暖かく心地の良い眠りから目を覚ます。
横にいるやつを起こさないようにそっとベッドを抜け出して・・・・・。
その腕の心地良さに戻ってもう一度眠ってしまいたい欲を押さえつけ、寝室を出た。


 眠気覚ましに顔を洗いに行って、キッチンに戻ってくる。
気持ちよさそうに寝ているアイツが、起きてすぐに食べれるように朝ご飯の準備をするために。
朝は白米が良いと言うアイツのために朝からご飯を炊いて。
野菜をたくさん入れた味噌汁を作って魚を焼く。
それが今日のメニューだった。
米を洗って炊飯器を仕掛ける。魚も魚焼き機に放り込んだし・・・・・。
後は野菜を切るだけ。もやしは洗って水にさらして、大根も今切り終わった。
次はねぎでも刻もうか・・・・と包丁を握ったその瞬間・・・・・後ろから何かに捕らえられる。
驚いた俺は思わず叫んでしまうが・・・・・よく考えればそんなことをする相手は1人しかいないわけで・・・・。


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!って・・・・・コラ!危ねぇだろうが包丁も火も使ってんのに!!』
『・・・・・ぅるせぇ・・・・・』
『・・・?ってなんか機嫌悪ぃ・・・?起きたばっかなのになんで不機嫌なんだよ?』
『テメーが横にいやがらねぇからだろうが・・・・』
『っしゃぁねぇだろうが。朝飯作ってんだから。つーか離せよ、ねぎ切れねぇだろうがッ』


 起きてきた瞬間から不機嫌に俺を抱きしめているのはグリムジョー。
離してくんねぇし・・・・・。ったく、誰のためだと思ってやがんだ。
とにかく包丁を突き立てて・・・・離れてもらって、調理の続きを始める。
納得がいかないのかグリムジョーは俺の後ろから離れようとしない。
じっとこちらを見ているのはわかるんだけど・・・・・・。
ため息をついて俺は引き出しからスプーンを取り出し、味噌汁をすくう。
湯気立つそれにふーっと息を吹きかけ冷まし、くるっと振り返った。
急に振り返った俺に驚いたのかグリムジョーの目が見開かれる。

『グリムジョー、味見』
『・・・・・』
『辛い?』
『いや・・・・』
『んじゃ出来上がり!コレ運んで座って待ってろよ。・・・いつまでも拗ねてっと知らねぇからな・・・』

 皿に魚を乗せてグリムジョーに渡す。
最後の言葉は小声で。
グリムジョーは“拗ねてねぇよ”と言いながらその皿を取ってテーブルに運ぶ。
その後ろ姿を見ながら少し微笑み炊き立てのご飯をお揃いの茶碗につぎ、運んで俺も席についた。
“いただきます”と手を揃えて2人で朝食を取る。
食べだすころにはグリムジョーの機嫌も直っていて・・・・・。

『飯食い終わったらどっか出かけるか?』
『ん?どこ連れてってくれんだよ?』
『・・・・考えとけよ』

 要するに、好きなとこに連れて行ってくれるらしい。
どこに連れて行ってもらおうか・・・・・と考えていると、ふいに名前を呼ばれ、グリムジョーの方を向くと、いきなりのドアップ。
口の端にグリムジョーの唇が触れて、すぐに離れていく。
真っ赤になって口をパクパクとしていると、ニヤっと笑って・・・


『ついてたぜ?米』
『ッ・・・普通に教えてくれりゃいいだろ!』
『そんな微温ぃことするかよ』


 そのあと何事もなかったかのようにまた飯を口に運び出す。
振り回されるのも嫌で、俺も大人しく残りを食べる。
今度は口につかないように・・・・・。

 そういえば・・・・・大事なこと聞いていない。
ふと思い出して、食べる手を止め、グリムジョーをまっすぐに見据える。
そんな俺に気がついたのか、グリムジョーも俺と目を合わせ、怪訝そうに俺を見る。
俺が聞きたかったこと・・・・・


『なぁ・・・・・うまい?』
『ぁあ?』
『飯。うまいか?』
『・・・?あぁ・・・』
『“あぁ”じゃなくて・・・・』
『ったくよぉ・・・・しゃぁねぇな・・・・・。・・・・・うめぇよ』
『あぁ!サンキュ』


 それが聞ければ十分。
そんな朝の2人・・・・・。



                                                                    end