甘えんぼ
そっと横を見ると、いつも当たり前のようにグリムジョーがいて・・・・・・。
そっと見ているつもりなのにいつもコイツは俺の視線に気がつく。
目だけで“どうした?”と聞かれても・・・別にどうもしない。
ただ・・・・グリムジョーを見たかっただけなのだから。
そうも答えられず、視線を逸らす。
俺の勝手で見て、俺の勝手で逸らしてもグリムジョーは文句1つ言わずに、また視線を元の場所に戻してしまう。
俺の視線に気付いてくれて嬉しい。気付いてほしいと願うから。
でも本当に向かれると困る。
気付いてほしくて・・・・ほしくない。
なんて天邪鬼な自分。
グリムジョーは俺の髪に触れるのが好き。
今もずっと。
あの視線を逸らして、しばらく経った時から。
テレビを見ながら俺の髪を撫でている。
それが気持ちよくてウトウトする自分。
いつの間にか・・・・本当に知らぬうちに、俺はグリムジョーにもたれかかっていた。
そんな自分に驚いて、バッとグリムジョーの肩に乗った自分の頭を上げる。
『どうした?』
『・・・・いつ・・・からだ・・・?』
『ぁあ?』
『・・・・なんでも・・・ない・・・』
寄りかかったのはいつからだ?と聞くに聞けず押し黙る。
すると、グリムジョーに頭を捕まれ、またさっきのようにもたれかかる形にされた。
その手を振りほどこうにも振りほどけず、上から押さえつけられている手を押しのけるのにも疲れて抵抗をやめる。
ただ・・・・全部の抵抗をやめてしまうのはすこしシャクだから・・・・・。
顔だけを上に向けてグリムジョーを睨みつけた。
睨んでいるのにグリムジョーの顔はニヤニヤ。
そんな張り合いのない顔をされると本当にどうでもよくなって・・・・。
大人しくグリムジョーにもたれかかっていた。
特に会話をするでもなく、ただ引っ付いているだけ。
それでも・・・・・寄りかかれる相手がいることが幸せ。
見上げれば見つめ返してくれる。
名前を呼べばすぐに返事をしてくれる。
それだけのことが・・・・とても幸せで、嬉しくて・・・・・。
ぎゅぅっとしがみついた。
無性にそうしたくなった。
普段ならあまりしないことだけど、もっともっと密着したくて。
少しの隙間も許せないほど。
『ウル・・・?』
何も言わずしがみ付く俺の髪をグリムジョーはまた撫でる。
髪に口付けを1つ。
それを見上げた唇に1つ。
ついでとばかりに頬にも1つ、軽い口付けを落とし、もたれる俺の頭に自分の頭を乗せてきた。
その重みさえも心地いい。
そのときふと視界に入ったのはグリムジョーの手。
俺はグリムジョーの手が好き。
その手をそっと取って自分の手を重ねる。
自分の手より一回り・・・二回り大きな手。
その指に自分の指を絡ませて握ると、それまで俺の好きなようにさせていた手に力がこもり、握り返してくれる。
そのままその手はグリムジョーの口元へ持っていかれ、手の甲に音を立てて口付けられた。
そしてそこへペロッと舌を這わせるグリムジョー。
指の股、人差し指と中指の間に舌を這わせて、そこをしつこく舐めると次は隣。中指と薬指の間。
丁寧に舐めていく。
『ココ、少しは感じんだろ?』
『・・・・バカ』
グリムジョーの言うとおり、感じるまではいかないにしても、少しくすぐったくてムズムズする。
体が敏感になっているときにコレをされれば、もしかすると感じてしまうかもしれない。
そこで、ふと頭をよぎる考え。
本能のままに行動してみる。
繋いだままのグリムジョーの手を今度は俺が自分の口元に持っていく。
グリムジョーがしたように同じように口付け。
そして、ココからが試したかったこと。
グリムジョーも指の股を舐められると感じるのだろうか?
そう思ってグリムジョーの手を両手で持って、指の股に舌を這わせる。
しかしグリムジョーはなぜか含み笑い。
『ウルキオラ?何してんだよ?』
『グリムジョーは感じないのか?』
『くすぐってぇ』
『そうか・・・・』
あまり自分が見たかった反応を示してくれなくて面白くない。
肩を落とす俺にグリムジョーは笑いながらまた髪をくしゃくしゃと撫でた。
本当によく触る。
無意識なんだろうか?
そんなに触り心地がいいのか?
自分で手を伸ばし一撫で。
でも結局自分で触ってみてもなにがいいのかわからなかった。それに・・・・気持ちよくなかった。
グリムジョーに触られるとあんなにもウトウトして、倒れこんだのもわからないくらいボーっとなるのに。
俺の好きなグリムジョーの手に撫でられるとこうも気持ちがいい。
もっと撫でてほしくてまた擦り寄ると、グリムジョーは俺の気持ちがわかるように撫で始める。
やっぱり・・・・自分でするより全然いい。
また、ウトウトとまぶたが落ちそうになる。
でもその前に・・・・・。
寄りかかる体を起こし、グリムジョーを見つめる。
必然的にグリムジョーも俺を見て・・・・・その唇に自ら口付ける。
『・・・・今日のウルは甘えただな』
『・・・礼だ』
『礼?なんで?』
『・・・・さぁな』
また体を預けると、グリムジョーもまた俺の髪を撫でる。
やはり無意識のようだが・・・・・。
俺がグリムジョーに撫でられるのが好きだということに気付いているからかもしれないな。
end