マイペース彼氏
あいつはいつも急に窓からひょっこりやって来る。いつ来るかなんて解らない。すっごい気まぐれなヤツで・・・。
それでも俺は待ってる。いつもいつも。気まぐれでこの窓からひょっこり現れてくれるのを・・・。
『イチゴちゃんvV遊びに来たでぇvV遥々君の王子様が』
『誰が王子だ?それと・・・・・今俺のこと果物の方で呼びやがっただろ!!?俺は一護だっつの!!』
気まぐれな猫は一週間ぶりに現れた。気まぐれすぎてもぅ来ないんじゃないかとも思っていたのに・・・。それでも来てくれたことに安心する。結局俺はこの気まぐれ猫にベタぼれ。
『そんなんわかってるよ〜。わざとや。そんな怒らんとって。一週間ぶりに会えて僕、もぅ嬉しくて堪らんのやから』
『一週間ほったらかしといたのはあんただろ?知るかよ』
俺だって嬉しいのにそんな憎まれ口ばかりたたいてしまう。
『言い訳するつもりやないけど・・・僕かて一応隊長やからなぁ・・・思うように抜けて来れんのや。暇やったら毎日でも通うたるのに』
解ってる。忙しいことも知ってる。今だって十分無理して会いに来てくれてるんだって知ってるけど・・・それを素直に受け入れられるほど大人になれない。ギンを困らせてるのは解ってるけど・・・ギンの優しさに甘えてしまう。
『そんなすねた顔せんとって?せっかく会いに来たんやから時間有効に使わな』
ギンは窓からヒラリと降り、俺を後ろから抱きしめた。
『僕一週間も一護に触れんかったら気狂いそうやったわ・・・。一護補充〜』
『・・・俺だってな・・・そうだっつの』
俺もギンに抱きつきたくて身を反転させギンと向かい合う。そして一週間ぶりに抱きついた。
『なんやぁ?えらい積極的やなぁ。そないに寂しかった?』
ギンは俺を受け止めながらよしよしとするように髪を撫でてくれる。
すっげー寂しかったと訴えたくて一度体を離すとその隙にチュッと唇を奪われる。
一週間ぶりのキスにしては短くて物足りない。そう思っていたのもつかの間。すぐにそんなこと思えないくらいに激しいキスをされる。
『ん!!!!んぅ〜っ!!』
苦しくて背中をバンバン叩くとようやく唇が離れていく。
『息出来ねぇほどすんなよ!』
『だって久々すぎてちょこっとチューしたぐらいじゃ足りんかってんもん』
『だからってがっつき過ぎなんだよ!』
『堪忍。ほんなら今度はゆっくりやるからもっかいな?』
俺は返事の変わりに目を閉じる。ギンは俺を引き寄せて今度はゆっくりとしてくれた。吸い付いては離れてまた吸い付いては離れてを繰り返してだんだんと吸い付いている時間が長くなっていく。しばらくそのキスが止むことはなかった。
一週間分を埋めるように、そしてまたいつ会えるかわからないからその分も、十分にキスを堪能した。そして俺は・・・・・あまりに濃厚なキスに腰が抜けて、さっきキスしていたときの体制(ギンの膝の間に入り向かい合わせで座っている状態)でギンにしがみ付いていた。というかもたれかからなきゃどうしようもない状態になっている。
『まさか腰抜かすやなんて思ってなかったなぁ。まぁ僕は今幸せやけどね。ずっと一護とこうしてたい』
俺だって出来ることならそうしたい。帰ってしまうギンを引き止めていたいけど、それは絶対に無理だ。これ以上ワガママ言えないし。だからこそ限られた時間を出来るだけ引っ付いていたい。
『あァ・・・もぅちょっとしたら帰らなあかん・・・』
『もうなのか??なんか早い・・・』
『また時間見つけて来るから。待っててや。浮気は許さんよ?』
今若干開眼した気がする・・・。ギンの開眼はちょっと怖い。まぁ浮気なんてする訳ないけど。
『ギンこそすんじゃねぇぞ?浮気なんかしたら俺ギンを斬るからな』
『おぉ怖。そらあかん。でも君に殺されるなら本望や』
そんな事ばっかり言っていつも俺を茶化す。でも浮気なんてする訳ないって信じてるから。
信じてなきゃ遠距離恋愛なんて出来ない。
『時間や・・・。一護立てるか?』
『あぁ。平気だ』
そういって心地よかったギンの懐から抜け出す。ほんとに名残惜しい。
『一護・・・おいで』
手を差し伸べられそこに手を置くと引き寄せられ抱きしめられた。そして触れるだけのキスを落とされる。そのまま唇は首筋まで辿っていき、ギンはそこにチュッと吸い付いて痕を残す。もう少し下の鎖骨の上辺りにも同じようにつけられる。
『今度会いに来るまで寂しないように。おまじないや』
『・・・・じゃぁ俺もつける』
ギンがつけたところと同じところに二箇所俺も同様に吸い付き痕を残した。
『さて〜一護補充も出来たし、こんなヤラシイ痕つけてもろたし。これでしばらくは頑張れるわ!寂しいけど・・・。一護、愛しとるよ』
『あぁ。俺も愛してるから』
『今度来るときはもっとゆっくりくるから、めっちゃエッチィことしよなぁ』
『なっ!!?やんねぇよ!!』
聞こえたのか聞こえてないのか・・・気まぐれ彼氏は来たとき同様窓から帰って行った。急に1人になった寂しさはあるけれど今はこの“痕”と散々吸われて少し痛い唇と抱き合った温もりが支え。
今度はいつ会いに来てくれる?待ってるから。
せめてこの温もりが消える前に・・・。
end