あれから二週間が経った。
ウルキオラは、もうあんな不安気な顔をすることもなくなったし・・・・・だからと言って元の姿に戻るということもない。
何も変わらず、ただ日常が過ぎていく。
チビウルは相変わらず可愛いし甘えてくるしキスばっかしてくるし。
『ぐりむじょーーーー!!』
『お・・・・・っと、走って転ぶなよ?』
『うん!ころばないよっ』
元気いっぱいに俺のところに走り寄って来て、ぶつかるように足にしがみ付いてくる。
小さな手が、袴を掴んで、じっとこっちを見上げてくる大きなこぼれそうな目が、可愛くて愛しくて。
そこへ・・・・・・コンコン・・・とノックの音が。
返事をすると、イールフォルトとロイがドアを開けて入ってきた。
『グリムジョー、藍染様がお呼びだ』
『ウルキオラは俺と一緒に遊んで待ってような』
『わかった・・・。ぐりむじょー、いってらっしゃい』
『あぁ。大人しく待ってろよ』
チビウルの頭を撫でてやって、ドアへ向かう。
すれ違う時にイールが言った言葉。
ウルキオラが小さくなった原因がわかったらしい
俺は藍染が待つ部屋へと向かった。
『ぐりむじょー!おかえりなさい』
『いい子にしてたか?ウル』
『うん!!』
・・・・・・ウルキオラは、ちょっとした病気にかかっているんだ。
死んでしまうとかそういうものじゃないよ。
今の姿を見てもわかるように・・・ただ体が縮んでしまい、記憶もなくなる。
それだけなんだ。
・・・・治す方法は・・・あるのか?ウルキオラは元の姿に戻るのか?!
・・・・心配しなくても大丈夫だよ。
いつ元に戻るのか・・・、それは人によって違うらしい。
今までの例からいくと、1ヶ月から2ヶ月で戻っている。
私の計算では・・・・・あと1週間。
あと1週間でウルキオラは元に戻る。
ただね・・・・
元の姿に戻ったとき、小さくなっていたときの記憶はないらしい。
例外はあるかもしれないが・・・・・確立は少ないだろうね。
だからグリムジョー、
最近のお前を見ていると、本当に・・・・・ウルキオラを大事にしているから・・・・・・。
少し、覚悟しておく必要があるかもしれないね。
・・・・そうですか・・・。
ありがとうございました。失礼します。
『ぐりむじょー?どうしたの??いーるとろいかえるっていってるよ??』
『あ?・・・・あぁ、悪い、ありがとよ』
二人を見送った後、俺はウルキオラを抱き上げて、ソファへ座った。
感触を確かめるように・・・・・
チビウルがココにいるんだという事実を確かめるように、ぎゅぅっと強く抱き締める。
元に戻るなら・・・・いいんだ。
早く元に戻ればいいと思っていた。
深く考えていなかったから。
ウルキオラが元の姿に戻るということは、チビとはお別れって意味なんだと。
わかっていたはずなのに。
藍染に言われて・・・・その重みを改めて知った。
小さいころの・・・・・・今の記憶がなくなる。
チビと過ごした、約1ヶ月間の記憶。
チビの中からなくなる。
寂しい・・・・・・
でも・・・・・
俺だけは、憶えておくから。
紛れもないウルキオラとの記憶だから。
お前が忘れてしまっても、俺は忘れないから。
本当は、憶えていてほしいけど・・・・・。
『ぐりむじょー?くるしいよ・・・・・・どうしたの?どこかいたい??あいぜんさまにいじめられたの??』
『・・・・・・・ちげぇよ。そんなことされてねぇし、大丈夫だ。なんでもねぇよ』
『ほんと?・・・・じゃぁね、げんきがでるように、いいものあげる』
『・・・・・??なんだ??』
『あーんして?』
『ん?・・・・・・コレ・・・・・』
口の中に放り込まれたのは、チビウルがいつも持ち歩いている飴玉。
しかも・・・・・・
一番のお気に入りのピーチ味。
いつも大事に大事に食べているものだ。
『いいのか??お前のお気に入りだろ?』
『いいの。だから、それたべてげんきになってね??』
『・・・・・・いい子だな・・・・。すっげぇ元気出たぞ』
『ほんと!?えへへ〜。ぐりむじょーだいすき!!』
あと1週間、俺が今出来ることは・・・・・・
チビともっとたくさんの愛おしい思い出を作ることだ。
心配なんかさせてる暇あったら、俺を忘れねぇぐらい愛して愛して・・・・・・。