existence




 グリムジョーがいない・・・・・。

朝から探しているのだけどどこにも霊圧を感じない。

部屋はもちろん探した。

しかしそこにはいなくて・・・・・。

グリムジョーが行きそうなところは全て回った。

2人しか知らないところも全て。

イールフォルトに聞いてもロイに聞いても朝から姿を見ていないと言う。

どこに行ってしまったんだろうか?



『なんや?どないしたんウルキオラ』

『市丸様・・・・』

『めずらしく焦ってるやないの』

『・・・・・焦ってなどいません』

『そうかァ?で、どないしたん?』



 今の俺は周りから見てそんなに焦っているように見えるのだろうか?

グリムジョーの姿が少し見えないくらいでこんなにも探し回って・・・・。

それでもなにか不安で・・・・・探さずにはいられないんだ。



『グリムジョーを見ませんでしたか?』

『グリムジョー?そういえば見てへんなァ。・・・・あァ、だからそんなに焦ってたんやね』

『・・・・・』

『なんや用事でもあるんか?』

『いえ・・・・』

『心配せんでもそのうち帰ってくるて。藍染さんからはなんも任務出てないはずやから散歩にでも行ったんちゃう?』

『そうですか・・・・失礼しました』



 これ以上探られるのも困る。

俺は一礼して市丸様の横を通り過ぎた。

グリムジョーがいないだけで・・・・・こんなにも焦っている自分が許せない。

なにも言わずに出て行くアイツも許せない。

別に俺にいちいち報告してから行けとかそういうことではないが・・・・・

あれだけ毎日くっついてくるくせに自分勝手すぎる。

俺がなにも言わずに離れると怒るくせに。

探していてもいないものはいない。

俺は諦めてもと来た道を戻る。

ただし向かった先は自分の部屋ではなく・・・・・アイツの部屋。




 部屋の主がいない部屋。

今さら勝手に上がりこんだところでとやかく言う仲でもない。

アイツがいつも座っているソファに座って、背もたれに使っているクッションを抱きかかえる。

かすかに残るグリムジョーの匂いと霊圧。

それだけで少し落ち着くが、同時にとてつもなく寂しくもなる。

堪えるようにクッションをぎゅうっと抱きしめた瞬間、まだ小さいが確かにグリムジョーの霊圧を感じた。

トクンっと高鳴る胸が期待に膨らむ。

だんだんと近く、大きくなっていく霊圧。

ドアが開くのをじっと待つ。

足音も聞こえてきて、ドア一枚挟んだ向こう側にグリムジョーを感じる。

俺はバッと立ち上がり、ドアが開いてグリムジョーが入ってくるのと同時に胸に飛び込んだ。



『ぅおッ?!なっ・・・?ウル??なんで俺の部屋にいやがんだよ?』

『・・・・・・』



 グリムジョーは俺の体を抱きとめながら疑問をそのまま口に出す。

そうしながらもしっかりと俺の体を抱きしめてくれている。

朝からずっと探していた熱が、今はちゃんとここにある。

さっきまでの不安も、寂しい気持ちも全てグリムジョーがさらっていく。



『どうした?』

『どこへ行っていたんだ・・・・?』

『あぁ・・・・・ちょっと現世までな』

『1人でか?』

『連れて行って欲しかったのか?』

『・・・・・』

『悪かったって。とりあえずあっち座ろうぜ?』



 グリムジョーは俺の手を引いてソファへと連れて行く。

俺を座らせて自分もその隣に腰を下ろす。

俺はグリムジョーを見れない。

なぜか置いていかれたような・・・・・そんな気持ち。

ムスッと膨れていると、グリムジョーはクッと喉を鳴らして笑った。



『そんな膨れんなよ。今日はどうしても1人で行きたかったんだよ』

『そんなもの・・・・勝手に行けばいいだろう』

『じゃぁなに怒ってんだよ?』

『それは・・・・・』



 言葉に詰まる。

やっぱり連れて行ってほしかったからだろうか?

グリムジョーにだって自分の時間がある。

いつも、いつでも一緒なんてそんなものは我が侭でしかない。

それは解っていたのに。

こんな子供みたいな・・・・・。

 言葉の続きは思いつかずグッと黙って俯いていると、グリムジョーの大きな手が俺の髪を撫でた。

グッと引き寄せられ、その胸に押し付けられる。



『まぁ聞けよ。一人で行きたかったのにはちゃんと理由があんだぜ?』

『別に話さなくていい。お前の時間なのだから俺に報告する必要はないだろう』

『関係あんだよ。これをお前にやろうと思って・・・・・』

『・・・・??』



 グリムジョーは言いながら俺の首の後ろでごそごぞとなにかをやっている。

カチッと金属音がして、グリムジョーが俺から離れ、じっと首元を見ている。

その視線を辿り俺も視線を落とすと、そこには首からぶら下がったリングのついたネックレス。



『買ってきたのか?』

『あぁ・・・・・前に見つけてよ。ウルキオラに似合いそうだったからな』



 少し顔を赤らめながら髪を掻き揚げるグリムジョー。

俺はそのままグリムジョーに抱きつく。

自ら唇を近づけ、1つ口付けてから、耳に唇を寄せ“ありがとう”と呟く。

グリムジョーは返事代わりに俺の腰に手を回してくれた。

そしてもう一度キス。



『俺がいなくて寂しかったのかよ?』

『朝からずっと探してた』



 そう言うとグリムジョーは嬉しそうに笑った。

こっちは必死に探していたというのに・・・・・。



『今度からは・・・・・俺に言ってから行ってくれ』

『今日は特別だって。言って行ったらおもしろくねぇだろ?』



 だからって心配させないで欲しい・・・・・。

そう言いたかったが、笑うグリムジョーを見ているとどうでもよくなってきて・・・・・。

ずっと求めていたその熱に身を任せた。




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