現世デート〜夏祭り編〜−ウルの気持ちVer−




 グリムジョーに、現世の夏祭りへ行かないか、と誘われた。

夏祭りというものを良く知らない俺だが、現世のことは気になる。それもまぁ本当のことだが、一番の理由は・・・・グリムジョーと行けるならどこへだって行きたいから。

こんなこと本人には絶対言ってやらないがな。

それでも、『行く』と答えるだけでグリムジョーは嬉しそうな顔をする。

毎回、俺がグリムジョーの誘いに了承するだけで、グリムジョーは本当に嬉しそうに笑うのだ。

この顔が見たくて俺は・・・・・。



 夏祭りには浴衣というものを着るらしい。

死神たちが着ているのに少し似ている・・・・・。が・・・・・、

市丸様が持って来たのはどう見ても女物。

現世に疎い俺でもさすがにわかる。

いくらグリムジョーが嬉しそうに持ってきたからと言って、コレばかりは了承するわけにもいかない。

俺は、いそいそと俺にそれを着せようとしているグリムジョーを蹴り飛ばし、

『死ね莫迦が』

と吐き捨てておいた。

それを持ってきたのは市丸様だが・・・・さすがに蹴り飛ばすわけにもいかず、一睨みでおさえる。

市丸様はすぐに男物の浴衣をもう一着置いて言ってくれた。

グリムジョーに帯を結んでもらい、いつもは下ろしている髪を1つにまとめて縛る。

パッとグリムジョーを見ると・・・・窮屈そうに顔をゆがめていて・・・・。

でもやはりこういう格好が似合う。

肩までたくし上げた袖。それによって見える綺麗な腕。

普段は前が全開だが今日は胸元だけが開いていて、なぜか余計にエロさが増した気がする。

いつの間にかグリムジョーに見とれていた自分。

気付くとグリムジョーがなんだかジッとこちらを見ていたが・・・・・さほど気にすることもなく、俺達は現世へと向かった。




 思っていたよりもすごい人ごみ。

さっきからすれ違う人に肩がぶつかったりしてなかなか進まない。

少しイライラとしていたところにバッとグリムジョーに手を取られて・・・・。


『グリッ??まずいだろう・・・コレは』


 いくら人ごみだとは言え男同士。

こんなにも大勢の前で堂々と男が手を繋いでいるなどと・・・・やばいのではないだろうか?

心配でその手を放そうとするが、それはゆるしてもらえず。

結局グリムジョーに言いくるめられて、放そうとした手は繋ぎなおされる。

グリムジョーにグイグイと引っ張ってもらって、先ほどよりも歩きやすくなっていることに気付く。

グリムジョーがうまく引っ張ってくれているからだとすぐに気がつき、ひどく恥ずかしくなって・・・・・。

それでも嬉しくて『ありがとう』と小さく呟いた。

この人ごみとざわつきの中、この声が届いたかはわからないが・・・・・ふと見えた横顔が笑っているところを見ると、聞こえたのかもしれないな・・・・・。

キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、グリムジョーが『腹が減った』と言った。

なにが食いたいかと聞かれて、屋台を見回すと、焼きそばの屋台。

先ほどからソースの匂いがしていて・・・・俺は迷わずそこを指差した。

グリムジョーはその方向へと俺の手を引いて歩き出す。

2つ頼んで2人で腹ごしらえをした後、俺は急激に甘いものが欲しくなった。

甘いものと言っても、俺はどの食べ物が甘いのかわからない。

それをそのままグリムジョーに伝えてみると、グリムジョーはまた俺の手をひいて、綿菓子≠ニ書かれた屋台へ。

グリムジョーは1つ頼むと、その店の男は割り箸に白い糸と巻きつけていく。

それがいつのまにか大きくなって・・・・・・雲のようで。

渡されたそれは思っていたよりも軽い。

驚きにグリムジョーに見せると、グリムジョーは食べてみろといった。

言われるまま口にすると、口の中でそれがふわりと溶けて・・・・・。

甘くて美味しい。

グリムジョーにもそれをおすそ分け。

グリムジョーが『美味いな』と笑ったとき、なぜかすごく嬉しかった。

 それからカキ氷というものを食べた。

グリムジョーの舌が青くなっているのを笑うと、俺も赤くなっていると笑われる。

カステラのお菓子を食べて・・・・

ふと見つけた屋台はフランクフルト=B

なんだか無性に食べたくなって、グリムジョーに食べたいというと、買って来てくれて。

それを受け取り頬張る。


『口の端、ついてんぞ』


 ケチャップ・・・・と聞こえたときにはもうグリムジョーの舌が俺の口の端をベロッと舐めてそのケチャップをさらっていた。

手を繋ぐまではなんとかごまかせてもこれはごまかしがきかない・・・・とグリムジョーに怒ると、はいはいと適当にあしらわれて・・・・グリムジョーが俺の持っていた食べかけのフランクフルトを横からかじった。

取ってやった・・・と自慢げな顔を見せられてムッとしてグリムジョーを見ると・・・・・グリムジョーの口の端にもケチャップ。

それが可笑しくてクッと笑って・・・・それに手を伸ばし拭う。

グリムジョーの口の端から俺の手についたケチャップをペロッと舐める。


『お前も。ついてたぞ?ケチャップ』

『・・・・・・お前もしてんじゃねーか。人前でエロい事』

『直接なめるヤツよりましだ』


 そういって残りのフランクフルトを食べてしまう。

腹ごしらえもすんだところで、屋台で遊ぼうかということになりまずは金魚すくい。

俺は1回やってみて一匹も取れずに終わる。

案外難しいのだな・・・と隣を見るとグリムジョーが真剣で・・・・。

金魚を魚≠ニ恥ずかしげもなく叫んで躍起になってる。

その姿が妙に可愛くて・・・・・。

最初はよかったんだが・・・・さすがに途中でとめた。

グリムジョーは不服そうだったが・・・・店の男におまけだと言って金魚を一匹もらえた。

俺は嬉しいのだが・・・・しょげたグリムジョーをどうしようかと思っていたところにヨーヨーつり≠フ店を見つける。

そこにグリムジョーを引っ張っていくと、グリムジョーは気を取り直して今度はヨーヨーつりに真剣になってくれる。

今度の葉簡単で、俺もグリムジョーも1つの針で何個もつる。

たくさんつれたおまけにヨーヨーをもらって、それを跳ねさせて遊びながらグリムジョーに笑いかけると、笑い返してくれて・・・・

しかしグリムジョーがパッとどこかに目移りした。

その方向を見ると、射的≠ニ書かれた店。

グリムジョーに手を引かれてそちらへ行くと、グリムジョーが妙に自信満々に『どれとって欲しい?』なんて聞いてきた。

どうせ出来るわけないと、思いながら標的の中のウサギのぬいぐるみを指差した。

見てろというグリムジョーをじっと見ていると・・・・・・驚くことにグリムジョーは1発でそのヌイグルミを取ってしまった。

グリムジョーはそのウサギをポンと俺に手渡しながら得意なのだと告げる。

自信満々に告げたとおり、グリムジョーは百発百中で俺の要望どおり、5発ある弾で5つのぬいぐるみを取ってくれた。

さすがに持てないでいると、店の男が俺に少し大きめの袋をくれた。

それに景品を入れて、店を後にする。

祭りも終わりに近づき、ひともまばらになってきた。

終わってしまったのか・・・・と思うとなぜか少し寂しい気持ちになってくる。

足取りが重い。

もう少し・・・・・・・もう少しこのまま・・・・・・。

それが通じたのか、グリムジョーが俺を川沿いに誘った。

グリムジョーも寂しいと感じてくれたのだろうか?と嬉しくなる。

川沿いに腰を下ろして・・・・。

とても静かな空間。

その空気が耐えられなかったということではないが、先に口を開いたのは俺。

どうしても言いたかったから。


『・・・・今日は楽しかった。つれてきてくれてありがとう』

『なっ・・・んだよ・・・・改まって』

『気分だ』


 俺の珍しい言葉にグリムジョーが焦っているのがわかった。

しかしそれも一瞬のことで・・・・・。

唇に柔らかいものが触れた。

至近距離にグリムジョーの顔。

真っ暗で見えなかった顔が、この距離なら見える。

俺はスッと目を閉じて、少し長い口付けを素直に受ける。

ゆっくりと離れていくのと同時に目を開ける。

グリムジョーの・・・・・・理性と戦っているときの顔。

やりたいくせに、俺のことを気にしているのだろう。

俺がこんな場所でするのを嫌がると思っているから。

確かにいいとはいえないが・・・・・。

黙ってグリムジョーを見ていると、戸惑いながら何度も軽く口付けてくる。

どうやら俺の出方を伺っているらしい。

俺の表情を見ながら、首筋に口付けてくる。

口では言えないが・・・・・・俺は拒むつもりはない。

態度で表しているつもりだが・・・・律儀にもグリムジョーは俺の耳に唇を寄せ、『いいのか?』と低く囁いた。

本当に莫迦だな・・・と思いながら、言ってやるのはどうにもシャクで。

俺は肯定の意味でグリムジョーの胸元にぎゅっとしがみつき、驚き見つめてくるグリムジョーの熱っぽい視線を逸らした。

それでやっとわかったらしく、グリムジョーの表情が戸惑いからいつもの強気なものに変わる。

何度も何度も、体中にキスされて、浴衣は簡単に脱がされていく。

グリムジョーはなぜだが余裕がないようで、でも、俺も同じくらい余裕がなくて。

それでも大事に大事に。

俺はグリムジョーに跨って、甘い刺激にぎゅうっとグリムジョーにしがみ付きながら、腰を揺らした。

外だというのにあまりに静かすぎるこの空間。

声を殺すのも忘れて俺はグリムジョーと2人、暗闇の中へと溶けていった。





 グリムジョーは俺の体を後ろから抱きしめながら甘えてくる。

頬にも唇にも何度もキスをされて。

するとグリムジョーの手が袖のところから入り込んできて。

その手をパシッと叩くと、グリムジョーは大して痛くもないくせに『いてぇ〜』とわざとらしく声をあげた。

それからはおとなしく・・・・・俺を抱きしめていたが・・・・・・。

いつ帰るのだろうか?・・・・でも帰りたくない。

どうかしばらくグリムジョーが『帰るか』と口に出しませんようにと、俺はめずらしく月に祈っていた。

この時間がいつまでも続くことを祈って・・・・・。



                                                                     end