グリウル

『あ、テメー!!なに濡れたまま出てきてんだ?!床濡れんだろ!!』

俺の部屋に泊まりにきたウルキオラは風呂に入っていて・・・・出てきたはいいが髪は濡れたまま。
バスタオルを首に掛けているくせに拭こうとしない。
髪の先から滴り落ちる雫には目もくれずその辺りを歩き回る。
それを捕まえてとりあえずこれ以上床に被害がいかぬように首のタオルを雑にウルキオラの頭に巻き、ソファに連れてきて座らせる。

『たくよぉ・・・・拭いてやっから前向いて大人しくしてろよ』

 ウルキオラの後ろに回って巻いていたバスタオルを取り、ワシャワシャと拭いてやる。
滴り落ちていた雫を1つ1つ丁寧にふき取るように。

『・・・・こんなもんか・・・・』
『すごいな・・・・・水気が全然ない』
『まだ座っとけよ。ついでに乾かしてやるから』

バスタオルを横において、ドライヤーを取ってくる。
立ち上がろうとするウルキオラを押さえて座らせ、その髪に温風を当てる。
柔らかな髪に指を通し、その感触を楽しみながら風を当てていく。
ふとウルキオラを見ると、髪を触られて気持ちいいのか、うとうととしている。
まぶたをトロンとさせて首もふらふらしてきている。

『眠いのか?』
『眠く・・・ない・・・』

そんな眠そうな声で答えられても説得力はないが・・・・・。
濡れて重かった髪も、乾いてサラサラの髪を取り戻し、指を通りぬける。
ドライヤーのスイッチを切るとウルキオラの目がパチッと開かれ、その姿が面白くて噴き出す。
後ろから顎を持ち上げて軽くキス。
いつも視界に入る大きな目。
でもこのキスの仕方ではうつるのは首に開いた穴。

『なんだ急に』
『眠いんならベッド行けよ。風呂入ってくる』

乾いた髪を撫でて自分も風呂へ向かう。


数十分後、風呂から上がったグリムジョーが、ソファで眠るウルキオラを抱き上げベッドに運ぶことになる。





イルロイ

『イール!!お花見いこッ!』
『また訳のわからないことを言うな』
『だって行きたいし!!行こうよぉ!!』

しつこく言い寄られ、結局お花見に行くことになった。
現世に咲く花。
俺もロイも見たことがなかった。グリムジョーとウルキオラが行ったと言っていたから話を聞いていたが・・・・・まさかココまで美しいとは思わなかった。

『わっ!!キレー!!イール!!見て!!キレイ!!』
『うるさいカス。せっかくの風情が台無しだろう』

隣ではねるロイを押さえつけて静かに上を見上げる。
上からヒラヒラと降ってくる花びらを必死に捕まえようとするロイ。

『やぁっ!!とぉッ!!』
『・・・・・・うるさいと言っているだろう・・・・・。ほら、あっちの桜の下で飯にするぞ』
『え?あっ、待ってよ!!』

走って俺の後を追いかけてくる。
俺は立ち止まり、ロイが来るのを待ってやって、追いついたところでその手を取った。
そしてまた歩き出す。
初めはビックリしていたロイも、笑って俺の手を握り返した。
大きな桜の木を目指して。

『ところで・・・・その大きな荷物になにが入ってるんだ?』
『ん〜?これね、お弁当作ってきたんだ〜』
『弁当?』
『すっげーうまくできたからさ!食べてくれるだろ?』
『・・・・・食べてやらないこともない』
『またそういうこと言う・・・。絶対食べてよね?』

そうこうしているうちにその目的の桜の木の下に着く。
さっそく弁当を広げるロイ。
パカッとふたを開けて勧めてくる。
中を覗くと・・・・・確かにうまそうだ。

『食べていいよぉ〜。特にこの卵焼きがうまくできたんだぁ〜』
『じゃぁ・・・それ食わせろ』
『え?』
『ほら、あ〜んって言うの、しろ』

口をあけて持っていくとロイはフォークを卵焼きに指し俺の口に運ぶ。
口に入った卵焼きをもぐもぐと味わう。
それを不安そうに見守るロイ。

『・・・・どう?』
『甘い』
『あ・・・砂糖入ったの・・・嫌いだった?』
『俺は塩派だが・・・・これも悪くない』
『ほんと?!やった!良かった〜』

ホッとしたのか自分も作った弁当を食べる。
俺は少しその卵焼きが気に入って、そればかりを食べていた。
もちろんそれ以外もうまいが。
桜を見ながら食べるそれは格別にうまくて・・・・・。
2人きりの花見を楽しんだ。





ギンヒツ

『町外れに美味しい和菓子屋さん見つけてんけど一緒に行けへん?』

そう誘われたのは昨日。そして今日が約束の日。

『それ、本当にうまいのか?』
『信じてくれてへんのか〜?僕がおススメしたお菓子屋さんでうまなかったんある?』
『そりゃぁ・・・・ねぇけど』
『やろ?今度のとこは今まででも一番うまいとこなんや』

そううれしそうに話す市丸を見ているとこっちまで幸せになってきて・・・・・。
俺はいつもこいつのペースに巻き込まれる。
それが最近心地良かったりするのはコイツと付き合うことに慣れてしまったということだろうか?

『ここやで〜。ものすごいうまいんや』
『どれがうまいんだ?』
『そやなぁ〜。これと、これと・・・・こっちもうまいんや。あ〜・・・選ばれへん』

俺の些細な質問も真剣に悩むこいつだ愛しい。
きっとここの和菓子も全部うまいだろう。

『じゃぁ今日はコレにする。今度また連れて来い』
『それって・・・・・・あァ。また来ような』
きっとこれから先もずっと・・・・・・・。