山獄
朝の優しい光に包まれて・・・・・。
起き抜けには少し厳しい日差しに、寝返りをうとうとして、体が自由に動けないことに気付く。
そのわけに気付くまでそう時間は掛からなかった。
『や・・・・もと?』
俺の体を背中からしっかりと抱きしめて規則正しい寝息を立てている山本。
犯人が山本であることにホッと胸を撫で下ろしてから、この状況をどうしようかと考えた。
別に山本ぐらいたたき起こしてもいいんだが・・・・・。
昨日野球の試合があって、結構強い相手に山本たちは苦戦してて・・・・・。
延長戦の末、コイツがさよならホームラン打ってなんとか勝てた。
だからこいつなりに結構疲れてるんだと思う。
それがあるから・・・・・まぁ今日ぐらい山本の抱き枕になってやってもいいか・・・・って。
『ん・・・・』
ふいに山本が声を漏らしたのに驚く。
どうやら起きたわけではなさそうだが・・・・・。
と、思っていた矢先、グイッと肩をひっぱられて、さっき打ちたかった寝返りを打たされる。
向き合う形となり、寝ているくせに山本は俺の体をしっかりと抱きしめた。
鼻先が山本の胸に埋まって少し苦しい。
それと同時に・・・・・毎日外で野球をやっているせいか、少し太陽の匂い。
日に焼けた健康的な肌が頑張っているんだと物語ってる。
『毎日お疲れ・・・・・』
起こさない程度に小さく呟く。
そのはずなのに・・・・・なぜかその腕に力がこもった様に・・・・・寝顔が少し微笑んだように見えたのは気のせいだろうか?
グリウル
ウルキオラにも癖はある。
その癖に気付いたのはつい最近。
キスした後、好きだ≠ニ言ってやったとき。
ちょっと甘い言葉を囁くたびに、ウルキオラは下唇を少し噛み目を伏せる。
それが照れているんだとわかったのもつい最近。
顔にこそ出さないが何かを耐えるように唇を噛む。
『綺麗な目だな・・・ウルキオラ』
『・・・・なんだ急に・・・』
『あんま噛むなよ。切れるぞ』
『何がだ?』
やっぱり気付いていない。
他人のことは愚か自分のことにも無頓着なウルキオラ。
血が通っていないように白い唇は少し噛むことで紅くなっている。
そんなに強く噛むな、と歯と唇の間に親指を入れて止めさせる。
すると今度は目を伏せる。
『いって・・・・・噛むなよ・・・・』
ウルキオラに親指を噛まれた。
でも口で言っているほど痛くはない。
ウルキオラもそんなに強く噛む気はなかったらしい。
『これやめねぇといつかマジで口切るぞ』
『だから何がだ』
『照れると下唇噛む癖』
『噛んでいたかどうかは知らんが照れてなどいない』
『嘘つくんじゃねぇよ』
『・・・・うるさい』
『うるさいと思うんなら俺の口塞げよ』
少し挑発的な態度を取ってみる。
殴られるか・・・・無視されるか。
塞げ、とは言ったが素直に塞がれてやる気はない。
俺は少しだけ構える。
ウルキオラは少し何かを考えた後ふっ・・・と鼻で笑った。
ウルキオラの考えが読めず、俺はジッとウルキオラを見る。
瞬間、ウルキオラのドアップ。
構えていたはずなのにまったく反応出来ず。
それよりも・・・・・驚いたのはウルキオラの行動。
だからこそ余計に反応できなかったということもあるが・・・・。
ゆっくりと離れていくウルキオラが至近距離で笑う。
『どうした?なにを驚いているグリムジョ-。お前が塞げと言ったんだ』
『だ・・・・だからって・・・・お前からキスなんて・・・・』
『なにを照れているんだ』
『なっ!!うっせぇ!!照れてねぇッ』
『嘘を付かなくてもいいだろう』
『っ・・・・・ちっ・・・・』
さっき俺がやっていたことをそのまま返されていると気付き、俺はそれ以上の反論をやめる。
そんな俺を見てウルキオラは喉の奥で笑っていたが・・・・・紅くなっている唇を見てなにもかもどうでもよくなってしまった。
骸雲(骸が変態かつ勘違いヤローです)
『ベタベタしないでくれる?うっとうしいんだけど』
『冷たいですね。でもわかってますよ。冷たいのは照れ隠しだと。本当はボクに構って欲しくて仕方ないんですよね?』
『勘違いヤローってどうしてこんなにもウザイのかな・・・』
『勘違いヤローって・・・誰のことです?』
『君に決まってるでしょ。君以外に誰がいるの?』
『ええ。そりゃぁもう貴方の前にはボクしかいませんよ。貴方はボクの傍にしかいられない』
『いい加減本気でウザいんだけど・・・・・噛み殺していい?』
『そんなにボクに自分のものだという痕をつけたいのですか・・・・・仕方ありませんね。そんな痕つけなくてももうとっくにボクは君のものなのに・・・・』
『ねぇ、会話になってないのわかってる?会話にならないなら話す意味ないよね』
『わざわざ会話をしなくても気持ちは繋がってるといいたいんでしょう?わかってますとも』
『・・・・・・』
『さっそくですか?あぁ・・・・貴方がボクのことを思ってやまない気持ちが伝わってk』
『断じて違うよ』
『またそんなに照れちゃって・・・・』
『無視する方がウザイな・・・・でも殺しても死なないし・・・・・』
『殺したいぐらい愛してる、ですか?』
『ちょっと黙ってくれる』
『ふー・・・・わかってますよ。冗談です。これ以上やると本当に殺されかねないですからね』
『もう十分限界なんだけど・・・・』
『おやおや、眉間に皺がよってますよ』
『誰のせ・・・・んっ』
『ご馳走様。ボクは君のこと、愛してますから』
『・・・・・・それ以上言うなら本気で殺るよ』
『ボクだって本気ですからね。・・・・・・あぁ!それが貴方の愛の形というならボクはいくらでも受け取りましょう!!』
『土にかえれよ』