『恋次ッ!!』
『ぐぁぁ〜〜〜ッやめろって一護てめぇ・・・・』
『未成年が酒なんか飲むからんなことになんだよ!!』
『だぁから大声出すなって!!!!ぅぐぐッ・・・
『バーカ』
 自分の方が声デカいって・・・・。自爆とかほんとにバカなやつ。恋次は先輩につき合わされたんだからしょうがねぇって言うけど二日酔いになるほど飲むとかほんとにバカだよなぁ。
 朝から二日酔いに悩まされながら冴えない顔で迎えに来た恋次。登校中散々大声(しかも耳元)でしゃべっていじめてやった。恋次をこれだけいじめれるなんてこんな時ぐらいだからな。ちょっと優越感に浸りながら歩いていると前方に俺の天敵グリムジョーと、その恋人のウルキオラが歩いているのが見えた。恋次も気付いたようで二日酔いに苦しみながらも前を見据えている。
『なぁ恋次、あの2人ってさ、ほんとに付き合ってんのかな?』
 さすがに可哀想になってきたから声のトーンを落としてしゃべってやる。
『・・・さぁな。D組のやつが言うにはそうらしいが・・・・・あんま付き合ってるようには見えねぇな』
 前を歩く2人はしゃべっている様子もなくただ黙々と歩いている。なぜ2人で登校しているのか?と聞きたいぐらいにほんとになにもない。2人の間の距離も俺と恋次より開いていると思う。まぁ引っ付いててもキショク悪ぃが・・・。
あっ・・・グリムジョーがなんか話しかけた・・・・・。さすがに話までは聞こえないがウルキオラはその話に対して首を横に1回振って、次に頷いた。それだけするとまた前を向いて黙々と歩く。
『なんかおもしれぇな。あいつら』
 俺がそう言った瞬間、ウルキオラがこっちを振り向いた。俺別に特別大声でしゃべった訳じゃねぇんだけど・・・・・たまたまかな・・・?まぁ距離も近づいてきてるし・・・聞こえたこもしれねぇけど・・・・・。
『おぃウルキオラ。なに止まって・・・・・てめぇらか・・・』
 ウルキオラが振り向いて立ち止まったのに気がつきグリムジョーもこちらを向く。向いた瞬間・・・・俺達を見た瞬間、目つきの変わる。グリムジョーもこちらを見据えてくる。
さっきウルキオラを見たときとは大違いだ。やっぱりこいつら付き合ってんだなって一瞬でわかるぐらい柔らかい目をしていた。

 俺も恋次もグリムジョーたちとはある程度の距離を保って立ち止まる。何かを言い合うでもなくただお互いを睨んだまま。口を開きでもしたら殴り合いになりかねない。それが解っているからお互い何も発しない。別に殴り合ってもいいんだけど・・・・いろいろややこしくなるからな。うちの学校の先生達は見ての通りうぜぇのばっかだから問題起こすとさらにうぜぇんだよ。それを承知しているからこそグリムジョーもなにも言ってこない。先に目逸らしたら負けみたいなこんな変なケンカをいつもさりげなく終わらせてくれるのがウルキオラだった。
『グリムジョー・・・遅刻する・・・』
 いつも通りウルキオラは俺達の無言のケンカをとめてくれた。この一言にグリムジョーは俺達から目線をはずさず“あぁ”と一言答えて最後まで俺達を睨みつけてから歩き出した。
『はぁ。俺達も遅刻するし行こうぜ』
 にらみ合いのケンカほどつまらないものはない。なぜかストレスも溜まる。これなら言い合いしてるほうがまだマシだ。出来ないから困ってるんだけど。恋次もぐったりしてるし。いや・・・・二日酔いのせいか?でもなんか朝っぱらからスッキリしねぇな・・・。
『頭痛ぇ〜・・・』
『学校ついたら保健室で寝てろ』
 フラフラしながら歩く恋次を気にしながら俺達も学校へと急いだ。


 1時間目が始まった。日本史。嫌いな授業ではないがおもしろくない。グリムジョーがいないから。朝は一緒に登校してきたから学校にはいるのだが・・・・・だるいからサボると俺に一言だけ言って1時間目が始まる少し前に教室を出て行ってしまった。
 グリムジョーはよく授業をサボる。そのくせ頭はいいので少し羨ましい。
グリムジョーのいない教室はとてもつまらない。授業など出ている意味がない。
別にグリムジョーが教室にいるからといって、話せるほど席も近くないのだけど・・・ 俺の席からグリムジョーはよく見えて、退屈そうに授業を受けているグリムジョーを見ているだけでつまらないはずの授業がとても面白く感じられて少しだけ意味のあるものになる。授業の内容が変わるわけではないのだが。
 時々目が合うと胸の奥の方が絞まるような感じがする。その時グリムジョーは決まってニヤリと笑う。
口パクで何か言ってきたりもする。“ハラヘッタ”“ツマンネェ”そういったことばかりだけど・・・・それが俺にとってはたまらなく嬉しい。授業中のそんなひと時が少し好きだったりする。なのにグリムジョーがいないのではそんなことすら出来ない。
 2時間目は俺もグリムジョーのところへ行って一緒にサボろうか。飲み物でも買って行ってやろう。いつもの場所にいるはずだから。・・・・・授業が終わるまで後10分・・・・・・。この10分がまたつまらない・・・・・早く・・・早くグリムジョーに会いたい。


『グリムジョー・・・・』
 やっぱりいた。いつも通り屋上。ここは立ち入り禁止だから普通は誰も入ってこれない。鍵も掛かっているけど・・・・・グリムジョーは壁に穴を見つけた。屋上に入れる唯一の穴。だいぶ前に俺にだけ教えてくれた。普段は掃除道具を入れるロッカーに隠れているところだから簡単には見つからないだろう。ここが俺達の秘密の場所だったりする。
『テメーもサボりに来たのか?』
 寝転がるグリムジョーの隣まで歩いていって横に腰を下ろす。そして自販機で買ってきたコーヒーのパックを渡してやる。
『くれんのか?』
『あぁ』
『サンキュ』
 グリムジョーは起き上がるとそのコーヒーを振り、付いていたストローをさして口に運ぶ。それを一部始終見てから俺も自分の分のコーヒーパックにストローを指した。
 2時間目開始のチャイムがなる。グラウンドには体育の授業なのか、生徒がたくさん出てきた。体操服の色からして同じ2年だ。じーっと見ているとオレンジの短髪と赤髪を結えたやつが2人でじゃれあっているのが見えた。朝会ったときは赤髪のほうは少し顔色が悪いように見えたが ・・・・今はオレンジの方とはしゃいでいるところを見ると元気になったのか・・・・。
 あの2人の噂はいろいろと聞いている。仲は良いようだが・・・付き合っていないのか?前にクラスのやつが付き合ってはいないらしいと噂していたが・・・・。
『グリムジョー・・・あの2人・・・・黒崎と阿散井は付き合っていないのか?』
『あ?俺が知るわけねぇだろ』
『朝見たとき、俺は確実にお互い好き同士だと思ったのだが・・・・・どうも付き合っている訳ではなさそうだし・・・・どう思う?』
『どうでもいいだろーが!俺には関係ねぇ。どぉもアイツらとは馬が合いそうにねぇしな。ムカつくからアイツらの話すんじゃねぇよ』
 怒らせてしまったか・・・・・。グリムジョーはふてくされる様にまたゴロンと横になってしまった。
グリムジョーは俺が他のやつの話をしたりするとよく怒る。怒るといってもすぐ機嫌は直るのだが・・・俺はこの空気が苦手だ。すぐ機嫌は直ると言ってもさすがに今はまだ早い。余計に機嫌が悪くなり逆効果だ。でも・・・・・寂しい。
『グリムジョー・・・怒らないでくれ。俺は寂しかったからここに来たんだ。 お前がいない教室での授業はつまらない。でも傍にいるのにしゃべれないのはもっと寂しい・・・』
 聞いているのか聞いていないのか、目を閉じたまま動かないグリムジョーに俺は話しかける。寝ていないのは確かだから一応聞いてはくれているみたいだけれど・・・・・そんなに怒っているのだろうか・・・?だんだんと不安になってくる。
諦めかけたそのとき急に制服の裾を引っ張られ、俺はバランスを崩してそのまま寝転がるグリムジョーの上に倒れこんでしまった。起き上がろうとして腕に力を込めたが、グリムジョーが俺を抱きこんでいるため起き上がれなかった。それでもひとまず安心した。どうやら機嫌は直ったようだったから。
『しょげてんじゃねぇよ。別にそんなに怒ってねぇよ。ただアイツらがムカつくだけだから気にすんな』
 そう耳元で囁くグリムジョーの声が心地いい。俺も小さく“あぁ”と答えてそのまま身を委ねていた。聞こえてくるのはグラウンドを走り回っている生徒の声。黒崎と阿散井の声も混じっている。体で感じるのはグリムジョーの体温と鼓動。俺の体温も鼓動もグリムジョーに伝わっているのだろうか?そんなことをぼんやりと考えていた。
『アイツらうるせぇ・・・』
 ふいにグリムジョーが口を開く。アイツらとはたぶんグラウンドの生徒達だろう。黒崎と阿散井のことを指したのかもしれないがまた機嫌が悪くなるのは嫌だったので聞けなかった。
そしてグリムジョーはすばらしい腹筋で俺を抱えたまま起き上がった。急に体が宙に浮いたような感覚になり、少し驚く。パッとグリムジョーを見るとニヤニヤと笑っていた。
自分の状況を見ると知らないうちにグリムジョーの足の間に向き合う形で座らされていてまた驚く。さっき倒れたときは上半身しかグリムジョーの上に乗っていなかったはずなのだが・・・・。いつの間に片足を飛び越えてしまったのか・・・・。怪訝な顔でグリムジョーをじーっと見るとグリムジョーは勝ち誇ったように口の端を吊り上げて笑い、俺を引き寄せ抱きしめる。膝立ちの俺の胸に顔を埋めてグリムジョーはなにか思い出したように喉の奥でクッと笑った。なんなのかさっぱり解らない俺はグリムジョーの明るい水色のワックスの付いた髪を指先で遊ばせた。
『なんなんださっきから』
『・・・・お前さっき“寂しかった”つったよな?』
『・・・・言ったが・・・・それがなんなんだ?』
『お前今までそんなこと一言も言ったことねぇじゃねぇか。今まで俺がどれだけサボろうが気が向いたときにしかココにこなかったし。・・・・ずっと寂しかったのか?』
『・・・・・寂しかった』
 下から見上げてくるグリムジョーの目が真っ直ぐに俺を見る。それが居たたまれなくて俺は少し目を逸らした。
本当はずっと寂しかったのだが、サボるのはグリムジョーの勝手だから俺がサボるなとは言えなかった。グリムジョーの行動を縛り付けたくなかったからだ。一緒にいたいなら俺も一緒にサボればいいと思っていたし。
『・・・・明日からあんまサボらねぇようにする・・・・』
 危うく聞き逃しそうなほどの声でボソッとつぶやく。そのつぶやきに俺はビックリして目を見開いた。
さっきまで俺を穴が開くんじゃないかってほど見ていたくせに今は少し顔を赤らめて俺から目を逸らしている。俺が驚いて言葉も出せずにいると顔に手を当てて俯いてしまった。片方の手は俺の腰に残されていたけれどさっきまで自分の方に引き寄せるように力が入っていたのに今はすっかり力が抜けていてただ添えてあるだけとなっている。
そんなグリムジョーが可愛くて俺は今度は自分から抱きつき、 驚いて顔をあげるグリムジョーの唇に口付ける。
『嬉しい・・・・ありがとうグリムジョー』
『・・・・・じゃぁもっとキスしろ』
 さっきまで照れていたのはどこに行ったのかと聞きたくなるほど早く、いつものえらそうなグリムジョーに戻っている。それでも俺は言われたとおりにもう一度唇を重ねていった。腰に回る手にもまた力がこもる。何度も何度も口付け、次第に深くなっていく口付けは最初俺が主導権を握っていたはずなのに今ではグリムジョーが俺を追い立てる。
グリムジョーの肩に置いている手にもだんだんと力が入らなくなっていき、膝立ちしている足もぶるぶると震える。グリムジョーに腰を支えておいてもらわないとすぐにでも崩れてしまいそうなほどだった。
そんな強烈な口付けがやっと終わり、唇が離れた瞬間俺の体はグリムジョーの方に倒れこむ。
『そんなによかったかよ?』
『・・・・・尻・・・・撫でるな』
『聞こえねぇな』
 俺が身を委ねているのをいいことに、グリムジョーは背中から尻までをゆっくりと撫で回す。その手が制服の中まで進入しようとしているのがわかったところで俺はグッとグリムジョーの肩を押して離れた。自分の意図が阻まれたグリムジョーはなぜ離れるのかと 言うような目で俺を睨んでくる。
『下にあんなに人がいてはバレる・・・・』
『誰も気付かねぇよこんなとこ』
『それでも嫌だ』
『・・・・・・・じゃぁしねぇから離れんな』
 しぶしぶという感じではあったがヤることは諦めてくれたようで、それでも俺に触れていたいと手を伸ばしてくる。俺はその手をとり、また大人しくグリムジョーの足の間に収まった。今度はグリムジョーを背もたれにするような形で座る。顔は見えないがさっきよりも密着しているような気がする。俺をギュッと抱きしめたグリムジョーは俺の髪に軽く口付けた後、鼻先を埋める。クンクンと匂いをかいでいるのか、妙にくすぐったい。
『お前いい匂いするな』
 そういった後首筋にも鼻先をこすりつけてくる。くすぐったさを我慢してグリムジョーの髪を撫でてやると、その手を取られ手のひらに口付けられた。熱い唇の温度が手のひらから伝わってくる。そんなところに口付けられても少しは感じるものなのだな・・・と思っていた矢先、ぬめっとした感触がする。舌だということはすぐにわかったが手を放そうとしてもグリムジョーに握られているため放れない。
『しょっぺぇ』
『当たり前だ』
 勝手に舐めておいて文句を言われる筋合いはない。 髪なんか撫でなければよかったと少し後悔した。そんな俺の思いを知るはずもなく、グリムジョーはさっきからなにやら俺の手を見ている。俺の肩から覗きこんでいるため頬がぶつかりそうな距離にグリムジョーの顔があり、妙にドキドキしてしまう。
『お前白いな。白いっていうより青白い。細いしもっと食え』
『白いのはもとからだ。それに俺は健康だ。飯も食べてる』
『ほんとかよ』
 あまり信じてはいないようだがそれ以上聞く気もないらしく“細ぇなぁ”とつぶやきながら俺の手で遊んでいた。
 少しでも顔を動かせば触れる距離。視界の端にはチラチラとグリムジョーが映っている。それが一瞬消えたかと思うと次の瞬間ほっぺたに柔らかいものが当てられる。チラッと横目で見るとグリムジョーが笑っているのが見えた。
『何気に初めてじゃねぇか?頬にキスすんのって。でこならあるけど』
 今までキスは何度もしてきたが確かに頬は初めてだった。俺の中で頬にキスは可愛いというイメージがあって・・・・グリムジョーには似ても似つかなくておかしくて噴出してしまった。なぜ笑われるのか解らないグリムジョーは不愉快だったのか俺をこれでもかと言うほど強く抱きしめてくる。そうされてもおかしくておかしくて止まらない。
さすがにグリムジョーがイラついてきているのが解ったので堪えて体を反転させ、グリムジョーと向き合い、俺もグリムジョーの頬に口付けてやる。もちろん俺も初めてだ。
『なんかコレいいな・・・』
 グリムジョーはとても気に入ったようだったが俺はされるたびに笑いを堪えるので必死だった。いつかなれるときが来るのだろうけど・・・それまで時間がかかりそうだった。
 俺はグリムジョーの足の間から抜け出しまた横に座る。少し不服そうだったが、そのままグリムジョーにもたれて頭を肩に乗っけてオマケに手をつないでやると、満足したようで手を握り返してくれた。
 そこでやっと2時間目終了のチャイムが鳴り響いた。体育をしていた生徒が着替えるために急いで教室へと駆けていく。誰もいなくなったそこはさっきまでのにぎやかさが嘘だったように静まり返っている。そんなグラウンドを2人でしばらく眺めていた。グリムジョーは3時間目もどうやら出る気はないらしく、立ち上がらない。だから俺も帰る気になれない。
『今日まで・・・・』
『なんだ?』
 急にしゃべりだしたグリムジョーに耳を傾ける。
『明日からちゃんと授業受ける。今日はサボらせろ』
『・・・・・・別に無理しなくていい。俺はそんなつもりでお前に寂しいと言った訳じゃない』
『いいんだようっせーな。黙ってろ』
 どうやら本気らしい。それが嬉しくてたまらなかった。
『・・・・・ウルキオラ、今誰もいねーし・・・』
『しないぞ』
 全部は言わさず遮ってやるとチッと舌打ちしてドサッと俺にもたれかかってくる。
『させねーなら代わりに・・・膝枕しろ』
 今日はこんなのばっかりだな・・・と思いつつ、それぐらいのワガママなら聞いてやってもいいかと足を伸ばす。俺の無言の承諾に“サンキュ”と一言言ってからゴロンと俺の膝に頭をおろした。
『気持ちいいのか?』
 決して女のように柔らかなものではないと思うが・・・・それでも満足しているのか“あぁ”と答える。気に入ったことはいつまでも夢中になるグリムジョーのことだから、たぶん4時間目が終わるまでこのままなのだろうなとぼんやりしながらグリムジョーの髪を撫でた。
 今日はこのままココで1日を終えようか・・・・。
口には出さぬものの2人は同じことを思っていた。
それはきっと現実になる・・・・・。


『なぁ恋次・・・』
『ぁ?なんだよ一護』
 体育の後、着替えた2人は喉の渇きを潤すために自販機に向かって歩いていた。
『さっきのサッカーでさ、俺ボールめちゃくちゃ飛ばして取りにいってただろ?』
『あぁ。かなり奥のほうまで飛んでったな。それがどうしたんだ?』
『そんときにさ、なんとなく屋上見たらなんか人影が見えたから誰だよって思ってよくみたら、たぶんグリムジョーとウルキオラがいた』
『屋上って立ち入り禁止だろ?』
『でもマジでいたって。んでさ、やっぱあいつら付き合ってる』
『なんでそんなこと言えんだ?』
『よく見えなかったけど、たぶん抱き合ってた気がする』
 俺から見えたのはウルキオラの後姿らしきもの。で、その後ろからチラチラと青いのが動いてるように見えたからたぶんグリムジョーだと思うんだけど・・・・この学校で青い髪なんてアイツぐらいだろ。で、そのウルキオラの背中に手が回ってた見たいに見えたから抱き合ってんのかなって思ったんだけど・・・・。すっげー羨ましい。俺も学校のどっかで隠れてあんなことしてぇ。
『マジだったんだなぁ。朝はあんまり見えなかったけどな』
『そうだよなぁ。まぁ関係ねぇけど』
 自販機につき、どれにしようか悩んでいるとき、 何かを感じてバッと後ろを向く。それは気のせいではなかった。
『気付かれてもぅた。声もかけてへんのにすごいなぁ一護ちゃん』
 立っていたのは市丸・・・・と冬獅郎。恋次も気付いたようで、俺のほうに寄って来る。
『あんたら一緒にいても大丈夫なのかよ?』
『別にやましいことしてへんから大丈夫や。今は教師と生徒』
『あたりまえだ。・・・・さっさといくぞ・・・・市丸』
『学校ではセンセやで日番谷くん。あァ、せや一護ちゃんちょっと耳貸してみ?あっ!別になんもせーへんから安心してや・・・・阿散井くん』
 なんでいちいち恋次に?そう思ったが市丸が何か言い出したのでそっちに集中する。
『邪魔なおっさんらは僕が昨日諦めさせたったから安心しぃや』
『??なんの話だ?』
『まァ頑張り。ほんなら行こか日番谷くん』
 市丸はそれだけ言うとさっさと歩いていってしまった。邪魔なおっさん2人って誰のことだ??
『一護、なんだったんだ?』
『いや・・・俺にもさっぱり・・・・』
 そうこうしている間にチャイムが鳴り出す。結局ジュースも買えぬまま、俺達はさらに喉が渇くほどの全力疾走で教室へと走った。