気付いたもの〜ウルver〜




 気付くと奴が視界の隅にいて・・・・

近くにいない時ですら俺の心を支配する。

四六時中頭から離れない。

低い声も、奴特有の口の端を吊り上げて不敵に笑う顔も。

鮮明に思い出されて・・・・。

なぜそこまではっきりと奴の顔だけは浮かぶのか。




 はるか前方からグリムジョーの霊圧。

あぁ、また突っかかってくるのだろう。

ウンザリだ。

毎日のように飽きもせず突っかかってくる奴は・・・・・。

俺がどれだけ冷たくあしらっても何度も何度も。




 だが・・・・

俺は冷たくあしらっているフリをしているだけ。

自分の気持ちを隠すために。

気付かれてはいけない奴に対する思い。



なぜこうも奴が頭から離れないのか考えていた。

いつもいつもその答えが見つからずモヤモヤとしていた。

イライラもした。

なぜこうも奴に振り回されなければならないのか・・・・と。

だが、ふと気付いてしまった。

奴が別の奴に向けた笑った顔を見たときに。

ムカムカとした気持ち、・・・・嫉妬と

それと同時に早くなる鼓動。

その瞬間に・・・・・この気持ちの意味を知った。

あの笑顔さえ見なければ気付かなかったかもしれないのに。




本当はあんな形でも話しかけてきてくれて嬉しい。

無視をされるより。

まだ俺の存在を見てくれているということだから。




 実をいうと・・・・・

冷たくあしらう以外にどう反応していいのかがわからないんだ。

今更仲良く喋ろうなどということも出来はしない。

だから・・・・・

あぁやって喧嘩まがいのことをしているほうが幾分か気が楽で

やりやすいんだ。




この感情の意味がなにかをわかってしまったから。

だから余計にやつとは仲良くなどなれはしない。

そんなことを望んでもいない。

だから、今はまだ・・・・・

もう少しだけでもいい。

俺に突っかかってくるのをやめないでほしい。

俺から話しかけるなど

出来るはずがないのだから。

俺はただそれを望んで待つだけ。

この日常が・・・・・

変わらないことを祈るだけ・・・・・。

欲を出せば・・・・・

もう少し近づけたらいいと・・・・

願うだけ・・・・・。



                                                                      end