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『ウルキオラって・・・・・・グリムジョーには心許してるんだね』
『ぁあ?なんだよ急に』

 俺の部屋につい先ほどやって来たロイに紅茶を入れてやって、ソファの目の前のテーブルに置いてやる。
ロイは“ありがと”と一言言ってからそのカップを手に取り口をつけた。
俺もロイの前のソファに腰をおろし、もう一度さっきロイが言った言葉の意味を聞く。

『なんでてめぇはそう思うんだよ?』
『んー・・・・なんていうか・・・俺達に対する態度とグリムジョーに対する態度が違うっていうのもあるんだけど・・・・』
『そうか?そんなに違わねぇと思うがな・・・・』
『ぅ〜ん・・・でも決定的なのは・・・・・』



 グリムジョーとウルキオラ、イールと俺はよく4人で誰かの部屋で集まってしゃべったりしてるんだけど・・・・・ウルキオラってよく寝てるんだよね。
でも寝てる間も神経尖らしてるみたいで、俺が毛布かけてやろうとしたらパチって目開いて起きちゃうんだ。
俺だけじゃなくてイールも。
イールはただウルキオラが寝てる横を通り過ぎようとしただけみたいなんだけど、ウルキオラはパチって目開けちゃったんだって。
それが1回きりなら俺もたまたまかなって思ったんだろうけど・・・・それがさ、何回やっても起きちゃうんだよね。
イールも同じこと言ってた。
だけど俺見ちゃったんだ。
グリムジョーがウルキオラに毛布掛けてあげたり、髪すいてあげたりしてるところ。
それでもウルキオラは起きなかったんだよ?
本当に起きないかどうか、それからしばらく観察してたんだけど、やっぱりグリムジョーが何しても起きないんだよね。
触っても起きないんだから横通るぐらいじゃ当然起きないし。
でもその後イールが通ったらやっぱりウルキオラ起きてたし・・・・・。
これってさ・・・・・・やっぱそんだけウルキオラがグリムジョーに心許してるってことだよね?
それにさ、ウルキオラって寝るときは決まってグリムジョーの近くに行くんだ。
これは最近気付いたことだけど・・・・・。
それって・・・・・安心して眠れるからってことかな?





『で、テメーはウルキオラが俺に心許してるって思ったのか』
『そうそう。信用してる・・・・のかな?』
『さぁな。つーか俺の霊圧に慣れたんじゃねぇのか?結構一緒に寝たりしてるからな』
『そんなんじゃない気がするんだけどなぁ・・・・・』

『なんの話をしてるんだ?』

『え?あっ、ウルキオラ』
『まぁたテメェは一言もなしに・・・・・。勝手に入ってきてんじゃねぇよ』


 またってことはよくやるらしい。
グリムジョーも文句を言いながらもさほど怒っていない様子で・・・。
 ウルキオラはつかつかとグリムジョーが座っているソファへ近づくと、ソファの真ん中に座っていたグリムジョーを押しのけ、腰を下ろした。
横に押しやられたグリムジョーはブツブツと文句を言いつつも少し詰めて座りなおし、ちゃんとウルキオラが座れるようにスペースを空けてやっていた。
そんなものを見せ付けられるとどうにも居たたまれなくなってくる。
それでも気になるものは気になる。

『ウルキオラはさ、グリムジョーに心許してんの?』
『・・・・・また貴様らはつまらない話を・・・・。そうだロイ、イールフォルトが探していたぞ。さっさといってやれ』
『え?うそっ!!ほんと?!早く行かなきゃまた怒られる!!あっ、グリムジョー!お茶ごちそうさま!!じゃぁねぇ!!』






 口早く言うと、ロイはそそくさと出て行ってしまった。
どうしてくれんだよこの空気・・・。
ロイが余計なこと言いやがるから気まずいじゃねぇか・・・・。
どう切り出そうか迷っていると、意外にも先に切り出してきたのはウルキオラだった。

『さっきの話・・・・どういうことだ?』
『・・・・・ロイがテメーの態度見てて俺には心許してるんだと思ったって話だ。ロイにはそう見えたんだとよ。で?実際どうなんだよ?』
『くだらんな』
『くだらなくねぇだろ?!』
『今更“わからん”などとは言わさん』
『なっ・・・・・。・・・・はっきり言わねぇとわかんねぇよ・・・』

 紅くなる顔を隠すためか、俺にもたれ込んでくるウルキオラ。
その行動でもうすでに答えは出ているようなもんだが・・・・・・ウルキオラの口から聞きたい。
まぁこの雰囲気じゃぜってー言っちゃくれねぇだろうがな。

『なぁウルキオラ、わかんねぇんだけどよぉ』
『死ね、屑が』
『だからよぉ、その屑に解るようにちゃんと説明してくれって言ってんだよ』
『・・・・黙・・・っ?!』

 文句ばかりしか出ないウルキオラの口をキスで塞ぐ。
至近距離でウルキオラの目を見つめて、一瞬のすきにソファの上に押し倒してやるとウルキオラは目を見開いて信じられないという顔をした。
強く唇を吸って、舌を絡めて・・・・・。
角度を変えて何度も何度も深く口付ける。

『ン・・・・ふっ・・・・』

 見開かれていた目もいつしかトロンと快感に任せた濡れた瞳に変わり、体からも諦めたように力が抜ける。
ぎこちなく背中に回された手からかすかに伝わってくる温もりに心地良さを感じながら、ゆっくりと唇を離した。
俺とウルキオラの唇を繋ぐ銀糸がツーっと伝って落ちる。
少し紅くなって濡れた唇をそっと拭ってやって頬にもうひとつキス。
あまり反応しないウルキオラにもう一度口付けようかと唇を近づけた瞬間、パシッと片手で口を塞がれた。
とめられた俺はムッと眉根を寄せてウルキオラを見る。
ウルキオラはバツが悪そうに目をそらした。

『それ以上・・・・・・しなくていい』

それだけ言うのが精一杯だったのか、頬を染めて目をギュッと瞑る。
俺はしばらくウルキオラをジッと見つめた後、塞いでいるその手のひらをベロッと舐めてやった。
少ししょっぱい。
驚きに手を離すウルキオラに、ニヤッと笑って見せて仕返しとばかりにすばやく唇にキスをする。

『なぁ、ウルキオラ・・・・・俺に心許してんだよな?』
『・・・・・わかっているならいちいち聞くな』
『だってよぉ、やっぱ言って欲しいだろ。俺にだけだって』
『なにもグリムジョーだけとは限らないだろう』
『本当にそうか?実際俺にだけだ・・・・・』

 今度は俺が口を塞がれる番だった。
さっきのように手ではなく口で。
俺にとっちゃぁ大歓迎だがな。
その反応だけで十分ウルキオラの気持ちもわかるし。
しばらくウルキオラの好きなようにさせた後、俺は反撃へと移るのだった。




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