sweet kiss




『グリムジョー、今少しいいか?』
 ドアの方を見ると、そこにはウルキオラが立っていた。
『・・・・めずらしいじゃねぇか。テメーから来るなんてよ』
 ほんとにめずらしいことだった。いつも俺からウルキオラを訪ねていくのが当たり前だったからだ。
だから何か用があることには違いない。何もないのにこいつが来るはずがない。
もしコイツが・・・“会いたかったからだ”・・・なんて奇跡に近いこと答えやがったら俺はココで死んでもいい。
 そんなことを考えている間にも、いつの間にかウルキオラが部屋に入ってきていて、俺が座るベッドに腰を掛けた。
『先ほど市丸様から聞いたのだが、今日はバレンタインデイという日らしい。なにやらチョコを渡す日らしいが・・・・知っているか?』
『(よかった、会いたいとかじゃなくて・・・・)・・・・あぁ?知ってんに決まってんだろうが』
『そうか・・・・・欲しいか?』
 なっ?!くれんのか??ウルキオラが俺にくれんのか??くれるつもりなのか??
『テメーが作んのかよ?』
『・・・?そのつもりだが・・・』
 ・・・・・ウルキオラは超絶不器用。料理なんか出来るわけない。そもそもチョコがなんなのか知ってるのかも微妙なんだが・・・・。
『作り方知ってんのか?』
『・・・・・・なんとかなる』
『・・・・・。やめとけ』
『なぜだ?』
 小首をかしげるウルキオラに胸が高鳴る。・・・なんでコイツこんな可愛いんだよ・・・・・。
『欲しくないのか?』
『・・・・・・そういう訳じゃねぇけど・・・・・』
『欲しいなら言えばいいだろう。では今から作ってくる。出来たら持ってきてやるからおとなしく待っていろ』
『ちょ・・・おいっ・・・』
 俺の声は聞かず、そのままスタスタと 俺の部屋から出て行ってしまった。
 ・・・・・チョコは嬉しい。そりゃぁウルキオラが作ってくれんだし嬉しいに決まってるんだが・・・・・・“なんとかなる”とか言ってやがったからな。なに作る気だよ・・・・。つーか・・・・ケガすんじゃねぇか・・・??
 不安は募るばかり。俺は居ても立ってもいられなくなって、部屋を飛び出した。行き先はもちろん・・・調理室。


 足早に調理室の前まで来ると、なにやらカチャカチャと音が聞こえる。どうやらここであっているようだ。
そっとドアノブに手をかけ音を鳴らさないように静かに回し、少しドアを開く。そこには確かにウルキオラの姿があった。でも・・・・俺は危うくその場に崩れ落ちるところだった。
ウルキオラの格好ときたら・・・・・・・エプロンに三角巾(バンダナ)を巻いている、なんとも可愛らしい姿で・・・・・。鼻血が出なかっただけましか・・・・よく堪えた俺。
 もう一度中を覗くと、本を片手に真剣にチョコ作りに励んでいる姿が見える。ここからではなんの作業をしているかいまいちわからないのだが・・・・ たぶん今はチョコを溶かしている最中だ。中は甘ったるい匂いが充満している。
 しかし・・・・・・危なっかしい手つきだ。見ているこっちの方がビクッとしてしまう。それでも真剣に自分のために作ってくれているのだと思うと、嬉しくて顔がにやけてくる。
 その時、背後からいきなり声がして、俺はバッと後ろを振り向いた。
『どないしたん?こないなとこで』
『市丸・・・・』
 立っていたのは市丸ギン。余程中に集中してしまっていたのか・・・・・まったく気がつかなかった。
『ん〜中に誰かおるん? ・・・・あァ、ウルキオラか。この匂いはチョコやね。作ってるん?』
『あぁ』
『へぇ〜・・・心配やねや。危なっかしい手つきしてるもんなァ。可愛いゎ』
『うるせぇよ』
 何を考えているのかわからないコイツは苦手だ。だが・・・ウルキオラを狙うってんならんなことも言ってられねぇけどな・・・・・。
『おぉこわ。ほんなら僕も部屋戻ろ。あァ、一個忘れとった。どんなにまずぅても男やったらおいしいって食べたるんやで?』
『うるせぇって。さっさと行けよ』
 言われなくても解ってるっつの。そんなこと当たり前だ。
軽く睨むと、市丸はニヤっと笑って来た道を戻っていった。その背中から調理室の中に視線を戻すと、ウルキオラはなにやら粉をボールにうつしているのが見えた。そしてそのボールになにやらたくさん放り込み、手でかき混ぜ始めた。
『(何作ってやがんだ??)』
 なにか捏ねているようだが・・・・・チョコには関係のないように見える。でも、本を見ているということは載っているのだから安全なんだろう。相変わらず手つきは危ないものの、なんとか大丈夫そうだ。
不安ではあるが、俺は自分の部屋でウルキオラを待つことにした。



 部屋で待つこと数時間。途中やっぱり心配になり、何度も見に行こうとしたが、我慢して待っていた。
やっと、ウルキオラが俺の部屋をノックする。俺は少し緊張しながらも、ウルキオラが入ってくるのを待った。
ドアが開き、静かに入ってくるウルキオラ。ベッドに腰掛ける俺の前まで来ると、スッと俺に箱を差し出した。
『待たせた。一応作ってみたんだが食べてくれるか?』
 似合わない不安気な顔と言葉。そんな自身なさ気なウルキオラを見るのは初めてで思わずドキッとする。
それでも無言でその箱を受け取りリボンを解いて箱を開ける。 中にはハートや星の形をした一口サイズのチョコと、クッキーが入っていた。何枚かのクッキーにはチョコがかけられている。
 あの不器用なウルキオラがココまでやったのかと思うと、驚きを隠せない。
『・・・食べてくれないのか?』
 驚きすぎて黙って凝視していた俺にウルキオラが不安気な声を出す。それを否定するように、俺はチョコをつまみ、口に入れた。
『うめぇ・・・』
 ボソッとつぶやいたのが聞こえたのか、ウルキオラの顔が一瞬にして変わる。さっきまでの不安気な面持ちはどこにもない。
 本当に初めて作ったのか?と疑いたくなるほどうまく出来ている。 クッキーも丁度いい甘さで・・・・。
 俺が食べるのをじっと見ているウルキオラの口にチョコを放り込んでやると、驚きながらも“うまい”と口にする。
 手に持っていた箱を横に置いて、ウルキオラを引き寄せ、自分の間に座らせて背中越しに抱きしめる。
耳元で“サンキュ”と囁くと、“あぁ”と短く返ってきた。
 肩口に顔を埋めると、甘ったるい匂いがする。髪にも、チョコの匂いが移っているようでウルキオラ全身から甘い匂いが漂う。
『すっげー甘ぇ匂いしやがるな・・・・・・食いてぇ』
『??まだ残っているだろう?』
 そういって俺がさっき横においた箱を見る。ったくこの天然ボケ。
『ちげーよ。テメーが食いたいっつってんだよ』
 言葉で通じないなら実力行使。ウルキオラの唇を塞いで、ベッドに押さえつけた。
『ッ・・・・グリムジョー・・・・・・・?』
『結構我慢してたんだぜ?』
『一昨日しただろう?』
『今日さんざんあおったテメーが悪い』
 可愛い顔するしエプロン可愛いし・・・・どれだけ俺が押し倒したい衝動我慢したと思ってやがんだコイツは。つってもコイツに自覚はないだろうがな。でももう我慢できねぇ。




『なぁ・・・・していいか?』
『っ・・・もぅ・・・してるじゃないか・・・・ッ』
『まだしてねぇだろ?ここで止めてもいいぜ?』
 首筋に顔を埋め、舌を這わせる。 もちろん止める気なんかさらさらないが・・・・きっとコイツももぅとめたりしないだろうということを知っているから。
さっき散々キスで蕩けさせてやったから、今一番辛いのはウルキオラの方だからな。
意地悪く、わざと“どうする?”と聞いてやる。するとウルキオラは手で顔を覆いながらも小さく口にした。
『早く・・・しろ・・・』
 思い通りにいった俺は気分よく、ニヤっと笑ってウルキオラの手をどけて、口付ける。
『ほんとにどこもかしこも甘ぇな』
『ぁ・・・っ』
 わき腹を撫でてやると、体が震える。もともとくすぐったがりなウルキオラはどこを撫でてやっても反応するのだが、特にわき腹が弱い。
それがおもしろくて、ついそこを一番最初に攻めてしまう。
そこから体に沿って上がり、胸の突起を見つけると、そこばかりを弄ってやる。細く白い体が波打ち、乱れる息に胸が上下する。
『ウルキオラ・・・・』
『ん・・・・はぁ・・・・ッ』
 苦しげに目を瞑るウルキオラに気付き、パッと下腹部に視線をやると、軽く勃ちあがったウルキオラ自身が目に入る。
そっと手を伸ばし、指でなぞってやるとウルキオラが眉根を寄せた。少し硬さを増したそれを握って軽く動かすと、ウルキオラの口から甘い声が漏れる。
『ゃ・・・あっ・・・んッ・・・』
 何かに捕まりたいのか、手を伸ばすウルキオラのために体を近づけてやると、ウルキオラはすぐにしがみ付いてきた。その間も手を動かしてやると、必死に俺の背中をかき抱く。
苦しいのか涙を溜めるウルキオラの目尻にキスを落として、手の動きを早めた。
『んっあぁッ・・・グリ・・・ムジョッ・・・ぁ・・・っ』
『出しちまえ・・・・』
 体から一瞬力が抜けたかと思った瞬間、ウルキオラは俺の手の中ではじけた。



『平気か?』
 ベッドの上でぐったりするウルキオラに声をかけると、目だけをこちらに向けて、俺をじっと見る。
『・・・・なんだよ?』
『疲れた・・・・・』
 少し苦笑して、髪を撫で、うっとうしそうな前髪をすいてやる。そして目に入ったのはウルキオラに貰ったチョコの箱。
それを手にとって中を見るとまだだいぶん残っている。1つ摘み口に含んでそのままウルキオラに口付ける。
『ん・・・ッ・・・・甘・・・?』
『疲れたときには甘いものがいいんだとよ』
『・・・・・・そうか・・・・』
 俺も1つ食べてから、ウルキオラの隣に寝転がる。軽く抱きしめてやると、 ウルキオラも擦り寄って来て・・・・。
あんなにたくさん作ってくれたせめてものお礼に俺はウルキオラのおでこに優しくキスをした。


                                                                      end