形にならない愛のカタチ




 二月も半ばに入って・・・・現世ではそこら中で赤やピンクのハートをよく見かけるようになった。

ココ虚圏でも・・・・・ロイやルピが騒ぎ立てているが。

バレンタインデー。

俺の近くでもそわそわしているやつが一人・・・・・。




『あーーーーなんか最近ルピがうるせぇよなぁ〜・・・・・』

『そうだな』



 わざとらしい・・・・・。

欲しければ欲しいと言えばいいものを・・・。

こいつは変なところでヘタレだ。

俺はいつも知らないふりをしているけれどど。



 しかし・・・・

甘いものがあまり好きではないグリムジョーにいったい何をやればよいのか・・・・。

俺だってなにも考えていないわけではない。

グリムジョーになにかしてやりたいとは思っているが・・・・・

甘すぎるのもだめ。

だからと言って物と言ってもグリムジョーの欲しいものなどわからない。

いっそグリムジョーに聞いてみようかとも思ったが・・・・・

やはりココは驚かせてやりたいと思うちょっとした悪戯心。

ここ最近の俺は、毎日これで悩まされていたりする。

一向に答えは出ないが・・・。

日ばかりが過ぎていく。






『・・・・・キオラ・・・・・・・・・・おぃ、ウル』

『・・・・・??・・・・・・なんだ??』

『なんだじゃねぇよ。さっきから呼んでんのに上の空だしよぉ・・・・・せっかく二人っきりなんだからちゃんと俺のこと見とけよ』

『・・・・・あぁ・・・・』




 悪かった・・・とグリムジョーの肩に頭を乗せて寄り添うと、グリムジョーは俺を撫でて髪にちゅっとキスを落とした。

上の空・・・・・だが別のことを考えているわけではない。

ちゃんとグリムジョーのことを考えていての上の空だ。

本当に考えても考えても良い案が思いつかない。

目を細めて、愛おしそうに俺を見つめるグリムジョー。

悩みの原因である今は少し憎たらしくて・・・・・

のけぞってさらけ出された首に噛み付いてやった。

少しだけ強く。




『ンだよ・・・・いてぇな』

『莫迦が』

『あ゛ぁ?!』




 わけがわからないといった様子のグリムジョーを放っておいて、俺はグリムジョーから目を逸らした。






 バレンタインデーまで後1日。

一人で考えてもさっぱり案が浮かばない俺は、ディ・ロイとルピのもとへ向かった。

1日前に控えた二人は厨房にいて、それぞれが思い人に送るチョコの練習をしていた。




『ん??あっウルキオラじゃん!どしたの???ウルキオラもグリムジョーに送るチョコの練習??』

『いや・・・・そうではないが・・・・』

『なになに??なんか深刻そうな顔してるねぇ〜ウルキオラ。僕でいいなら話聞くよ〜?』




 そんなにも余裕のない顔をしていただろうか??

ルピに見抜かれてしまうほどに。

しかもそのルピの発言に異様に心配をしてくるロイ。

俺のために手を止めてくれた二人に、感謝をしつつ、俺は今の悩みを二人に話した。





『6番さん甘いもの苦手なんだ〜。でもさ、ウルキオラが作ったものなら食べるんじゃないの?』

『無理に食べてほしくはない』

『そうだよなぁ〜・・・・ビターとかにしてもだめなのか??』

『それも考えてはみたが・・・・チョコというのはあまり・・・・』

『じゃぁさぁ〜、ウルキオラ自身をあげちゃえば??6番さんなら一番喜ぶんじゃない??』

『おー!!それ良い考えじゃんルピ』

『俺自身・・・・・』

『バレンタインの1日、好きにしていいよぉ〜とか、もしくは、ウルキオラがぁ〜・・・・・主導権握っちゃうとか・・・・・』





 この2人に聞いたのが間違いだったんだろうか・・・・??

考えなかったわけではない。

考えすぎておかしくなっていたときに思いついたのが俺自身≠やることだった。

だが・・・・普通に俺をやる、と言っただけではいつもと大差ない。

やはり特別ななにかがいるだろう。それこそルピが言ったように。

だがそんなことは・・・・・・





『ウルキオラ、チョコ溶かしていってさ、体に塗ってそのままグリムジョーにあげれば??』


『・・・・・・・・・・・邪魔をしたな・・・・』

『えっ?!ウルキオラ?!?!・・・・・・怒らせちゃったかな・・・??』

『まぁいいんじゃなぁ〜い?ウルキオラならきっと上手くやるよ。僕らも準備しなくちゃ』






 まったくディ・ロイは・・・・・・・・・俺がチョコにまみれてどうする・・・・・。

でも・・・・・もう明日だ。

時間もない。

やはりビターチョコでなにか作るか・・・・・・。











 バレンタイン当日。

俺はグリムジョーの部屋にいた。

ビターチョコを持って。

そしてそのチョコは原型をとどめていない。どろどろの液体。



 昨日・・・・。

買ってきたビターチョコで何を作ろうかとお菓子の本を広げていた。

そして・・・・・・・・ことごとく失敗。

爆発、焦げる、水が入って固まらない。

何度やっても失敗ばかりで・・・・・・・これ以上やるとチョコがなくなってしまう・・・・

ということで、上手く溶かすことが出来たこの液体のビターチョコをもってきた。

ボールごと。

ラッピングもなにもないまま。

溶けたチョコを抱えて部屋へと来た俺。

グリムジョーの驚いた顔が今でも浮かぶ。

なんの言い訳もできず・・・・・ただ俺は無言。

グリムジョーも口を開かない。

呆れているのか怒っているのか。

俺は顔もあげられないまま。

すると、スッと伸びてきた腕に、俺はビクッと肩をすくめる。

その手はスルリと俺の頬に触れて・・・・・下を向いたままの俺の顔をクイッと上にあげた。

ゆっくりと目線をあげると・・・・・グリムジョーと目があって・・・・・。



『なにシケたツラしてんだ?』

『・・・・リムジョー・・・・』

『これ、俺がもらっていいんだよな?』



 ボールの中のチョコに視線を移すグリムジョーに頷くと、グリムジョーはそのボールを俺から取り上げて、キッチンへ向かった。

しばらくするとまた戻ってきて・・・・・。



『俺がもらったんだからよ、コレ好きに使ってかまわねぇよな?』

『・・・・・・??・・・・・なにをするつもりだ??』

『服汚れっから脱いじまえよ・・・・』

『ちょっ・・・・!!』



 手早く俺の服を脱がしにかかるグリムジョー。

抵抗もままならないうちに、俺はすっかり服を剥ぎ取られ、グリムジョーに押さえつけられた。

もちろんグリムジョーの自分の服を脱いでしまっている。

ベッドに縫い付けられ、上から見下ろされると、恥ずかしくて・・・・・。

パッと目を逸らすと、ニヤリと笑う気配がする。

グリムジョーはサイドテーブルに置いてあったチョコ入りのボールを取り出すと、人差し指ですっと中のチョコをすくいあげてペロリと舐めた。



『いい感じに冷めたな・・・・さっきのままじゃ固まってて使えねぇからな。ちょっとだけ温めてきた』

『なにに使う気だ・・・?』

『ん〜??・・・・・そんなに甘くなくてうめぇなこのチョコ』

『おい、グリムジョー』

『・・・・・わかってんだろ?・・・・・こぉやって・・・・・使うんだよ』

『っ・・・・・・』



 トロリ・・・・胸に生暖かい液体が垂らされる。

みるみるうちに広がって・・・・・俺の体を伝い、流れ落ちそうになるチョコをグリムジョーが掬い上げた。




『最高のバレンタインチョコだな』

『莫迦が・・・・・っ・・・・・』

『なぁ、舐めていいか?』

『・・・・・・・っ・・・・・・・早く・・・・しろっ・・・・』

『んじゃぁ・・・いただくぜぇ』

『ふっ・・・・ぁ・・・・』




 俺の肌の上を覆いつくすチョコを、グリムジョーの舌がさらっていく。

へその辺りから上へ上へ。

わき腹を舐められるとくすぐったくて。

グリムジョーはわざとなのか、丁寧に丁寧に俺の体を舐めていく。

そして胸の突起へ。

ちろちろと舐められ、ちゅぅっと吸われ、俺の息もあがっていく。

グリムジョーは垂らした全てのチョコを舐め尽くすと、俺に口付けながら下半身に手を伸ばした。

すでに熱を持ち始めていたそこは刺激を受けて芯を持ち始める。

嫌な予感がした。

グリムジョーがあいているほうの手でボールに手を伸ばし始めたから。




『ちょっ、待て!!それは嫌だ!!』

『ちゃんと綺麗にしてやるから』

『やっ・・・・ぁあッ・・・・・んっ・・・・』




 容赦なくトロトロと垂らされる。

チョコは先から根元まで伝って・・・・俺自身を飾っていく。

恥ずかしさと、そこを伝う微妙な刺激。

それが余計に興奮を煽った。




『んっ・・・・ゃ・・・・・』

『ん?ウル、うまそうだな』

『ぅるさ・・・・ぃ・・・・・あっ・・・・』




 キッとグリムジョーを睨もうと顔を上げようとした瞬間、グリムジョーが体をずらすのが見えた。

下へ、下へ・・・・・。

俺はゆっくりとそれを目で追って・・・・・・ピタっとそのチョコレートまみれのそれの上で止まった瞬間、ビクッと目を見開いた。

グリムジョーの意図が見えたから。

静止の言葉をかけようとした瞬間にはもうグリムジョーがそれを咥え込んでいて・・・・。

生暖かい口内の気持ちよさと、チョコを舐め取る舌の動きが俺を追い上げて。

文句を言おうと開いたはずの口からは甘い声が漏れる。




『ぁっ・・・・んぁっ・・・・やぁ・・・』

『ハァ・・・・・・・・あめぇ・・・・・』




 ニヤリと顔をあげたグリムジョーと目が合い、息を乱す俺の頬にサッと朱がさす。

やめろ、と小さくこぼしたが、綺麗にしてやると言っただろう・・・などと適当すぎる理由で却下され、グリムジョーはまた俺自身に唇を寄せた。

綺麗にする・・・・と言った言葉通り、グリムジョーは俺にかけた全てのチョコを舐めとった。

しかし・・・・・

中途半端なその刺激は、俺にとっては辛くて・・・・。

イクには少し刺激が足りなくて・・・・・わざとなのかちゃんとした刺激をくれない。

もどかしくて・・・・・




『はっ・・・・グリ・・・・・ッ・・・・・もっ・・・・む・・・り・・・・っ・・・・』

『なにがだよ??』



 ニヤニヤして・・・・

わかってるくせに・・・・・

でも・・・・・

俺もそんな余裕ない・・・・




『イきた・・・・ぃ・・・・・グリっ・・・・ねがっ・・・ぃ・・・・・・』



 俺のそのお願いに、グリムジョーは満足気な笑みを浮かべたかと思うとすぐに、グリムジョーはまたボールのチョコに手を伸ばした。

それを指ですくったかと思うと、俺の足を左右に開き、そのチョコのついた指を間に忍び込ませた。

その周辺をなぞるように動く指。

むずむずとする感覚。

早く欲しい。

入れるなら入れてほしい。

早く出したい・・・・・

そんなことばかりが頭の中をめぐって・・・・・俺はグリムジョーに助けを求めることしか出来ない。

すがるような目で見れば、グリムジョーは俺に優しくキスを落として、中を解しにかかった。

潤滑剤がわりのチョコは、俺の体温でさらに溶けて。




『もういいからっ・・・・・早く、欲しい・・・・っ』

『ウル・・・・・』



 グリムジョーが息を呑んだのがわかった。

それからすぐにグリムジョーが中にゆっくりと進入してきて・・・・。

グリムジョーの熱で中はさらにとろける。

深く繋がったその奥に感じるグリムジョーの鼓動。

噛み付くように奪われる口付けは少し甘くて・・・・・。

それでいて少し苦い。

部屋中に充満するチョコの匂いが俺達の思考をさらに狂わせて・・・・・。

すでに限界に近かった俺は、グリムジョーに少し動かれただけで果てた。

グリムジョーはそれでもなお激しく揺さぶり・・・・・


その刺激でまた復活する俺の熱は、今度はグリムジョーと共に・・・・・・・・。









『ウルーーー・・・・・機嫌直せよ・・・・』

『知るか。莫迦が』

『悪かったって。もうしねぇよ』

『当たり前だ。二度とするか』




 あの後、体中について固まったチョコをおとすのは思ったよりも大変で・・・・。

おまけにどこかの莫迦が中にまで入れるものだから・・・・・。

鼻についたチョコの匂いにはいい加減吐き気を催しそうなほど。

甘ったるい匂いにうんざりする。

とんだバレンタインだ・・・・・・

と思っていたりもするのだが・・・・・。




『なぁウルキオラ、悪かったって』

『煩い黙れ莫迦が』

『・・・・・・っ・・・・』




 少ししょげているグリムジョーがなんだか可愛くて。

本当はもう怒ってなどいないが、もうしばらくこのままで。



 ちゃんと最後には、チョコより甘く、甘くもてなしてやるつもりだがな・・・・・。



こいつは俺に甘いから、きっと・・・・・

最高のプレゼントだった

と言って、いつものニヤケ顔で笑うんだろうな。







                                                                   end