Believe




 さっきからグリムジョーが喋ってくれない。
それ以前に、こっちを向いてもくれない。
いつもなら必要以上にベタベタくっついてくるのに今日はそれすらもない。
1時間程前俺がグリムジョーの部屋に来てからずっとだ。
中に入れてはくれたが、どこか素っ気無くおかしいと思っていた。
一度も目を合わせてくれない・・・・・・。
それに・・・・・・・なにか怒っているような・・・。
『・・・・・・グリムジョー・・・?どうか・・・・したのか?』
 俺は恐る恐る問いかける。
グリムジョーはピクリと少しだけ反応して・・・・・。
『どうかした・・・・ってなぁ。よく言うぜ』
『・・・・・っ??』
 ゾクッと背筋になにかが走る。
初めて見る、グリムジョーの冷たい顔。
いつもと同じように口の端を吊り上げて笑っているのに・・・・・目がとても冷ややかで・・・・・。
グリムジョーが俺にこんな表情を向けたことなど一度もない・・・・・・・・・・・怖い・・・・・・・・。
『なぁウルキオラ、テメー全然自覚ねぇみてぇだな』
『・・・・・な・・・・・にが・・・・・だ・・・・?』
 ゆっくりと近づいてくるグリムジョー。
それは確かにグリムジョーのはずなのに・・・・・・別人みたいで・・・・。
俺は身動き1つ取れず、ただただ近寄ってくるグリムジョーを見ることしか出来なかった。
ベッドに腰掛けて座っていた俺の目の前にグリムジョーが立つ。
顔を上げられない。気配で手が伸びてくるのがわかったが、それにすら反応できない。
その手は俺の頬に当てられ、グリムジョーは信じられないくらいに優しくその頬を撫でた。
親指が唇をなぞって・・・・・首のところまで下りて来る。
ふいに頭を引き寄せられたと思った瞬間、耳元で・・・・・。
『テメーは俺のもんだろ・・・・・』
『グリ・・・・・なっ・・・・!!』
 気を抜いた瞬間に乱暴に口付けられ、そのまま後ろに押し倒された。
抵抗する両手を一まとめにされ、グリムジョーはどこからか取り出した紐でその両手を縛って固定する。
それを解こうといくら足掻いてもどんどん締まっていくばかりで・・・・・。
『い・・・っ・・・・・グリ・・・ッ・・・はずっ・・・・・ンッ・・・・』
 わめく俺の口を塞ぐように口付ける。
初めから深く、むさぼるようなキスに驚きを隠せない。
こんなキスは嫌だ・・・・・いつもの優しいキスじゃないと・・・・。
そう思うのにグリムジョーはただただ深く口内を犯す。
息継ぎもままならないほどに・・・・。
『ん・・・・・っくるしッ・・・・・ふぁっ・・・・』
 そのキスに気を取られているうちにグリムジョーは俺の服に手をかける。
こんな状態でしたくない・・・・・
その一心で、手が使えない分、体をひねってみるが、グリムジョーにのしかかられているため、大した抵抗にならない。
それに、今のグリムジョーにはどんなに抵抗したところで無駄だった。
『ゃ・・・・やめっ・・・・グリムジョーっ!!』
俺の叫びを無視して、グリムジョーは俺の服を破いた。
ビリっと鈍い音がして頑丈な布が左右に裂ける。
簡単にあらわになった肌。
それと同時に下も全て剥ぎ取られた。
グリムジョーがニヤリと笑った。
とても嫌な笑みに俺は息を呑む。
 そもそも、なぜグリムジョーは怒っているのか。
それがわからないからどう出ればいいのかわからない。
自分は怒らせるようなことをしただろうかとさっきから考えてはいるが思い当たるふしがない。
『グリ・・・・・な・・・・んで?』
『ぁあ?』
『なに・・・・・怒って・・・・』
『うるせぇよ。テメーに自覚がねぇからだろうが』
 自覚・・・・ってなんだ?
その問を口に出す前にグリムジョーが行動に移った。
あらわになった胸にきつく吸い付き、カリッと歯を立てる。
片方も指できつく摘まれ、俺はビクッと体を弓なりにしならせた。
手が使えないことでグリムジョーをとめられない。
されるがままに、いくら嫌がってもその声は届かない。
『ぃ・・・・った・・・・・・グリッ・・・・やぁッ・・・・』
『なんだよ・・・・痛いほうが感じてんじゃねぇか?』
 グリムジョーの視線が下へとうつる。
こんな状態でするのは嫌なはずなのに、反する体はしっかりと反応していて・・・・。
グリムジョーに指摘され恥ずかしさにカッと熱くなる。
そんな俺を見て、グリムジョーはニヤリと笑ってからスッと下へ移動した。
せめてもの抵抗に足をバタつかせたが、その足も簡単に捕らえられて・・・。
グリムジョーはその足を左右に大きく開くと、自分の体を間にねじ込んで閉じられないようにした。
そして、その足の間にある俺自身に唇をゆっくりと寄せていく。
俺に見せ付けるように・・・・・。
『ぁ・・・・ゃ・・・・・やぁ・・・っ・・・・ン・・・・っ』
 熱い口内に含まれると、それだけでゾクッと体が反応して。
グリムジョーはまたニヤリと笑った。
舌を這わされ、ねちっこく舐め上げられる。
裏側をツーっと根元から舐め上げられると足に力が入って・・・・・何かにしがみ付きたいのに一まとまりにされて縛られている腕が忌まわしい。
『や・・・・・グリ・・・っ・・・・・も・・・・ぃやぁっ・・・・』
 上手く力が入らない体で軽く上体を起こし、下にいるグリムジョーに訴える。
グリムジョーが俺のものにしゃぶりついている光景をリアルに見て顔を背けたくなった。
その刹那、グリムジョーが俺自身の先端に歯を立て、強くそこに吸い付いた。
『ひ・・・・っ・・・・・くぁっ・・・・ゃ・・・・』
 持ち上げていた体に力を入れられなくなり、ビクビクッと仰け反る。
『ハ・・・・すげぇ反応だなぁ・・・・・ウルキオラ』
 ビクッとする。
いつものように甘くは呼んでくれない。
冷たい声に・・・・・・泣きたくなった。
その間も容赦なく動かされる手と舌。
『だ・・・・・・めっ・・・・も・・・・・・っ・・・でっ・・・・』
 ビクビクと痙攣が止まらない。
熱いものが外に出たがって体内を駆け回る。
もう限界だった。
そんなに刺激されると・・・・・・
『ぁ・・・・・あぁっ・・・・・イ・・・・・・・・・くっ・・・・・・・・・・ぇ・・・・ぁ』
 待ち望んでいた感覚が来ない。
それどころか、出口を失いおかしくなりそうな・・・・・。
バッと頭を上げてグリムジョーを見ると・・・・冷ややかな目が笑う。
俺のほうを見ているのに・・・・・・目が合わない。
グリムジョーは信じられないことに、俺がイく瞬間、根元を強く握ってそれをせき止めてしまった。
寸前まで来ていたそれが逆流してくる感覚に身悶える。
『はァ・・・・ッ・・・・な・・・・・で・・・?』
『だれがイっていいつったよ?まだイかせねぇ』
『も・・・・・・っ・・・・ふっ・・・何・・・・怒って・・・・・』
『・・・・・・本気でわかんねぇのかよ?・・・・・・昨日、藍染に触らせただろ』
『ぁ・・・・いぜん・・・・・様・・・・?』
『任務終わって帰ってきたお前の体中。テメーは抵抗もせずに簡単に触らせてたよなぁ?』
『あ・・・・・れはっ・・・・・・仕方なぃ・・・・だろぅ』
『仕方ない・・・・ねぇ・・・・・・結局テメーも触って欲しいだけだろ』
『ちがっ・・・・』
『もううるせぇよ。黙ってろ』
『ぃ・・・っや・・・・・・んぁッ・・・・』
 出せず張り詰めたままのものにまた手が伸ばされた。
イくのには一歩足りない刺激がもどかしく、自然と腰が動く。
 ただ・・・・・悲しかった。
藍染様には好きで触られていたんじゃない。
やましい気持ちもないし、ましてや誰にでも触って欲しいなんて思ったことなどない。
グリムジョーにしか・・・・嫌なのに・・・・・。
『ひぁっ・・・・んンぅ・・・・』
 俺だって・・・・・グリムジョー以外に触られるのは気持ち悪い。
でも・・・・・藍染様だ。
抵抗など・・・・・出来なかった。
どれだけしたかったか・・・・・何度その手を弾こうかと思ったか。
なのに、動けなかった。
指一本動かすことが出来なかった。あの人の前では。
やっぱり・・・・・俺が悪いのか・・・・・・。
『ん・・・・・ぁ・・・・っ・・・・』
 俺自身はみっともないほど濡れそぼって・・・・・イきそうになるとグリムジョーの手でせき止められる。
苦しくて苦しくて・・・・・。
どれほどしつこくそれを繰り返されたか解らない。
俺の荒い息と、グリムジョーが手を動かすたびに聞こえる濡れた音だけが部屋に響き渡って。
ビクビクと体が痙攣するたびに縛られた腕が痛い。
腰を動かすのも億劫なのに愛撫されるたびに腰が動く。
グリムジョーは相変わらず冷たく俺を見ていて・・・・・。
『ン・・・・・ァ・・・・はっ・・・・ゃ・・・・』
 散々前を弄っていた手が急にそこから離された。
刺激がなくなって楽になったような・・・・辛いような・・・・・。
グリムジョーの次の行動に少し構えると、グリムジョーは散々俺自身を弄っていた濡れた指を後ろの蕾に突きつけるところで・・・・・。
ビクッと体を強張らせるが、前から垂れた蜜がそこもよく濡らしている様で簡単にグリムジョーの指を受け入れた。
『ぅあっ・・・』
 ツプっと先が入った瞬間、またもイきそうになったがグリムジョーはタイミングよくまた根元を縛った。
苦しさに息を詰めると、グリムジョーが低く喉で笑う。
『やらしいヤツ・・・・・。こんな体で誘惑してんのかよ?』
『ちが・・・・ぅっ・・・・・あっく・・・・ふぅっ・・・』
 慣らすのもそこそこにいきなりグリムジョー自身を突き立てられ、圧迫感に一瞬息が出来なくなった。
慣らされてはいないがそれほど良く濡れているらしく痛みはない。それがせめてもの救いだった。
グリムジョーは滑るのを良いことにグイグイと腰を進めてくる。
俺の呼吸をまったく無視した無理矢理な挿入。
『はっ・・・・あっ、ぁ・・・・っ・・・・』
 俺が勝手にイかないようにグリムジョーは俺自身の根元を押さえたまま。
全部俺の中に埋め込んだグリムジョーは息をつく暇もなく、腰を動かし始めた。
ガンガンと打ち付けられる腰に声が上ずる。
そうやって繋がっているはずなのに、グリムジョーの心はココにない。
いつものような・・・・・甘い空気がない。
俺を気遣う言葉も、好きだと言ってくれる声も、愛しそうに見つめてくる瞳も・・・・・優しいキスも。
『んっ・・・・んぁっ・・・・・グリ・・・・ッ・・・・ぃあッ・・・・』
 腰が激しく使われて、押さえられている根元が痛い。
出せないのが辛い。
もう限界なんかとっくに超えていて・・・・・もう・・・・無理・・・・。
『グ・・・リ・・・・ッ・・・・・も・・・・・ゆ・・・・して・・・・っ・・・・許・・・・し・・・て・・・・っ・・・・』
 痛いぐらいに張り詰めて、もう紅く充血までしているそこは少しの刺激でもイけそうなのにそれを無理矢理とめられる。
もうこれ以上されたら壊れてしまいそう・・・・・。
ズクズクとそれが疼いて・・・・・・生理的に出る涙が視界を揺らす。
『も・・・ぅ・・・・・無理ぃ・・・・・っ・・・・・お・・・・ねがっ・・・・・許・・・・てっ・・・・』
『・・・・・ウ・・・ル・・・・』
 名前を呼ばれたと思った瞬間、目尻に柔らかく暖かな唇が落とされた。
それに驚き目を見開いていると、グリムジョーは俺の手を縛っている紐に手をかけて・・・・・いとも簡単にその紐を解き、俺の手を解放した。
急なグリムジョーの行動についていけず、少し構えながらグリムジョーの行動を伺っていると、グリムジョーは俺の両手を手に取り、その手首に唇を落とした。
『こんなに紅くなって・・・・・ごめんなウル・・・・・・痛かっただろ』
 手首を見ると、紅く縛られていた痕が残っていて、少し擦っているようだった。
そこに懸命に舌を這わせるグリムジョーを見ると・・・・・・さっきまでの冷ややかな目はなく、いつものグリムジョー。
いや、いつもより少し弱々しい感じのグリムジョー。
申し訳なさそうに眉根を寄せて・・・・・。
『俺・・・・カッとなってて・・・・・・本当にごめん・・・・』
『グリ・・・・ムジョ・・・・・・いい・・・から・・・・・イ・・・・かせて・・・・・ほし・・・・』
 今はただ苦しい・・・・・優しいグリムジョーに戻ってくれたのは嬉しいが本当に限界なのだ。
腕を伸ばしてグリムジョーに抱きつき懇願すると、グリムジョーはハッとなって俺自身に手を伸ばした。
『ん・・・・悪ぃ・・・・・・ほら、イっていいぜ』
『ひっ・・・・ぁっ・・・・』
 軽く手で扱かれただけでビクンと体が跳ねて・・・・・・中で暴れまくっていたものがやっと出口を見つけて解放される。
グリムジョーの手の中に白濁が吐き出され、強張っていた体から一気に力が抜けた。
その体をグリムジョーが支えてくれる。
『ぁ・・・・はっ・・・・・・・・グリムジョー・・・・・好き・・・・っ・・・・俺はっ・・・・・グリムジョーだけっ・・・だからっ・・・・・グリムジョーにしか・・・・・・触られたく・・・・ないっ・・・・』
『ウル・・・・・・ウル・・・・・』
『やっと目、合わせてくれた・・・・・グリムジョー・・・・まだ・・・足りない・・・・・続き、して・・・・』
 今まで合わなかった目がやっと俺を見てくれる。
自分から唇を寄せて、我慢させられたせいか、イったばかりなのにまだ満足しない体に続きを求めた。
優しい腕、優しいキス、さっき繋がっていたのと今繋がっているのは同じはずなのにこんなにも暖かい。
グリムジョーだから、いっぱい触って欲しいと思う。
『あっ・・・・ぁ、あぁッ・・・・』
『っ・・・・・』


 荒い息を整えることもせず唇を合わせる。
ぎゅぅっとグリムジョーに抱きついて。
こんな甘いキスをずっとしたかった。
こうやってずっと抱きつきたかった。
出来なかった分を今埋めるように、俺は余裕もなく、グリムジョーにきつく抱きついたまま何度も何度もキスを繰り返した。


 やっとのことでおちついて、とりあえず身支度を整え、少しちゃんと話そうか・・・・と2人で並んで座った。
グリムジョーにこんな風に無理矢理抱かれたことが嫌だったわけじゃない。
ただ、他のやつに触られるのが好きとかそんなふうに言われたのがショックで。
グリムジョーは謝ってくれたけど、それは自分の出た行動についてだけで、俺が藍染様に触られてたことについては納得してないはずだから。
『・・・・・・藍染様に触られてたのは・・・・・・あの方の前だとどうしても動けなくて・・・・・。あんな風に触られて気持ち悪かったが・・・・・・と言っても言い訳にしか聞こえないか・・・?』
『いや・・・・・なんつーか・・・・・アイツの前で動けなくなるのは俺もわかる。なのに・・・・・ついカッとなって自分が暴走すんの止めれなかったつーか・・・・今回のは俺が悪いと思ってる。痛い思いさせて悪かった』
 手がぎゅっと握られている。
言葉からもその手の温もりからもグリムジョーの気持ちが伝わってきて・・・・・。
『・・・・・俺が触れられたいと思うのはグリムジョーだけだ。・・・・信じて欲しい』
『あぁ、ちゃんと信じる』
 コツンとグリムジョーの肩に頭を乗せるとその上からグリムジョーも頭を乗せてきて・・・。
繋いでいるほうの手を不意に引っ張られ、グイッとグリムジョーの方に倒れこむ。
ちゅっとキスをされて、グリムジョーは俺をきつく抱きしめた。
そして、耳元でボソボソと・・・・・・危うく聞き逃してしまいそうになるほどの声で・・・・
『ごめんな・・・・・大好きだ・・・・・』
と呟いた。
俺はそれに返事はしなかったが、代わりにグリムジョーの頬に小さなキスを送ってやった。






                                                                         end