heartbeat




 最近・・・・・何かが変だ。

何か・・・・・というより特定の人物相手にだが・・・・。

今までこんなことなかったはずなのに。

その相手というのは・・・・・グリムジョーだったりするのだが。


『ウルキオラ・・・・・』

『な・・・ん・・・・っ・・・』


 ふいに後ろから呼ばれ、振り返った瞬間に腰を捕らえられ、引き寄せられてキス。

それを拒むこともなく当たり前のように受け入れる俺。

グリムジョーとそういうことをするようになったのは少し前のこと。

最初のうちはなれない行為に違和感があり、すぐに押し返していた気がする。

それなのに・・・・あまりにしつこくグリムジョーが繰り返すから。

不思議と自然に受け入れられるようになった。

いつしか、自分からこの行為を望むほどに。

グリムジョーはそれが当たり前なのだという。

それでも俺からしてみればこの感情は違和感のあるものでしかない。

その違和感が不思議と心地いいのも・・・。



 変なのはこの違和感じゃない。

なぜか・・・・・グリムジョーに反応するこの心臓のことだ。


 普段意識もしないもの。

なのに、グリムジョーが近くにいるとその存在が確かにあるのだと解らされるほどに高鳴る。

耳障りなほどに。

グリムジョーにも聞こえてしまうのではないだろうかというほどに。

 トクン トクン トクン

 少しでも視界に入ってしまうと騒ぎ出す。

傍にいると益々速さを増して・・・・・。

触れようものなら破裂しそうなほど。

自分で自分のものがコントロールできない・・・・・・。

嫌だ・・・・・嫌だ・・・・・。






『・・・・・・ぃ・・・・・・・・・・・・!』

『・・・・・』

『・・・・ぉい・・・・・ウル!!』

『っ・・・・!!・・・・・なんだ?』

『なんだじゃねぇだろ・・・・・どうした?ボーっとして』



 さっきまで俺が座る横で寝転がっていたはずのグリムジョーがいつの間にか俺の目の前に立ち、顔を覗きこんでいた。

何度呼んでも反応しない俺を心配したらしい。

俺からすれば・・・・・・

このグリムジョーのドアップが心臓に悪い。




 そもそも、部屋に来いと誘われたときから危うかった。

平然を装いながら、袴の中に入れた手は話が終わってグリムジョーの姿が見えなくなるまで・・・・いや、見えなくなってもしばらくは握り締めたまま。

緊張のせいか少し汗ばんでもいた。

なぜ今更グリムジョーに緊張しなくてはいけないのか、自分でもさっぱりわからないが・・・・・。



 言われたとおり部屋に来てみると、当たり前のように距離は近い。

触れるか触れないかの位置で2人きりでいるこの空間が重い。

なにか喋って欲しい・・・・・じゃないと心臓の音が聞こえてしまう・・・。

だからと言って自分からはなにをしゃべっていいのかわからない。



 そんなことをグルグルと考えていたときにグリムジョーに呼ばれて、ハッと我に返った。

と、そこにドアップのグリムジョーでさらに心臓がピークを越えて高鳴った。


『ウル・・・・・?』

『な・・・・・んでも、ない』

『なんでもねぇことねぇだろ。なんか・・・・・ん?ちょっと顔赤くねぇか?』


 さらにズイッと顔を寄せてくるグリムジョー。

条件反射で顔を引くとグリムジョーは“なんで引くんだ”と少し意地になって俺の頭を固定して至近距離でジッと見つめてくる。

そんなことをされては堪らない。

顔が赤いのだってグリムジョーのせいなのだからなにも心配はいらないのに・・・・。


『ほん・・・・とに・・・・・な・・・・でも・・・・・ない・・・・』

『ほんとかよ?・・・・・あんま1人で抱え込んでんじゃねぇぞ・・・・』


 そう言った瞬間、グリムジョーはポスッ・・・と俺の胸に倒れこんできた。

その上きゅぅっと抱きしめられる。

抱きしめられるというより・・・・抱きつかれているに近いが、どっちにせよ俺には大差ない。

そんなに耳を胸に付けられては心臓の音を隠すことなんか誰にも出来はしない。

俺は固まるしかなかった。

もともと爆発寸前だった胸。

それに加えて強烈なほどの密着。

離れろと突き飛ばすことも、その心臓の音をごまかすことの出来る術(すべ)も浮かんでこない。

恥ずかしい・・・・・・

どうしよう・・・・・・

どうしよう・・・・・







『なぁにドキドキしてんだよ』





 リアルに聞こえてきたグリムジョーの声。

これを指摘された恥ずかしさになにも返すことが出来ない。

ただただ響く音。



『なんか安心する・・・・・』

『・・・・・・?』


 その言葉に俺はピクッと反応する。

なぜグリムジョーが安心するんだ?

こんなにもうるさく高鳴っているのに・・・・・・・・なぜ?

聞きたくて・・・・でも口を開くことが出来ない。

するとグリムジョーはそんな俺の疑問を察したかのように口を開いた。



『お前さ、全然顔に出さねぇから緊張しねぇのかと思って。ずっと俺だけ焦ってる気して嫌だったんだよ』

『・・・・・・グリムジョーも・・・・・こんな風になるのか?』



 不思議と声が出せた。

俺の問にグリムジョーがバッと俺の胸から顔を上げて、ニッと笑う。

そして今度は俺がグリムジョーの胸に倒れる番だった。

強い力で腕を引かれ、気を抜いていた俺はそのまま逆らうことなくグリムジョーのほうに体が倒れる。

グリムジョーは俺の手を引きながら自分も後ろに倒れていくものだから、俺は寝転ぶグリムジョーの上で寝転ぶことになってしまった。



『なぁ聞いてみろよ。お前と同じようにドキドキしてるから』


 そう言われ、ペタッとグリムジョーの胸に耳を寄せた。

自分の心臓の音がうるさい。

でも・・・・・その奥でグリムジョーの鼓動が聞こえる。

俺と同じようにトクン、トクンと高鳴って・・・・・。



『今までもこうだったのか?』

『あぁ。ウルとすれ違うだけでこんななってたぜ』



 少し照れているのか、頭を掻いているグリムジョー。

どうして今まで気付かなかったのだろうか?

いや、俺は知っていたんだ。

てっきり自分のだとばかり思っていただけで。

この音はずっと近くにあったんだな・・・・・。




 俺だけじゃない。

そう思うと、さっきまで苦しかったものがスッと落ちたような不思議な感覚。

グリムジョーが、俺の心臓の音で“安心する”と言った意味が今ならわかる気がする。

そして・・・こんなにもこの音が愛おしい。


『なぜ・・・・・グリムジョーはこんなにもドキドキしているんだ?』

『ぁあ?お前も同じだろうが』

『それは・・・・・』


 そうなのだけれど・・・・・。

なぜドキドキするのかわからないからグリムジョーはどうしてドキドキするのか聞きたかったのだが・・・・・。

どう聞けば答えてくれるのだろうか・・・・と悩んでいると、グリムジョーは俺の髪をサラサラと撫でてきて・・・。



『好きだからに決まってんだろーが・・・・』


 どこかぶっきらぼうに、投げやりに聞こえるのは照れ隠しからだろうか?

それにしても・・・・・好きだから?

グリムジョーの言葉は続いた。


『なに話そうかとか、ウルは今なに思ってるだろう・・・・とか・・・・』

『・・・・???』

『あぁ〜〜〜〜・・・・・こんなん説明できねぇよ。やっぱ好きだからだ』

『そうなのか・・・・・』


 こんなにもドキドキするのは好きだからか・・・・。

変になったわけではない・・・・・それがわかってホッとして・・・・・。

ドキドキしても恥ずかしくないんだと、そう思うといくらドキドキしていても気にならなくなった。


『ウルは・・・・・?』

『なんだ?』

『ウルはなんでドキドキしてんだ?』

『・・・・・俺は・・・・・・・』


 グリムジョーと目が合うから。

グリムジョーと話をするから。

グリムジョーと触れ合うから。

グリムジョーとキスするから。

そんなのは全部全部・・・・・




『グリムジョーが好きだから・・・・・・』

『上等・・・・・』


 重なる胸からはどちらのものかもわからない高鳴り。

唇からもそのドキドキが伝わってきて・・・・・それと同時に熱。


ドキドキの理由なんて初めから一つしかなかったのだと・・・・・・。



                                                                 end






ここまで読んで下さってありがとうございます!!お疲れ様です!!
これは泡沫様へのお礼なので、泡沫様のみお持ち帰り可ですので!!!!
こんなんでよろしければお持ち帰りください////
本当にこんなのですみません;;
もっと良いものを書けるように頑張りますので;;
えっと・・・・なんだこれは??って感じですけど、ウルはドキドキに耐えられなかったんですね。
こんなになるのは自分だけだと思ってたので恥ずかしい、ばれたくない・・・・とか思っちゃって。
でもそれはグリも一緒だった。ってそんな話ですかね??(聞くなよ)
お互いがお互いを余裕っぽそうだと見ているからこそ焦るみたいな感じになっております。
私の中の2人のイメージなんですよね。余裕って感じを装ってるのが。
でも実は焦りまくりなんだよぉ・・・・って言うのが書きたかった。という感じです。
ウルキオラは特に表情に出なさそうだから内心すっごい焦ってたらいいなぁって。
グリムジョーはもしかしたらそんな焦りないかもしれないけど・・・・今回は2人を同等に扱いたかったので焦らせてみました。
わけのわからない話ですが・・・・・
本当にすみませんでした;;
ありがとうございました!!