気になる人




 今日は土曜日。特に予定もなく家でゴロゴロ。いつもなら予定なくても騒がしすぎてゴロゴロなんて出来ないんだけど今日はラッキーなことにリボーンはビアンキと出かけてくるって言うしランボたちは母さんにデパートの屋上に連れてってもらってるからしばらくは帰ってこないだろうし。あそこ乗り物とかいっぱいあるからなかなか離れられなくなるんだよなぁ〜。特にランボなんか絶対。
山本は家の手伝いあるからって言ってたし獄寺くんはダイナマイトが切れたからこの休みはイタリアに帰ってるし。
『あぁ〜平和だぁ〜』
 何ヶ月ぶりだろ?こんなゆっくり過ごせたの。やっぱたまには休息もなくちゃね。ベッドに寝転がり窓の外を見る。空がきれいだ。窓から気持ちいい風も入ってくる。ふぁ〜なんか眠くなってきた・・・。
眠気に勝てずうとうとしていると・・・
『やぁ。赤ん坊いる?』
『なッ!?ひ・・・雲雀さん!?』
 なに〜!?窓から入ってきたよ!?ここ2階なんだけど!!俺もしかして今日最悪な日??どうしよ??死ぬ気弾ないし・・・獄寺くんも山本もいないし・・・ピンチだって!!誰か助けてよぉ〜!!!
『ねぇ聞いてる?赤ん坊いないの?』
『あ・・・リ・・・リボーンなら・・・今外出中で・・・』
『ふ〜ん・・・』
『ご・・・ごめんなさぁぁい!!!』
 怖いって!!殺される〜!!どうしよ??どうしよぉぉ????
『なに謝ってるの?今日は群れてないんだね。丁度良かった。今日は君に会いに来たんだ』
 なんで?!なんで俺!!?俺なんかしたっけ??最近はあんまり関わってなかった気がするんだけど・・・・・・。
『僕さ・・・スリッパとかで叩かれたの初めてなんだけど・・・』
 スリッパってあの応接室で初めて会ったときのこと?!まだ根に持ってたの??!ほんとに殺される・・・。
『あれから君のこと忘れられないんだよね・・・って君聞いてる?さっきから』
『うぅ〜〜・・・・』
『おびえてるの?・・・・・・今日はトンファー持って来てないから安心していいよ』
 どぅいうこと?とりあえずは殺されないってこと?確かになんか今日は穏やかにしゃべってる・・・?
『言ったでしょ?忘れられないって。だから今日はお話しに来た』
『話・・・ですか?』
 雲雀さんと話っていったってなに話せばいいんだろ?っていうかなんで雲雀さんは俺なんかと話がしたいんだ??俺ダメツナなのに・・・。ん?雲雀さんもう一個なんか言ってた・・・?なんだっけ・・・?忘れられない??忘れられないってどういう意味??スリッパのことだよね??レオンだけど・・・。確かにスリッパって屈辱だな・・・。俺でもショックだよ・・・。
『沢田・・・綱吉??』
『は・・・はい!!』
 なんで名前まで知ってるの?って思ったけど、雲雀さんの目線の先には国語のノートがある。あぁこれ読んだだけか。
『すごい名前だね。君はどこもかしこもほんとにおもしろい』
 あ・・・笑ってる・・・。気に入られた??俺気に入られてるの?あの最強・・・最恐雲雀さんに?でも・・・こうして見るとほんとにキレイな顔だなぁ。 こんなにじーっと見たの初めて。怖くて近寄れなかったし・・・。でも今は不思議と怖くない。それどころか優しくて穏やかな雰囲気で・・・そばにいると落ち着いて・・・でもなんかドキドキする。
『綱吉・・・って呼んでいい?』
『あ・・・はいッ!なんでも・・・』
 親にさえ呼ばれたことない呼び名。なにより俺自身が呼ばれることを嫌がった。こんな俺に綱吉なんて名前もったいなくて・・・明らかに名前負けで・・・・・・ずっとずっと嫌だったし・・・。
でも・・・この人になら・・・・・。“嫌だ”って言うのが怖いとかじゃない。今呼ばれた瞬間の心地良さから・・・拒否することが出来なかったんだ。
初めてなんだ。名前呼ばれて不快に思わなかったの・・・。ほんとは自分の名前・・・好きだ。だからずっと探してた。俺の本当の名前呼んでくれる人。俺自身を認めてくれる人。
『ふぁ〜・・・なんか眠くなってきちゃった。綱吉、膝貸して』
『え・・・?』
 言うが早いか雲雀さんは俺の膝の上に頭を乗せゴロンと寝転がってしまった。
『僕が少しの物音でも起きるの知ってるよね?起こしたら綱吉の負けだよ・・・』
『えぇ?!雲雀さん!?』
 そんなの無理だよぉ!!このままの姿勢でいるのだって結構辛いのに・・・ちょっと動いただけでも雲雀さん起きちゃうし・・・やっぱりこの人わかんないよぉ〜〜!!
 俺は身動き1つ出来ない状態でそのままの体勢を保ちながら雲雀さんを盗み見る。色白い・・・まつ毛長いな・・・。肌キレイだし・・・。ほんとにキレイな顔。なんで俺の周りってこんな美形ばっかなんだろ・・・?山本も獄寺くんも大人ランボもディーノさんも・・・。
『綱吉・・・』
『ひッ雲雀さん!?起こしましたかぁ!?』
 俺動いたっけーーッ??!無意識??ヤバイ・・・俺死ぬんだ・・・・。さよなら・・・母さん。さよならみんな・・・・。
『寝てないしね・・・』
『え・・・?そうだったんですか?』
 よかったぁ〜。死なずにすんだ・・・。
でも寝てると思ってたのに・・・。さすが雲雀さん・・・。
『綱吉って・・・・・・僕のこと好きでしょ?』
『え・・・ぇえッ!?なんですか急にッ!!』
『少しの物音でも起きるって言ったでしょ?あれだけ心臓ドキドキしてたらうるさくて眠れないよ』
 心臓!?確かにドキドキしてたけど・・・・起こしちゃったら怖いって言うのがあったから・・・・・・・だよね??ん?なんか引っ掛かるのはなんでだろ・・・・・・?
『ねぇ・・・どうなの?』
『・・・・・・・・』
『質問変えようか。僕は綱吉が好きなんだけど?綱吉はどう思ってる?』
 雲雀さんが俺のこと好きーーーーーーッ!?!?なんで俺なんか・・・って冗談??・・・・・・冗談なんか言う人じゃないよ・・・・。どうなってんの??急に言われたってわかんないよ・・・。でも断ったりしたら怖いし・・・・。
 どう答えていいかわからず、俺は雲雀さんから目を逸らす。そうすると雲雀さんは 俺の膝から起き上がって俺の前に座った。俯く俺にスッと手を伸ばしてくる。殴られるッ・・・・・と思った俺はとっさに目を瞑った。そしたら顎に手をかけられて、上を向かされる。それにビックリして目を開けると雲雀さんの不敵笑みが視界に入った。
『まぁいいよ。今は。でもいずれ綱吉は僕のモノになるんだから・・・・僕のことしか考えられないようにしてあげるよ』
『ひ・・・ばり・・・さ・・・』
『これから楽しみにしてなよ。僕に振り向かせてあげるから。じゃぁまた明後日学校でね。バイバイ綱吉』
 反応できずボーっとする俺に手を振ってきたときみたいに窓から外に出て帰っていく。しばらく考えることが出来なくて動けない。思考回路もショートしている。やっと自分を取り戻せたのはランボたちが帰ってきて1階が騒がしくなってからだった。
『雲雀さんが・・・俺のこと好き?俺を雲雀さんのモノに・・・?』
 言われたことが順番に頭の中をグルグル回る。だんだん顔が熱くなってきて、俺はベッドに突っ伏した。
雲雀さん・・・・すでに雲雀さんのことしか考えられなくなっている場合・・・どうしたらいいんですか?


ツナと雲雀がくっつくのも時間の問題・・・・・。



                                                                      end