考えすぎて疲れたのか、チビウルは俺の腹の上で寝ちまった。

やっぱウルキオラなだけあって、頭もいいし勘もいい。

俺らがうかつにチビウルの前でいろいろしゃべっちまったのがいけなかったんだよな。

こんなちっこいのにいきなり現実問題話されて・・・・受け入れられたのはウルキオラだからだ。

普通のやつじゃこうはいかねぇよな。



 本当のことを話してもよかったんだろうか・・・・・。

あそこはごまかすべきだったのか??

ウルキオラだからって言ってもコイツはまだチビで。

ごまかしゃなんとかなったのか??

いや・・・・・チビでもウルキオラなんだ。

今回は仮にごまかせれたとしても、きっとすぐにバレただろう。

そうなったときのショックの方がデカイよな。

コイツは俺は信用してる。

その俺に裏切られんだから。

酷な話かもしれねぇが・・・・・言ってよかったんだよな??

チビウルも自分なりに受け入れたみてぇだし・・・・・。(ほんとすげぇガキ・・・・)



 だから・・・・・・もし不安なら俺がそれを取り除いてやろう。

俺が話したせいなんだしな。

コイツが望むことをなんでもしてやろう。

いくらでも傍にいてやるから。

つーか離れるわけねぇけどな。

チビが嫌がったってはなさねぇぞ俺は。




 とりあえずチビを起こさないように、俺はゆっくりと起き上がってチビをソファに寝かせた。

風邪を引かないように布団ももってきてかぶせてやる。

幼い寝顔を眺めながら、俺はチビの小さな手に自分の手を重ねた。











 目を冷ましてからは、何事もなかったかのように元気で。

お気に入りの飴を相変わらず大事そうに食べながら、俺の膝にのっかってくる。

しかし・・・・・キスの量が増えたように思う。

そして、スキ≠ニいう単語も。

やはり不安なんだろうか。

それを紛らわすように、もしくは俺が離れていかないようにキスとスキを繰り返す。

それが痛々しくて・・・・、でも俺はそれをどうやってとめてやればいいのかわからなくて。

ウルキオラがキスをしてくるたびに、素直にそれを受けて、スキだといってくるたびに俺も好きだと返してやる。

キスも俺からしてやったり。

嬉しそうにするから、ずっと抱き締めてやっていたり。



 いつもならロイのところに遊びに行くといいだす時間になっても、今日のウルは俺の傍を一向に離れようとしなかった。



 不安を取り除いてやろうと思っていたはずなのに・・・・・

こんなにちっちゃいやつをどう慰めていいのかがわからなくて。

チビじゃないなら、肌を重ねて、深く深く繋がって、いくらでも慰めてやれる。

だがさすがにこんなチビにそんな方法とれるはずもねぇし。

余計にトラウマになるだろうし、犯罪だ。

だから、抱き締めて、キスをして、好きだと言って、それだけじゃ伝えられない思いを伝えて安心させてやりたいのに・・・・・

その方法が見つからない。

どうしてやればいいんだろうか?

言葉で大丈夫だと言ったってきっと不安は取り除けない。

俺は離れない。そう言ったところで、信じたくても信じられないだろう。







 しばらくすると、ロイとイールフォルトの方から遊びに来た。

俺にべったりなのはいつものこと。

だからロイもイールもさほど気にする様子はなかった。




『ほらチビ、ロイが遊びにきたぜ?遊んでこいよ』

『う・・・・・ん・・・・・』




 返事はしたが・・・・あまりいい返事ではない。

いつもとは違うその態度にイールも気付いたらしい。

ロイがチビウルをつれていつものように俺達から少し離れたところで遊んでいる間に、俺はイールにチビウルとのことを話した。




『なるほどな。さすがウルキオラ・・・というところか』

『あぁ。今も不安抱えてる。俺はどうしてやればいいかわかんねぇし』

『らしくないな』

『わかってんだよ・・・そんなこと』

『いいんじゃないのか?それで』

『あァ?なにがだ??』

『ウルキオラが望むことをしてやればそれで十分だろう。今までと同じように接してやればいいし、傍にいてやればいい。そういう気持ちは時間が解決してくれるもんさ』

『そうか・・・・??』

『不安だという気持ちは簡単には取り除けないだろう。なら、一緒にいることに慣らせてやればいい。傍にいて、安心させてやるのが一番だ。しばらくはべったりだろうがな』

『・・・・・・・・なぁんか・・・・テメーに言われっとムカつくな』

『なんだそれは・・・失礼なやつだな』





 感謝してるんだ。

それでいいんだと言ってくれたイールに。

俺のしていることにちゃんと意味があるなら、それでいい。

これは時間で解決できることかもしれないが・・・・・ウルキオラが元の姿に戻るかどうかも時間の問題あんだろうか??

それならいいんだが・・・・・。







『ウルキオラぁ??どしたの?なんか元気ないね』

『・・・・ろいは、いーるのことスキ??』

『ん??あぁ、大好きだぜ??ウルキオラがグリムジョーのこと好きなのと一緒な』

『みんなのスキとちがうスキ?』

『そうそう!』

『ろいは不安にならない???』

『不安??』

『はなれちゃったらどうしよう・・・・とか』




 そう言ったウルキオラの顔は本当に悲しそうで切なそうで、俺にはうまく説明できない複雑な顔。

でも・・・・・もし俺の前からイールが消えっちゃったら・・・・・

そう考えたら俺の中をなんかグルグルと嫌な感情が満たして・・・・・。

もし一緒ならウルキオラのこんな小さな体の中にもこんな感情が流れてるとしたら・・・・・。

ウルキオラが潰れちゃうんじゃないかって・・・・・。

そう思った次の瞬間には、俺はウルキオラを抱き締めていた。

その小さな体は少し震えてて・・・・・。




『俺さ、そんなこと考えたことなかったよ。でもね、今考えたらすごく不安になった。怖くなった。ウルキオラも今こんな気持ちなの??』

『・・・・・ぅ・・・・・ひっく・・・・』

『グリムジョーがウルキオラのこと置いてどっか行ったことある??』

『・・・・??・・・・なぃ・・・・よ』

『じゃぁ、グリムジョーがウルキオラのことを放っといたことある?いつもかまってくれなかった??』

ズピッ・・・・・・・ぅん・・・いつも・・・・いつもボクの傍に・・・いてくれたよ・・・・いつでもボクのこと一番に・・・考えてて、くれた・・・よ・・・』

『それなら、心配しなくてもグリムジョーはウルキオラのとこから離れてったりしないよ。ずっと、そうだったでしょ?これからもずっと、グリムジョーはウルキオラの傍にいるよ』

『ぅ・・・ん・・・・・ぅん!』

『それにねウルキオラ、その不安はきっとグリムジョーも同じだよ?ウルキオラに離れてってほしくないって』

『グリムジョーも??』

『そうだよ。同じ気持ちなの。嬉しくない??』

『・・・・うれしい!!』

『じゃぁもう大丈夫だね』





 こんなに小さくても不安になるんだなぁって、ちょっと驚いた。

慰め方、あれでよかったかな??なんて・・・・・。

でも、絶対グリムジョーの方がビクビクしてるよね!

ウルキオラが大きいときから、グリムジョーはウルキオラが大好きだから。

いつか離れるんじゃないかって。

そんなことないのにね。

俺達から見てたらウルキオラだってグリムジョーのこと大好きなんだってめちゃくちゃわかるのに。

気付いてないのは本人達ぐらいなんだよね。

こんなこと言ったってまぁちっちゃいウルキオラはわかんないかもしれないけど・・・・。

ちょっとは元気出してくれたかな??






 ロイとウルキオラがそういうやり取りをしている間、イールとグリムジョーのほうでは・・・・・。

ウルキオラの泣き声に驚いたグリムジョーはすぐにウルキオラのもとに駆け寄ろうとした。

それをとめたのはイールだった。

あんな声をだして泣いたことのないウルキオラに、さすがのグリムジョーもびっくりしたのだろう。

しかしきっと、グリムジョーが行って慰めてやるより、客観的に見ているロイがなにかを言ってやるほうがいいと思った。

黙ってロイのやることを見ていろと。

ロイが間違った方向に進めば、イールが出て行こうと思っていたようだが・・・・どうやらロイがうまくやった。

笑顔を取り戻した2人を見て、グリムジョーとイールはホッと腰をおろした。






 満面の笑みでこっちへ走ってくる幼い2人。

こうやって見ているとロイもウルキオラの歳と変わらないんじゃないかってほど幼い。

大好きな人のもとへ・・・・


高い声を上げて飛び込んでくるウルキオラを、グリムジョーはしっかりと抱きとめて、少しだけ赤い目元を指でなぞった。

当のウルキオラは、すっかり自分が泣いたことなど忘れているように、全力でグリムジョーの胸に擦り寄ってくる。

ロイが上手くやってくれたおかげか・・・・・

今朝までのどこか不安げな表情もなく。

それにもまたホッとした。

そんな二人を、本当によかったと眺めるロイとイール。




『そろそろ戻るか、ロイ』

『そうだね』

『ろい、ありがとぉ。いーるもまたね』




 ウルキオラを抱えあげて、二人をドアのところまで送る。

小さな手を振るウルキオラにロイが笑いかけた。





『ロイ、サンキューな』

『えっ??なにが??ウルキオラと遊んでやったこと??』

『あぁ。そうだな』

『・・・??』




 じゃぁなと見送ってドアを閉めた。

ジッと俺を見つめてくるウルキオラの頬にキスしてやると、ウルキオラはお礼にと俺の唇にやわらかなそれを押し付けてくる。




『ぐりむじょー、だいすき』

『俺も同じだ』

『ぅん!』











『なんかグリムジョー変じゃなかった?いつもウルキオラと遊んだってお礼なんか言ってこないのに』

『んーー?そうじゃないぞ。ウルキオラをちゃんと慰められたからだな』

『あぁ!あれマジでビビッた。急に泣き出すし変なこと言うし・・・・あんなんでよかったのかなぁ?』

『ウルキオラの表情から不安が消えてたからな。よかったんじゃないのか』

『そっか。ならいいけど。・・・・・・・なぁんかなぁ・・・・・羨ましいなぁ』

『なにがだ??』

『いっぱい甘えて幸せそうで』






 イールが離れてしまったら・・・・・。

イールが俺のこと好きじゃなくなったら・・・・。

どうなるのかな??

離れるの嫌だよ・・・・・。






『なら・・・・・今日はいっぱい甘えさせてやろうか』

『えっ?!なに??めずらしい・・・・』

『甘えたいんだろう?』

『・・・・・うん』

『・・・・・・・俺も、お前から離れたりしないから。そんな顔するな』

『・・・・・!!!!イール、大好き!!』





 みんな不安なんだ。

信じることも勇気で。

信じられなくなったなら確かめればいい。

きっと、答えをくれるから。