現世デート〜女装で映画&ショッピング編〜
『ウールキオラァ〜、ちょっとボクの部屋に来てくれない?』
『ルピか、なにかあるのか?』
『うん!ちょっとねぇ〜』
そう言って連れて来られ、ルピの部屋へ入ると・・・・・・。
床一面に広げられた着物。
こちらのものではなく、よく現世で見る形の服。
それも、見るからに女物で・・・・。
『昨日ねぇ〜藍染様に許可もらって現世に行って来たんだ〜。可愛いでしょ?服は現世の方が可愛いんだよねぇ〜』
『これを見せたかっただけか?ならもういいだろう。俺は忙しい』
きびすを返し部屋を出ようとするとすかさず腕を捕まれる。
グンッと引っ張られてそのままの反動でルピのほうを見ると、なぜかよからぬ顔で笑っていて・・・・・。
『あぁ〜もうっ!待ってよウルキオラ。あのね、この中から〜何着かウルキオラにプレゼントしようと思って!』
『なにを考えている・・・・・俺は男だ』
『でもぉ、絶対似合うと思うんだよねぇ〜。6番さんも喜んでくれると思うんだけどなぁ〜』
『莫迦が。グリムジョーがそんなものに興味があるとは思えない』
『え〜?そうかなぁ?まぁ実はココに呼んでるんだけどね。もうちょっとで来ると思うよ〜。本人に聞いてみると早いかも・・・・・』
『くだらない・・・・・俺は戻・・・・・』
『おい、何だよルピ・・・・・・ってウルキオラ??・・・・っなんだァ?!この部屋?!』
ルピの手を振り払い部屋から出ようとしたところにタイミングよくグリムジョーがドアを開けて入ってくる。
本当になんというタイミングで・・・・・・。
またややこしくなる・・・・・とグリムジョーを睨むと、何も解っていないグリムジョーはなぜ自分が睨まれるのかも当然解らないわけで・・・・一歩後ずさった。
『やっほー6番さん。ちょぉっと聞きたいんだけど〜・・・・・・もしウルキオラがこんなの着てたらどうする?!』
ルピはバッとグリムジョーの目の前にミニスカートを広げた。
レースなどの飾りがついていて明らかにヒラヒラとしそうな・・・・・。
目の前に広げられたそれをグリムジョーはじっと見つめ、続いてウルキオラに視線を移した。
目を細めてジッと見て・・・・・・どうやら頭の中でウルキオラがそのスカートを履いたところを想像しているらしい。
『っ何を見ているグリムジョーっ!!』
『ん?ぉ・・・・・いや・・・・・・・なかなかイけるな・・・・・』
『なっ・・・・・』
『でしょ〜?ほら!ね?ウルキオラ。一度着てみなよ!!ボクが見立ててあげる〜』
『ルピ、いい加減に・・・・・』
俺の静止は聞かず、ルピは広げられた服の間を渡り歩きあれこれと服の上下を合わせて回った。
その隙に帰ろうとしたが・・・・・・
『ウール、待てよ。お前がどんな風になんのか見てェ』
『俺にそんな趣味はない』
『いいじゃねぇかちょっとぐらいよぉ。絶対可愛いぜ?』
『可愛いなど侮辱にしかならんな』
『いいから・・・・・・・遊びだと思って・・・・』
逃げられないように腕を捕まれ、腰を引き寄せられる。
耳元で低く囁かれるとなぜか抵抗出来なくなって・・・・・。
遊んでいる暇などない・・・・・と文句を言いたかったのに結局言えず。
なにもかも面倒くさくなった俺は、もう勝手にしろ・・・と大人しくルピが持ってくるのを待つことにした。
『6番さ〜ん、スカートとズボンどっちがいい?』
『そこはスカートだろ』
『オッケー。短い方がいいよねぇ?』
『おぉ』
『グリムジョー貴様ッ!!なぜズボンだと言わない!?それに短いとはなんだ?!?!』
『ぁあ?ウルぐらい白くて細ぇ足、見せなきゃもったいねぇだろ』
『完璧に女装になってしまうだろう!!』
『それでいいんだよ』
信じられない・・・・・とグリムジョーに殴りかかろうとしたところに、後ろでバサッと大量の服がおろされた。
続いてルピに飛びかかられ、俺はルピに引きずられるようにして個室へと連れて行かれた。
『ん〜!!やっぱ可愛い〜ウルキオラ!!』
『・・・・・・』
半ば無理矢理、着方も解らないような服を渡され、戸惑っているとルピがババッと俺にその服を器用に着せていった。
グリムジョーがリクエストしたミニスカートで足がスースーする。
上はルピが見立てたシンプルな半袖に重ね着でキャミソール。
胸元でわりと大き目なリボンが作れるようになっている。
仕上げにルピはウルキオラの前髪にピンを止め、普段も軽い外はねの髪にワックスをつけ、ふわふわと遊ばせた。
『でっきた!!ん〜・・・・・軽く化粧もする??』
『なっ・・・・そこまで・・・・』
『グロス塗るぐらいだってば!薄いピンクの。あ・・・・そんなに口引き結んじゃ塗れないよ。軽く開けてて・・・・・』
言われたとおりにすると、ルピは慎重に俺の唇に刷毛を当てる。
ベタベタとした感触が気持ち悪くはあったが我慢して・・・・・。
『完璧!!ほら!6番さん待ちくたびれてるよ?いこっ』
『グリムジョーに見せるのか?!もういい・・・・脱ぐ・・・・』
『あぁ〜ダメだよぉ!綺麗なんだからちゃんと見せないと!!』
連れてこられたときと同じようにズルズルと引きずられて・・・・・・
『おっまたせ6番さん!見て!!すっごい可愛いんだよ?ほら、ウルキオラ!!恥ずかしがってないで出ておいでよ!!』
『・・・・・・』
ドアに隠れていたが、ルピにグイグイと引っ張られて渋々グリムジョーの前に立つ。
まともにグリムジョーの顔が見れない。
反応がないが・・・・・呆れているのだろうか??
だからこんなことしたくはなかったのに・・・・・。
後ずさろうとした瞬間、グイッと腕を引っ張られる。
驚きに顔をあげると、今度はルピではなく、グリムジョーで。
『っ・・・・お・・・前・・・・・ほ・・・本当に、ウル・・・・キオラか??・・・・・・すっげー可愛い・・・・・・・』
『でしょ〜?ボクの見立ては間違ってなかったね。ウルキオラ本当に綺麗!!あっ!!ねぇ、もったいないからこのままデートしておいでよ!!ウルキオラ、十分女の子に見えるしさぁ〜!2人で堂々と歩いてても怪しまれないよ〜?絶対』
『嫌に決まって・・・・』
『それいいなぁ!行くかウル!!』
『何を考えてるんだお前は!!』
『それじゃぁウルキオラ、コレ履いていくといいよ!その服に合うと思うんだ〜。かかとそんなに高くないから歩けると思うし』
パッと渡されたのはかかとの高いサンダル。
俺がそれをルピに返そうとすると、横からグリムジョーがそのサンダルを取っていって・・・・・。
『んじゃぁ俺達は言ってくるからよ!サンキューなルピ』
『こんなのいくらでもやってあげるよぉ。ウルキオラ可愛いから着せ替えみたいで楽しいしねぇ。楽しんできなよ。いってらっしゃぁ〜い』
『おいっ!!グリムジョー!!』
グリムジョーに手を引かれ、向かった先はグリムジョーの部屋。
グリムジョーは俺をソファに座らせると自分は置くの部屋へ行ってしまった。
こんな格好で出かけるなど絶対にごめんだ。
しかしグリムジョーはその気満々だし・・・・・・どう止めるか。
むーっと考えていると、グリムジョーが奥の部屋から戻ってくる。
見ると、グリムジョーも服を着替えていて・・・・・。
黒のタンクトップにジーパンというラフな格好なのにベルトやアクセサリーなど小物の使い方が上手くて、よく似合っている。
グリムジョーが部屋から出てきた瞬間に喧嘩になっても行くのを断ろうと思っていたのにそんな格好を見せられると言うタイミングを逃してしまった。
『ウル、なに固まってんだよ?』
『その格好・・・・』
『これか?ウルがそんな格好だから俺も着替えなくちゃと思ってな。前に現世で買ったやつだ』
『そ・・・・うか・・・・・。・・・・グリムジョー、やっぱり行くのは止めにし・・・・』
『さってと!!行くかぁ!!今日はどこにすっかな〜?ルピもたまにはいいことするよなぁ〜。ウルがその格好なら堂々と何しても怪しまれねぇもんな』
俺の言葉を遮って、グリムジョーは本当に楽しそうにしゃべる。
いくら女の格好をしているからと言っても白昼堂々公衆の面前で何をする気だ・・・・とそこは頂けない話だが。
それだけ楽しそうに言われるとどうも行きたいくない≠ネどとは言えなくて・・・・。
こんな女装なんてして外を出歩くのは嫌だが・・・・・・・。
グリムジョーが楽しめるなら少しくらい我慢しようか・・・・・・・と思う。
つくづく俺もグリムジョーに惚れているらしい。
『とりあえず行くか!っと・・・これ履かなきゃいけねぇな・・・・』
『・・・・?』
何かと思えば先ほどルピにもらったサンダル。
グリムジョーはそれを手に取るといきなり俺の足元に跪(ひざまず)いて、驚く俺をよそにいそいそと俺の右足を取ってそのサンダルを履かせ始めた。
『ぉ・・・・おい!何をしている・・・・』
ただでさえプライドの高いグリムジョーが跪くなど、ありえないのに。
跪くどころか俺に靴を履かせるなんて。
『ぁあ?お姫様に靴履かせてんだよ。出て行けねぇだろ?』
『じ・・・・自分で履ける・・・・』
『いいから俺にやらせろって』
さっきからやたらと楽しそうにしている。
そんなにも出かけるのが楽しみなんだろうか?
グリムジョーは俺が止めるのも聞かずに丁寧にサンダルを履かせてくれた。
『っよし!出来た。ん〜・・・・・やっぱお前・・・・・・・可愛い』
立ち上がるのと同時に俺を抱き上げるようにしてソファから立たせたグリムジョーは俺を上から下までゆっくりと眺めてから頬にちゅぅと唇を寄せた。
その後両手で両頬を包み込むようにされ、至近距離で見つめられる。
『ほんとはココにキスしたいけど・・・・・・化粧落ちたら台無しだもんな』
『・・・・・・別にこれぐらい落ちてもいいだろう』
『もったいねぇの。せっかく綺麗なんだからよぉ。まぁ・・・・そんなにキスしたいんならルピんとこからまたこの塗るやつ借りてきてもいいけどなぁ〜』
『・・・・・行くんならさっさと行くぞ』
俺はグリムジョーの手を振りほどき、スッと横を抜け・・・・・・
ようとしたが、履きなれないかかとの高い靴に、カクンッとなり身を崩しそうになる。
そのまま地面に激突するかと思ったが寸でのところでグリムジョーが支えてくれてなんとか痛い思いをせずにすんだ。
『あ・・・・りがと・・・・』
『大丈夫か?ゆっくり歩けよ』
『・・・・・・女扱いをするな・・・』
『そんなつもりはねぇけどな。でも・・・・危ねぇからほら、腕に捕まっとけよ』
『っ〜〜〜〜・・・・・』
悔しかったがどうにもまだ1人で歩けそうにない。
俺は渋々グリムジョーの腕に捕まって、ゆっくりと歩幅を進めてくれるグリムジョーと共に部屋を出て、現世へと向かった。
『やっぱ休日だと人多いな現世は・・・・・』
『グリムジョー・・・・もう1人で歩ける。腕、離すぞ』
『何でだよ?別に歩けたって腕組んでたらいいじゃねぇか。心配しなくても男になんか見えないぞお前』
『っうるさい・・・・・とにかく、見えなくても俺は落ち着かん』
バッとグリムジョーの腕から手を離し、スタスタと歩く。
もうこの高さにも慣れたようで、さっきのようにぐらつくことはなくなった。
しかし、その手を取られグッと後ろに引っ張られる。
『何して・・・・・』
『・・・・・手繋ぐぐらいならいいだろ・・・・・・』
少し拗ねた様に、俺の手を引きながら先を歩くグリムジョー。
その表情を見て手を繋ぎたかったのだな・・・・と解り、それが少し可笑しくて笑みがこみ上げてくる。
『・・・・・・・仕方のないやつだな・・・・』
握られた手をギュッと握り返してやると、心なしかグリムジョーの頬が赤く染まった気がした。
それが新鮮で心地良くて。
恥ずかしくて顔を隠してはいるが、俺のためにいつもよりもゆっくりと歩いてくれているグリムジョーの隣に並んだ。
見上げるとグリムジョーと目が合う。
照れ臭い、幸せ、・・・・嬉しい・・・・・・。
なにがそんなに嬉しいのかとか、俺にだって説明できないしわからない。
だが確実に心の中にあるのは、嬉しい≠ニきと同じモノ。
ふいに手が握りなおされて・・・指が絡む。
こんなに堂々と人前で、手を・・・・指まで絡めて繋いで。
しかしなにやら先ほどから視線が痛い。
『グ・・・リムジョー?・・・やはり俺が男だとバレているのではないか?』
心配になってグリムジョーの耳元でこそこそとしゃべる。
そこでふと気付いたのは、いつもよりグリムジョーの顔が近いということ。
普段ならもっとグリムジョーに屈んでもらわなければ耳打ちなど出来なかったのに。
今はほんの少し腰を屈めてもらっただけで耳に届いた。
改めて身長差を感じて、少し悔しい気持ちと・・・・なぜかドキドキ。
グリムジョーが少しこちらを向いただけで息が掛かりそうな・・・・・。
でも、それでもまだ追いつけない身長。
まぁ今それは置いておいて・・・・・。
俺が心配で尋ねたというのに、グリムジョーはククッと笑った。
『アイツらの顔よーく見てみろよ。お前が余りに可愛いから注目してるって言う顔してんぜ?けど・・・・・ヤローどもに見られてんのは気にくわねぇな・・・』
今にも暴れだしそうなグリムジョーを抑えつつ、もう一度よく周りを観察してみると確かに怪しまれているという風ではなかった。
でも・・・・グリムジョーは気付いているのかいないのかわからないが明らかに女共はグリムジョーを見ている。
中には頬を上気させているものもいる。
俺だってそんなもの耐えられない。
そう思っているとグリムジョーはいきなり俺を引っ張って・・・・・。
『これ以上お前見られんの耐えらんねぇな・・・・・映画館にでも入るか・・・?』
『なんでもいい・・・・』
中に入れるならそれでいい・・・・と、映画というものがいまいちよくわからなかったがグリムジョーに任せることにした。
グリムジョーは俺が了解すると、すぐ横にあったらしい、映画館の方へと向かった。
なにやら受け付けというところでチケットを2枚買っていたが・・・・・それがないと入れないらしい。
中に入るとイスがズラリと並んでいて、前方にスクリーンのようなもの。
薄っすら明るい程度の部屋でグリムジョーは一番後ろの列の真ん中辺りに腰を下ろした。
『ふぅ・・・・ったくあいつら・・・・無断でウルキオラ見てんじゃねぇっつーの』
『今はこんな格好だが中身は男なのだからそんなに怒る必要もないだろう』
『・・・・・お前自分がどんだけ可愛いかわかってねぇな・・・・・・。やっぱミニスカートなんか履かすんじゃなかったな・・・・』
なにをそんなに心配することがあるのだろうか?
グリムジョー以外の同姓からそんな目で見られるなど気持ち悪いだけなのに。
それに俺だって女じゃない。それ以前に十刃だ。
いざと言う時は人間など簡単にはらえる。
俺よりも異性から注目を浴びていたグリムジョーの方が危ないと思うのだが・・・・。
グリムジョーは先ほどからブツブツとなにか文句を言っている。
白い足・・・≠ェどうのこうの。
でもミニスカートは絶対・・・・・≠セとか、俺にはよくわからないが。
まぁココにいる以上他のやつに見られることもないだろうし・・・・俺も安心した。
ところで・・・・・。
『グリムジョー、ココはいったいなんなんだ?』
『・・・?お前映画知らないのか?』
『知らない』
『お前はほんとに・・・・・・だからな、映画っつーのは・・・・』
グリムジョーによるとあのスクリーンに映像が映し出されそれを見るらしいが・・・・・・。
グリムジョーもなんの映画のチケットを買ったのかわからないらしい。
適当に決めたらしいが・・・・・・。
と、ふいに館内が暗くなる。
それと同時にスクリーンに映像が映し出され・・・・・・・どうやら映画とやらが始まったようだった。
初めはなんなのかよくわからなかったが、見出したらなかなか面白い。
どうやら恋愛ものらしいが・・・・・三角関係とやらになったり、喧嘩をしたりと忙しい映画だ。
少しウトウトとまぶたが落ちそうになって・・・・。
首がコクコクとなっているのがわかる。
カクンと前に完璧に首が折れた瞬間、肩に温もりを感じ、そのまま右の方向へと倒された。
コツンと頭に硬いものが当たる。
右にいるのは当然グリムジョー。
もたれたグリムジョーの肩が心地良かったがそのまま寝るわけにもいかず、思いまぶたを開けてグリムジョーを見上げる。
なのにグリムジョーに押さえつけられるようにまたもたれさせられて・・・・・。
耳元でグリムジョーが低く囁いた。
『いいから、寝てろよ。終わったら起こしてやる』
優しく髪を撫でられるとせっかく持ち上げたまぶたも抵抗できずにだんだんと落ちていって・・・・・。
落ちる瞬間、唇に柔らかな感触がした気がしたが、それが夢なのか現実なのか、確かめる気力もなくそのまま・・・・。
『ウル・・・・・・・』
『ん・・・・・・?』
優しい声音で呼ばれてゆっくりとまぶたを開く。
まだ夢見心地で・・・・・そこでもう一度名前を呼ばれてやっと覚醒する。
そういえば映画を見ていたんだったっけ?と前のスクリーンを見ると音楽と共に人の名前がズラーッと並んでいるのが見える。
見ていた人が徐々に館内から出て行くのを見て、あぁ終わったのかということはわかったが・・・・。
『すまん・・・・・そんなに寝ていたのか』
『別にいいけどな。つまんねぇ映画だったし』
『・・・・肩、だるくなかったか?』
『そんな柔じゃねぇ』
ずっとグリムジョーの肩を借りて約1時間ほど眠ってしまった。
せっかく連れて来てもらったのにこんなにも眠ってしまって悪いなぁと思った。
でも・・・・なぜかグリムジョーは上機嫌で。
『グリムジョー?俺が寝ている間になにかしたか?』
『キスはしたな』
それを聞いてハッと思い出す。
完璧に落ちてしまう前の唇に触れた感触。
やはりあれはキスだったのかと。
『1回じゃねぇけどな』
『なっ?!どういうことだ?・・・・・こんなところで・・・・』
『みんな映画に夢中だったしよ。暗かったし誰も見てねぇよ。ココ一番後ろの席だしな。あと・・・・コレもな』
グリムジョーが視線を落とした先には握られた手。
俺が寝ている間ずっと手を握っていたらしい。
呆れてグリムジョーを見ると、繋いだ手をにぎにぎとしながら口の端を吊り上げて笑った。
『俺らも出ようぜ。どこ行く?』
『・・・・・どこでもいい』
『じゃぁそのへん歩くか』
グリムジョーは先に立ち上がると、グイッと俺を引っ張り起こした。
グリムジョーの引っ張る力が強すぎて俺はその反動のままグリムジョーに倒れこむ。
その体は軽々と支えられ、髪をひと撫で。
どこか気恥ずかしくて少し紅くなる顔にグリムジョーはそっと笑って俺の手を引いて館内を後にした。
映画館を出た俺達は軽い食事を取った後、街を歩いた。
並ぶ店を一軒一軒見て周り、気に入った服やアクセサリーを買ったり。
服もアクセサリーも俺はあまり持っていないし興味がない。
だから別にいらないと言ったのに・・・・グリムジョーは俺に似合いそうな服やそれに合わしたアクセサリーなどを買ってくれた。
もちろんちゃんとした男物。
女物も買うか?と冗談めいて言われたがそこは本気で殴っておいた。
グリムジョーの両手には紙袋。
俺の服と自分用のものが入っている。
だいぶん日も暮れて、やけにカップルも目立つようになってきている。
ベンチに座る男女が、もうお互いしか見えていないとでもいうようにジッと見詰め合って。
俺達も今普通のカップルに見えているのだろうか?
辺りを見回しながら歩いているところに、ふいに足に違和感を感じた。
『ぃ・・・・っ・・・・』
思わず声を上げるとグリムジョーが瞬時に反応して足を止めた俺を振り返った。
立っていられずその場にしゃがむとグリムジョーが駆け寄ってきて。
俺は痛いと感じた足のかかとを見る。
『どうした?!』
『・・・・・足・・・・・・』
『靴擦れだな・・・・。慣れねぇもん履いたからだな。気付かなくて悪かった』
『別に・・・・・。・・・・・・・っ?!』
平気だと立ち上がろうとした瞬間、一瞬視界が可笑しくなって・・・。
思わず掴んだのはグリムジョーの胸元。
ハッとして自分を見ると、グリムジョーに横抱きにされていて・・・・・。
周りを歩いていたやつらからも軽く声が上がる。
『何してる?!おろせっ』
『コラ。女がんな大声で騒ぐんじゃねぇよ。痛ぇんなら俺が抱いてってやるから・・・・・とりあえずホテル行こうぜ?』
『ぁ・・・・ちょっ・・・・グリ・・・・っ・・・・』
グリムジョーに女だと言われ、ハッとなる。
こんなに大勢がいる中で男とバレたら大変なことになる。
不本意だったがグッと押し黙り、恥ずかしさに顔を隠すようにグリムジョーの肩口に顔を埋めた。
周囲はざわざわと騒いでいたが、グリムジョーはなにも気にせずにすぐ近くにあったホテルまで俺を抱え中へと消えた。
『足、見せてみろよ?』
『・・・・・』
ベッドに体を下ろされ、グリムジョーはまた俺の足元にしゃがみこみ、足からサンダルを脱がせてかかとを見る。
『結構擦ってるな・・・・・こんなになるまでよく我慢できたな?』
『・・・・・気付かなかったから・・・』
『へぇ・・・・楽しすぎて?』
ニヤニヤと見上げられ、俺はパッと視線を逸らした。
ククッと喉の奥で笑う低い笑い声が聞こえたと思った瞬間、グリムジョーは俺のその足の傷にペロっと舌を這わせて・・・・・。
濡れてピリリとするのが痛い。
グリムジョーの手から足を逃がそうと足掻いてみてもがっしりと押さえられているためダメだった。
抵抗する俺に構わずしつこくそこに舌を這わせるグリムジョー。
『い・・・・ったぃ・・・・・』
そう声を上げると、グリムジョーはニヤリと笑って・・・・・
ベッドに俺を押し倒した。
すぐに唇を奪われ、頬を伝い耳を甘噛み。
ゾクッとなり震える体。
グリムジョーはソロッと手を伸ばし、俺の足に手を滑らせる。
そういえばスカートだった・・・・・とそこで思い出したときにはもう遅い。
スルッとむき出しの腿をグリムジョーの手が這い上がり、スカートの中へと進入した。
スカートの中・・・・というのがどこか卑猥に思えてきて、恥ずかしい。
ツーッと指で腿の裏側をなぞられ、肌があわ立つのを感じた。
『・・・・・なんかよぉ、こんな格好してっと・・・・さらにエロいな、ウルキオラ』
『・・・・・っ・・・・・・・ぁ・・・・・』
『すげー綺麗・・・・・』
『ぅる・・・・さぃ・・・・っ・・・・・さっさと脱がせろ』
『大胆だなウルキオラ』
断じてそうじゃない。
こんな格好よりも裸の方がマシだと思ったからだ。
なのにグリムジョーは俺の思うようにはしてくれず・・・・。
『もうちょいこのままな』
『ぁっ・・・・・グリムジョーッ・・・・・やめっ・・・・ンぅ』
ちゅっと唇をふさがれ、言葉が途中で途切れる。
さらにグリムジョーは上の服も中途半端にまくり上げるだけで、そこから除いた胸の突起に唇を落とした。
ちゅぅっと吸われると声が我慢できず、俺は指を唇に当てる。
同時進行でなでられている太腿に足は小さく痙攣を繰り返している。
『ン・・・・・ぁ・・・・ふっ・・・』
舌に突起を転がされ、内腿を撫でていた手がスルスルと上に這い上がってきて、グリムジョーはパンツに手をかけた。
上からそっと撫でられると自然と反応して硬さが増す。
足がビクビクと閉じていくのがわかる。
グリムジョーはそれを許そうとせず、膝に手をかけて左右に大きく割った。
恥ずかしさに顔の前で両腕を交差させる。
それに気付いたのかグリムジョーはサラッと俺の髪を掻き揚げるように撫でて、手首にチュッと音が出るキスをした。
いつもは顔を隠すなと言って手を退けようとするくせに今日はそうすることをせず。
体中にキスをしてだんだんと下へ降りていき、太腿の内側や膝にもキスをされた。
そんなところにキスをされただけでビクッと感じる体。
そんなところが気持ちいいなんてしらなかった。
俺が小さく声を漏らしたのに気をよくしたのかグリムジョーはまた内腿にちゅぅっと吸い付いてくる。
付け根に近いところに紅を彩るキス。
『ほんと・・・・・綺麗な足してるよなぁ』
『ふっ・・・・・ぁ・・・・』
『お前のこんな格好見てたら我慢できねぇ・・・・・・お前もそろそろ限界だろ?』
『・・・・だからっ・・・・・・服・・・・・ぬが・・・・・せ・・・・・』
ウルキオラのその言葉に、俺はニヤリと笑って、まだ中途半端に顔の前で交差している腕を外し小さくキスをする。
捲し上げていた服をウルキオラの首から抜き取り、スカートも脱がせてやった。
下着の中は苦しそうで・・・・・。
こんなに可愛い姿を一日中見てて俺も余裕なんてない。
即座にウルキオラの下着を取り払い、俺も自分の服を脱いだ。
余裕がないからと言って焦り過ぎないように注意しながら俺は包み込むようにしてウルキオラを抱いた。
身支度を済ませ、ホテルから出てそのまま虚圏へと帰る。
そのまま俺の部屋へと連れて。
帰ってくるなりそうそうウルキオラは着ていた服を脱いで着替え始めた。
やっぱりあまりよくは思っていないらしい。
よく似合っているが・・・・・・そりゃぁ男としてのプライドもあるだろうし。
もったいないと思いながら、でも嫌がる気持ちもわからなくもないから着替えることをとめない。
1日付き合ってくれたことも奇跡に近いのだから。
そう自分に言い聞かせていると、着替えが終わったのか、ウルキオラは俺が座る横に腰を下ろした。
そして・・・コテンと俺の肩にもたれかかってくる。
『ウル・・・・?』
『・・・・疲れた・・・・』
慣れない服に慣れない靴で歩き回って神経も使っただろう。
素直にもたれてくるウルキオラが可愛くてその髪を撫でてやる。
『なぁ・・・・またあんな服着ろよ』
『・・・・何を考えているんだ貴様は・・・・』
一応言ってはみたものの・・・・やっぱりダメらしい。
少し残念な気もするが・・・・・・ウルキオラがいてくれるなら別になんでもいい。
俺が欲しいのはウルキオラ≠ネのだから。
うとうととまぶたを重たそうに揺らすウルキオラ。
数秒も経たないうちにそのまぶたが完璧に落ちる。
俺はその小さな体を抱いて寝室へ移動した。
ベッドにウルキオラを寝かせてその額にキスを落とす。
規則正しい寝息を立てるウルキオラの横に自分も横になって、その可愛らしい寝顔を見つめる。
『今日は・・・ありがとな、おやすみ・・・・ウル』
その体を抱きしめて、俺も夢の中へ落ちていった。
end