Happy02☆Birthday
世はゴールデンウィーク真っ只中。
そのはずなんだけどマフィアにゴールデンウィークなんてものはないらしく、相変わらず忙しそうに走り回っている僕の恋人。
今日は僕の誕生日なのに。
祝ってほしいとかそんなこと今まで思ったことなんかなかったのに。
あの人から言われる言葉ならほしいと思ってしまう。
1番ほしいものは手に入らないね。
きっと今もあの人は生と死のはざ間にいて、連絡も出来ないほど忙しいんだ。
それどころか僕の誕生日すら忘れているかもね。
ボスとか言っときながら抜けてるもんね。
まぁ忙しいって・・・・記念日とか特別な日とかめったに祝えないって知ってて付き合ったのは僕だし。
朝からこんなことばかり考えてイライラモヤモヤ。
仕事する気にもなれなくてベッドの上で寝転がって。
いつもなら学校の応接室に行くのにそれすらも嫌で。
ただ何もしないで寝転んでいるだけ。
時間だけがどんどん過ぎて気付けば昼を回っていたり。
何も飲まず喰わずで・・・・・気付けば辺りはすっかり暗くなってたり・・・・。
こんなに1日を無駄にしたのは始めてかもしれない。
眠っていたわけでもないのに。
ただボンヤリとしていただけ。
いや、ちゃんと考えていた。
自分の誕生日のことじゃなくて、むしろそれは忘れかけてて。
思っていたのはディーノのこと。
今何してるとか、元気なのとか。
答えも出ないことずっと考えて・・・・・なんて馬鹿らしいんだろう。
あぁ・・・・・後1時間で今日が終わる。
本当に今日1日を無駄にした。
明日はちゃんと動かないと・・・・・。
緑たなびく〜並盛の〜・・・・・・・・
聞きなれた音楽が頭元から流れて、億劫な体を起こして携帯を手に取る。
誰だろう・・・・と携帯を開いてディスプレイを見た瞬間僕は急いで通話ボタンを押してそれを耳に当てた。
耳元から聞こえるのは僕が1番聞きたかった声。
もしもし恭哉?悪いなこんな時間に。寝てたか?
『起きてるよ。どうしたの?』
嬉しいくせにそれを素直に出せずに平然を装う。
僕を名前で呼ぶこの声が、今日1日ずっと聞きたかったんだ。
声を聞く限り元気そうで少し安心した。
どうしたの・・・・ってなぁ。まぁ遅くなった俺も悪いけど・・・・・・ハッピーバースディ、恭哉
『・・・・・・覚えてたの?』
忘れるわけねぇだろ。・・・・言い訳かもしんねぇけど、今仕事が落ち着いてよ、ギリギリセーフってとこだよな?
時計を見ると12時になる10分前。
それでも確かに“今日”で。
『うん・・・・ありがと』
そう言うのが精一杯。
今ディーノがこの場にいなくてよかった。
こんな顔見せられないもんね。
自分でも見たことないよこんな顔。
それぐらい嬉しいんだ。
1番ほしかった声で、1番ほしかったものがもらえて。
あのさ・・・・プレゼントなんも用意出来てねぇんだ。ごめんな
それを聞いて僕は違和感を覚えた。
イタリアにいるはずのディーノ。
プレゼントなんて用意してても渡せる距離じゃないし、くれるつもりなら今度こっちに来るときにでも用意してくればいいのに。
『さもこの場にいるみたいに言うんだね』
さすが恭哉だな。・・・・・窓の外見てみろよ
ディーノの言葉にまさかと思って急いでカーテンを開けて窓を開け、バッと下を見ると・・・・・。
携帯を耳に当てながら片手を挙げるディーノの姿があって。
そこにいるのに信じられない。
『なんで・・・・いるの?』
思ったより仕事が早く片付いてさ。急いで飛行機飛ばしたんだよ
『ほんとに・・・・普通じゃないよ』
なんでだ?大事なやつの誕生日に傍にいてやれない男なんか最低だろ
『・・・・・とにかく部屋に上がってきなよ』
電話を切ってディーノを部屋に上げる。
近くで見ると少し疲れた顔をしていて、そんな中会いに来てくれたことがさらに嬉しくなる。
『あぁ〜・・・・日付変わっちまったな。もうちょい早くこれたらよかったんだけどな。プレゼントもねぇし』
『来てくれただけで・・・・満足してるよ』
ディーノ自身が最高のプレゼントなんだから。
肩を落とすディーノにそう言葉をかけると、またいつもの笑顔を取り戻して、いつのまにやら抱き寄せられていた。
この温もりも久しぶり。
『あぁ〜〜〜恭哉補充〜〜』
『なに言ってるの。情けない声出さないでよ』
『仕方ねぇだろ〜。恭哉、愛してる』
『・・・・・うん。僕もディーノのこと愛してるよ』
だって、こんな最高の人、どこ探してもきっといないだろうからね。
今までで1番最高の誕生日だよ。
ディーノは“プレゼント”だと言って優しくキスをくれた。
何もかも久しぶりだから、そんなちょっとじゃ当然足りなくて、何度も何度も交わすキス。
なにもかも嬉しくて・・・・・・・・なにもかもがプレゼント。
end
5/5 Happy Birthday 雲雀恭哉