。


 一難さってまた一難とはこのことだろうか・・・・・? よりにもよって今日の門検査がコイツなんて・・・・・。
『なんやろねコレ。運命かなァ。朝から会えるやなんて・・・なァ?一護ちゃん』
『いや・・・・学校なんだし運命もなにも・・・・』
 国語教師市丸ギン。なんで俺の周りはいつもこんな絡みが強いやつばっかなんだ??
『今日は一護ちゃんとこのクラス国語ないから会われへん思て哀しんどったとこなんや』
『そっすか・・・・それはそれは・・・あの、遅刻するんで入れてもらっていいすか?』
『ええよ〜。その代わり僕とちゅぅしてか』
『先生!!!一護にちょっかいかけないでくださいよ!』
 市丸の言葉をさえぎり恋次が吼える。俺がまさに引き寄せられそうになった瞬間のことだったから助かった。ナイス恋次。
『えらい邪魔が入ってもたな・・・また今度しよな一護ちゃん』
『行くぞ一護!』
『あ・・・あぁ』
 ひらひらと手を振る市丸をよそに俺は恋次に引っ張られ校舎内へと連れて行かれた。

『一護。お前もぅちょっと警戒心持てよ』
 市丸のいた門から自分の教室である2−Aの教室まで恋次に引っ張られて来た一護はやっと落ち着いて自分の席に座る。恋次もその横である自分の席に座ると、少しムスッとした様子で肩肘をついて俺を見てくる。
『警戒心つったって・・・つーかなんで恋次がそんなキレてんだよ。まぁ助かったけど・・・』
『なんでって・・・・・』
 少し気まずい空気が流れたとき、丁度そこへ担任が入ってくる。
恋次も俺もそこでその話題は終了し、朝のショートホームルームを大人しく受けた。特にコレといって内容はなかったが・・・・・。
つーかなんで恋次はいつも俺のことそんな風にかまってくれるんだろう?自分のことみたいに怒ってくれたりする。そんなことされたら俺・・・・・期待しちまうよ・・・。
担任の話なんてそっちのけで頭に入ってくるのはそんな邪な考えばかり。振り払っても振り払っても離れてはくれない。
 一方の恋次も一見担任の話を真剣に聞いているように見えるが・・・・。
なんで一護はあんなに鈍感なんだ・・・?毎日毎日セクハラ受けてるくせにもぅちょぃ警戒してもいいだろ・・・・ったく。
・・・・俺の気持ちバレたかな・・・?
なんて考えていたりする。そんな2人が我に返ったのは担任が教室を出てからちょっとしてからのこと。クラスの友達が2人の肩を叩いて1時間目は移動教室だと教えてくれたときである。2人は焦って教科書を取り出し急いでその実習の教室に向かう。
その教科はというと・・・・・理科。
『ぉい・・・一護。今度はマジで警戒しとけよ?』
『・・・・・わかったよ。ちゃんと警戒しとくって!』
 あまり深く考えないように軽く流す。そうされると恋次は余計に不安になってくるのだ。もっとしっかり警戒しろ!!・・・と。
そんな不安を持っていても嫌でも授業は始まる。担当である浦原が黒板の前に立ち、第一声。
『黒崎サーンvV今日もかぁわいいスねぇ〜vV』
である。さすがにクラス全員もなれた。新学期が始まってから・・・・いや、入学したときからずっと浦原はこの調子なのだから嫌でも慣れてくる。
今のがこの2−Aの号令代わりである。 最初のころはクラスの連中も“愛されてんなぁ一護”だの“一護は先生のことどう思ってんだ?”などと言われていたが、俺はほっときゃいつか収まると思って放って置いたのに恋次がそれを許さなかった。
それを口に出したやつ一人一人に睨みをきかせ、今じゃ一言もそんなことを言ってくるやつはいなくなった。そういえばそんときから俺恋次に守られてんだよなぁ。俺ってそんなに危なっかしいのか?いざとなったら本気で抵抗するしなぁ・・・。俺も一応腕っ節には自身あるし、浦原とか市丸ぐらいどぉにか出来るつもりだけど・・・・。俺がするまえにいつも恋次が処理してくれるからなかなか出来ないだけで・・・。
『んじゃぁまず、こっちの液体とこっちの液体を混ぜてくださぁ〜い』
 いつの間にか実験が始まっている。なにをしてる実験なのかなんにも話聞いてなかったからサッパリなんだけど・・・・同じ班の恋次と他の2人が浦原が言ったとおりその液体を混ぜているところだった。黄色とピンクの変な色の明らかに怪しい液体。なんなんだろこれ・・・?こんなんあったっけ・・・?
『一護!なにボーっとしてんだ手伝えよ!』
『ぇあっ・・・悪ぃ・・・』
 ・・・って恋次に言われてとりあえず立ち上がってみたものの・・・なに手伝えってんだ?
『れ・・・・恋次・・・・ぁのさ・・・悪ぃんだけど・・・話聞いてなくて・・・・何したらいいんだ??』
『てめぇ・・・聞いてなかっ』
『それはっスねぇ黒崎サン!』
『んなッ!?急に出てくんなよ!!』
 恋次がなにか言いかけたのを遮って俺の横からひょっこりと浦原が現れる。そして俺の背後から手をとってなにやら説明しだした。もぅそのまま手取り足取りである。これにはさすがにゾワっと来たが浦原は手に変な液体持ってるし、それがもし落ちたりして爆発するようなもんなら嫌だし・・・ってことで俺は何も抵抗できなかった。
明らかに体は密着しすぎているし、いつもに比べて声が低くてどこか艶を帯びていて耳元でしゃべってくる。この変な液体さえ持ってなかったら確実にぶっ飛ばしてる・・・。
 そう思った瞬間に俺の隣、つまり恋次が浦原の手を掴み、俺から引き剥がした。
『・・・・ちょぉっとおイタがすぎましたかねぇ・・・』
 恋次がとてつもなく怒ってる・・・・・。浦原はいつもの通りどこか余裕でそれを見ているが・・・・恋次は今にも浦原のことを殴り飛ばしそうな勢いだった。
『だめっスよ黒崎サン。アタシの話聞いててくれなきゃ』
『ぁ・・・すみません』
 俺がほうけたまま一言言うと浦原はニッコリ笑ってまた黒板の前に戻った。他のとこで実験をやっていた生徒もそれぞれ自分の実験に戻る。俺と同じ班の恋次を除く2人も俺に“大丈夫かぁ?”と一声かけてくれて、俺が笑って大丈夫だって言うと実験の続きに取り掛かった。
結局なんの実験かさっぱりわかんねぇんだけど・・・浦原が説明してくれたけどそれより他のことが気になって気になって・・・。
いや、セクハラもそうなんだけど・・・俺が気になんのは恋次。こんなベタベタされたら恋次に勘違いされそうで嫌なんだ・・・。俺も浦原が好きなんじゃないかって思われんのが嫌・・・。俺が好きなのは・・・恋次なのに。
 俺はおそるおそる恋次の方を見る。そうすると恋次はまだ浦原を睨んでて・・・・・急に俺の方をバッと向いた。そしてぎゅぅぅっと・・・・・頬っぺたつねられた・・・。
『ぃひゃい、ぃひゃいッ!!!!!』
 痛いと言いたいのに言葉にならず。ってかマジで痛い。真顔でつねってくるし・・・・。怖ぇってか痛い!!
自然に涙目になってきて恋次の手を持ってはずそうと力を加えると余計に引っ張ることになって痛くなった。
『いひゃぃッ!!』
『痛いじゃねぇよ!俺ちゃんと言っといただろうが! ってか抵抗ぐらいしろ!アホ!!』
 そこまで言ってやっと手を離してくれる。両方のほっぺた絶対赤くなってる・・・。俺は頬っぺたをさすりながら恋次をギッと睨んだ。
『だって爆発するかもしれねぇじゃん・・・』
『はぁ!?爆発するわけねぇだろ!!ありゃただのジュースだぞ?!』
『・・・・じゅーす・・・・?ジュース!?はぁ!?なんでジュースなんか混ぜて実験してんだよ!?ってかピンクのジュースってなんだ!?』
 黄色はまだわかる。でもピンクとかどこをどうしたら出来るんだよ!?ってかこの実験に意味はあんのか?!
『はぁい皆サン前注目してくださぁ〜い。みんな混ぜれたみたいっスね。じゃぁそれを・・・・・飲んじゃってください』
『待て浦原!!!飲むってなんだ!?この得体の知れないもん飲ませてどうすんだよ!?』
『黒崎サンから話しかけて来てくれるなんてアタシのこと好きなんスかぁ?嬉しいスねぇvVコレおいしいんですよ。ほら・・・』
 一部訳わからんことを言っていたが無視して・・・・ってか飲んだぞ!?こいつあの得体の知れないやつ飲んだぞ!?“ほらね?”とか言って笑ってるぞ??
 それを見てクラスのやつがマネしてそのジュース(?)を口に含みだした。そして・・・・・・“うめぇ!!”とか叫んでやがる。それに感化されたやつらが次々にそれを飲みだす。そして俺と同じ班の2人も・・・・・。
『ぅわ!マジうめぇ!!色エグイけどすっげーうめぇ!!一護も恋次も飲んでみろよ!!』
 そう言われ目の前に突きつけられるが・・・・どうも進まない・・・。恋次と顔を見合わせてためらっていると・・・・再び浦原登場。
『一人で飲めないってんならアタシが飲ませてあげましょーか? ・・・・・・もちろん口移しで・・・』
 っと浦原が俺のビーカーを取ろうとしたから俺は急いでそのビーカーを取り一気に口に流し込んだ。
『ぉ・・・おぃ・・・一護・・・?』
『・・・・・うめぇ・・・・うめぇって!恋次!!飲め!』
『はぁ?!んなッぉい!!ゴフッ・・・』
 無理やり恋次の口にビーカーを当てその液体を流し込む。全部流し込んで恋次が飲み込むまで口を塞ぐと、やっと恋次が飲み込み俺は手を外した。
『うめぇだろ?』
『うめぇ・・・・ってかてめぇ!!苦しいじゃねぇか!!!鼻も一緒に塞ぎやがて!!!』
『ハハ・・・悪ぃ』
『はぃはぃ。2人じゃれてるとこ悪いんすけどね』
 いつのまにかまた黒板の前に戻っていた浦原がまたしゃべりだす。
『コレがおいしいジュースの作り方っス』
 それを聞いて一同唖然。理科でそんなことやってていいのか?? つーか実験はどうした?!みんながみんな思って口に出来なかったその時、授業終了のチャイムが鳴った。
『あぁ〜ビーカーとかはサッと洗って伏せといてくださいね。黒崎サンvVまた遊びに行きますから〜』
 そういい残し教室から出て行く。みんななんとか立ち上がり言われたとおりビーカーを洗って教室を出て行く。
つーかマジであのピンクと黄色の液体なんなんだ??黄色はオレンジとかの味じゃなかったぞ??それよりうまかったけどなんの味だありゃ??
その疑問だけが残る授業だった。・・・・疑問が残っちゃ授業じゃねぇだろ・・・。
そんなことを思いつつ俺も恋次と教室を出て行く。廊下を歩いて自分達の教室に向かう道のり、前からエメラルドグリーンに近い少し青が混じったような色の派手な髪の毛の色をしたやつと色白で大人しめな感じのやつが2人歩いてくる。そんな2人組みはあいつらしかいねぇ。
2−Dのグリムジョーとウルキオラだ。ウルキオラは別にいいんだけど・・・・・・俺も恋次もグリムジョーとの仲は最悪に悪い。お互い見つけた瞬間からもうにらみ合いが始まっていた。
すれ違う瞬間まで目は逸らさず。そのまま一言もなしで通りすぎる。しゃべれば殴り合いのケンカになりかねないし・・・。
あんなグリムジョーでもウルキオラと付き合っているらしく、ウルキオラにベタ惚れで常に一緒にいるということは噂で知っていた。ちょっと羨ましいと思ったりする。
『たくよぉ。いつもいつもガン飛ばしてきやがって・・・』
『そらしゃぁ負けだし・・・ってか恋次!!次ヤバくね?数学だぞ??』
 数学の朽木。ものすごい怖い。生徒の中でも一番恐れられてんのがたぶんコイツ。しかも恋次はなぜかコイツに目つけられててよく当てられたりする。
『やべぇ・・・・急ぐぞ!』

 2人で廊下を突っ切り ギリギリで教室に入り席に着く。その後すぐに朽木が教室に入ってきた。
『それでは授業を始める。教科書の103ページを開け』
 よく通る声が教室内に響く。さっきの浦原の授業とは大違いでみんなも緊張しているようで、教室内には朽木の声だけが響く。
『・・・問1を・・・・阿散井』
『はぃッ・・・俺っスか?』
『お前しかいないだろう』
『そうッスよねぇ〜・・・問1・・・・え〜っと・・・・・4ッスか?』
『・・・正解だ。次の問題を・・・・』
 答え終わり恋次が席に着いたと同時に俺がひそひそと恋次に話かける。
『なんでいつも恋次一番にあてられんのかな?』
『知らねぇよ・・・数学週2時間あって毎日当てられてんの俺だけだろ?みんな週1回当たるか当たらないかなのに・・・』
 そう。この朽木毎時間恋次を1番に当てる。しかも週2の2回とも。これは恋次が気に入られてるのか嫌われてるのか・・・。 しかももし恋次が答えを間違えるとその日は2回当てられる。これも恋次だけだ。
『ほんとに災難だなぁ恋次・・・』
『そこ!何をしゃべっている?』
 キッと朽木が俺達を睨む。・・・・っていうか恋次を睨んでる・・・?俺目あわねぇし・・・。明らかにしゃべってたの俺だろ・・・・?
『・・・すんません・・・』
『しっかり聞いておけ』
 恋次が謝り一応丸く収まる。俺はノートに“ごめんな”と書いて恋次に合図し、ノートを見せると恋次はニッと笑ってくれた。そして朽木にバレないうちにバッと前を向く。
そんな感じでヒヤヒヤな授業が終わった。まだ2時間目だというのに疲れた。精神的なダメージが相当大きい。
でもまぁ後の授業はまともに受けれる授業ばっかだし・・・今日国語がなかったことを神に感謝した。


『やっほ〜一護ちゃんvV』
 俺は神を殺したいと思った。さっきの感謝の5倍ぐらい殺したいと思った。
今は5時間目。英語のはずだ。なんで?!なんで市丸のやろうが来るんだよ!?!?なんでヒラヒラ俺に手なんか振ってんだよ!?
『あらァ〜そんな嫌そうな顔しんといて。今日は英語のセンセがお休みのため、国語担当の僕が(無理やり)自習の監視に来ましたァ』
 なんで国語の先生が普通に英語の課題とか持ってきてんだよ!?英語の先生とか腐るほどいるだろ?!なんでよりによってこいつなんだ?!
『これ自習のプリントやけど提出やからちゃんとやってやァ〜解らんとこあったら教えたるでぇ〜』
『あんた国語だろうが!?なんで英語教えれんだよ!?』
『そんなん当たり前や。僕なんでも出来るで。一護ちゃんなら・・・性教育の方も教えたろか?それが一番得意や』
 この精神的なセクハラ辞めてくれ・・・・。マジで。つーか・・・・
 俺は市丸をグイッと引き寄せみんなには聞こえないように耳元で囁く。『あんた冬獅郎と付き合ってるんだろうが? なんで俺にそんなかまってくんだよ?』
 市丸は3年の日番谷冬獅郎と付き合ってるはずだ。なのにいつも必要以上に絡んでくる。特に冬獅郎の前で・・・・・・。ずっと気になってたんだ・・・・。
『嫌やわぁ〜一護ちゃんからそんな顔近づけてくれるやなんてvV』
『はぁ!?』
 俺が掴んだ手を離した瞬間市丸は両手を頬っぺたに持っていって顔を少し赤らめクラス全員に聞こえる声でわざわざ言ってくる。それには俺もビックリして立ち上がった。
『そんな先生に手出したらあかんで一護ちゃんvV』
 いつも散々自分から手出してくるくせに何言いやがるこいつは!!ってかまた恋次に誤解されたらどうしてくれるんだよ!!?
睨むと、今度は市丸が顔を近づけてきて・・・・耳元で小声で言う。
『一護ちゃん・・・・今度その話題出すときは2人きりのときやで・・・一護ちゃんが気になってること・・・・教えたるから・・・』
 それだけ言ってパッと俺から離れる。そして何もなかったかのような顔をして 教卓のところへ戻っていく。俺も何食わぬ顔で席に着いた。
『さァみんなちゃんと課題しときやァ〜。そうやないと点数下げるでぇ〜』
 それを聞いてみんな一斉に集中モードに入る。さすが・・・・手馴れてんな・・・。
つーか・・・・俺が気になってることって言ったよな?アイツ俺が思ってること解ったのか?!心読まれた・・・?でも・・・俺が思ってること解ったって言うことは・・・なにかアイツが故意にやってるってことだよな??今度聞きに行ってみるか・・・2人とか嫌だけど・・・。
とりあえず俺も点数はほしいので課題に集中した。
 ただ1人。恋次だけはなかなか集中できないでいた。