イールフォルトとロイのおかげで妙にキスがお気に入りになってしまったウルキオラ。

俺が抱き上げてやるとすかさず頬に柔らかな唇を押し付けてくる。

ソファに寝転がりながら雑誌を見ているときも、ひょこひょことこっちに来たと思ったとたんにちゅぅっと唇に唇を押し当てられる。

下手に拒むと自分のことが嫌いなのかとでけぇ目を震わせる。

俺自身も知らなかったことだが・・・・・・俺は泣かれるのに弱いらしい。

そんな泣きそうな顔をされるとどうしていいかわからなくなる。

だからこそ俺はなにも出来ずにその柔らかなキスを受ける。

だが・・・・・しなさすぎても拗ねる。

5回に1回ぐらいはこっちからもキスしてやらねぇと、またやっぱり好きじゃないのかと目に涙をためる。

小さな手でぎゅぅっと服の裾を握り締めて、瞬きでもしようものなら大粒の泪がぼろぼろとこぼれそうになっているのを落とすものかと目を見開いて耐える。

小さくため息をついて両の目じりに交互に吸い付いてやると、途端に笑顔になるウルキオラ。

そしてまたちゅぅ。


 寝てるときでさえ・・・・・。

一緒のベッドで寝ている俺とチビウル。

夜は腕枕してやりながらチビが寝るまで頭撫でてやったり胸ポンポンしてやったり。

朝は必ずしも俺が先に起きる・・・・とは限らない。

俺が先に起きたのなら別に問題はない。

ぐっすり俺にしがみついて寝ているチビを起こさないように俺もジッとチビが起きるのを待つ。

ただ・・・・・チビが先に起きた日はゆっくり寝ていられない。

別に騒ぎ立てるとか部屋を荒らすとかじゃねぇ。

・・・・・キスの嵐。

俺が寝てるのにも関わらず・・・・。


『ん・・・・っなに・・・してんだよ・・・・?』

『おはよ、ぐりむじょー』

『おはよ、じゃねぇ。なにしてんだお前は・・・・・』

『・・・・ちゅぅ?』


 小首をかしげながら疑問系で答えてくるチビウルに一瞬ドキッとしたのは気のせいだ。

寝ぼけてるからだ。

必死に自分を抑えつつもう一度チビに向き直る。


『あのな、寝てる邪魔とかしちゃダメだろ?』

『・・・・・ごめ・・・なさぃ・・・・』


 ベッドにへたり込んでしゅんとするチビウル。

ちょっと言いすぎたか?と頬を掻いて、ゆっくりとチビを抱き寄せる。


『ちゃんと謝れていい子だな。明日から守れるだろ?』

『うん!もうしない』

『よし、いい子だ・・・・』


 髪の分け目から覗く額に唇寄せる。

もう一度ぎゅっと抱いてやって小さな背中を撫でてやるとチビウルも喜んで俺にぎゅうっとしがみついてきた。





 それはそうと、これだけ頻繁にキスされると心配なことも出てくるわけで・・・・・。

俺以外のやつにも簡単にキスするんじゃないだろうかとか。

はたまたもうしてしまっているとか・・・・・。

それを聞きたくて・・・・・なかなか聞けないでいる。

相手はチビなんだから簡単に聞いてしまえばいいんだが・・・・・。

もしも、『うん、してるよ』なんて答えられた時のことを考えると・・・・・

俺はショックで立ち直れないかもしれない・・・・・。

いくらチビだからと言ってもこいつは(たぶん)ウルキオラ。

ウルキオラが他のやつとキスしてるなんて・・・・考えたくもねぇ。

これが大人の方なら喧嘩だって出来るし無理やり押さえつけてお仕置・・・・・っておい何考えてんだ俺は。

っとまぁこういう具合にいろいろ話し合い(?)も出来るが・・・・・

今の相手はチビウルだ。

そんなさっき想像したようなことは出来ねぇし・・・・・・

話したってわかるようには思えねぇ。

要するに、俺だけだって束縛ができねぇ。

束縛したって絶対意味わかんねぇだろうし。

 こういう理由でなかなか聞けないでいる。

だから結構見張ったりしてるんだが・・・・・

ロイが遊びに来ても特にそういうことはせず2人遊んでる。

イールとなにやらしゃべっていてもそういう気配はない。

後は特に誰もこねぇし・・・・・部屋から出るときはいつも一緒にいるから外で誰かとしてるってことはまずありえねぇ。

だとすると・・・・・なんもしてねぇのか?

紙になにか絵を描いているチビウルをジッと眺める。

するとふいにチビがこっちを向いて・・・・・。


『ぐりむじょー?どうしたの?お腹痛い??』


 心配そうに近寄ってくるチビウル。

俺がお腹痛がっているように見えたのかはしらねぇが・・・・・。

とりあえず駆け寄ってくるチビを抱え上げて膝の上に下ろす。

心配そうに俺をじっと見てくるチビをなだめる様に髪を撫でる。


『なんにもねぇよ。腹も痛くねぇし』

『ほんと?』

『あぁ。・・・・あのな、お前・・・・誰にでもキスしてんじゃねぇだろうな?』

『ちゅぅ?してないよ?』

『本当にか?』

『うん!だってロイに好きな人としかしちゃいけないって言われた』


 それを聞いてホッと気が抜ける。

崩れる俺をチビウルはまた心配していたが、俺はクッと苦笑して柔らかな頬を撫でた。

ただ1つ気になったこと。

チビウルの中で俺に対する好きとロイたちに対する好きの区別がついているのだろうか?ということ。

ロイにキスしないということはついているんだろが・・・・・

どうせコイツに聞いてもまだ理解出来ないんだろうな・・・・・。

だから俺はあえて聞かずに、ぎゅっとしがみ付いてくるチビウルを抱きしめ、軽い触れるだけのキスを落とした。




                                                                       end