※『気になる人』の続編になっております。そちらを先に読んでからこちらを読むことをおススメします。


何度でも




 雲雀さんに告白(?)されてから1週間。
雲雀さんは言ったとおりあれから毎日会いに来る。
でもそれだけで・・・・・・普通に日常会話しかしない。その・・・・好きとかそういうことには一切触れない。
風紀委員も忙しいみたいで会えるのも数分。ふらりと会いに来てふらりと帰っていく。
気になりはするんだけど・・・・・・俺からそういう話に持っていくことも出来ないし。
なんかここまで何事もなく過ごされたら、あのときからかわれただけだったのかな?とか思ってくるし。
ほんとに訳わかんないよあの人。


『10代目ぇ〜今日はいい天気ですねぇ〜』
『うん。そうだね。このまま寝ちゃいたいよ』
 昼休み、いつも通り屋上でご飯。
昨日まで寒かったのが嘘のように、ポカポカとした陽気。 天気予報士が言うには4月中旬並みの気温らしい。
 獄寺くんは早々食べ終わって寝転がりながらタバコふかしてるし、山本もお腹いっぱいで眠いのか牛乳パックのストローをくわえながらふわふわしてる。
そんな2人を見て軽く苦笑してから俺もごろんと寝転がった。
トロンと閉じそうな目を押し上げつつ、ボーっと空を見上げると、冬の薄い空とは違う、少し濃い目の青が広がっている。それでさらにボーっとなっていると、頭上でガタッとなにか物音がした気がして、そのまま喉を逸らして見ると、俺の目が完璧に開かれた。
飛びそうになっていた意識も完全に戻ってきている。
俺はガバッと起き上がり、その人物の方を向いた。
俺が急に起き上がったのに驚いた2人も俺と同じ方を見る。

『ひ・・・・雲雀さん・・・?』

 そこに立っていたのはまさしく今の俺の悩みの現況で・・・。
雲雀さんも暑いのか、今日はめずらしくカッターシャツ1枚。

 雲雀さんは眩しいのか、少し目を細めながらゆっくりとこちらに向かって足を進める。
山本と獄寺くんも同時にかまえた。
『テメー・・・なんの用だ』
『君に用はないんだけど・・・・・僕の前ではタバコ消してくれる?』
 さらに目を細めて獄寺くんを睨むもののトンファーを出す気はないらしく、俺達の前でピタッと止まった。
そして、獄寺くんから俺に視線を移す。獄寺くんを見ていたときよりは幾分か柔らかい目で。
『僕は綱吉に会いに来たんだけど・・・・・。ご飯食べ終わってるなら僕と一緒に来てくれない?』
『テメェ10代目になにする気だ?』
『君には関係ないことだよ』
 つっかかっていく獄寺くんを軽く流して雲雀さんは俺に目で訴えかけてくる。

 ――――――どうする?綱吉。来る?

 それを無視できなかった。
俺は前に立つ獄寺くんの横をすり抜けて雲雀さんに一歩近づいた。
『えっ・・・ちょっ・・・10代目?!』
『大丈夫だよ獄寺くん。話するだけだから。先に教室に戻っててよ』
 驚く獄寺くんをそのままに、僕は雲雀さんと一緒に屋上を出た。
山本がいつも通り後ろから止めててくれてたし・・・・・また機嫌悪くなっちゃったかな?
後で山本にお礼言っとかなきゃ。




『またあのヤロー・・・・』
『まぁまぁ。いいじゃねぇか。別にツナになにかある訳じゃねぇんだし』
『なにかあってからじゃおせぇんだよッ』
『ん〜・・・たぶん大丈夫だと思うぞ』
『なんでんなこと言えんだよ!?しかもたぶんとかあいまいなこと言ってんじゃねぇよ!!』
『あぁそうか!!そうなのな〜。獄寺は雲雀にツナ取られて寂しいんだな?』
『んなっ?!どこをどうしたらそうなるんだ?!いい加減なこといっ』
『でも俺がいるから寂しくないだろ?』
『うるせっ・・・くっつくんじゃねぇ!!あっ抱きしめんなコラッ!!離れろッッ』



『いいよ。入って』
『え・・・あ・・・・失礼します・・・』
 連れて来られたのは応接室。風紀委員の人がいるのかと思ったけど誰もいなくて・・・・。
中に通されて豪華なソファに座らされる。少し待っていると雲雀さんが俺の前にカップを置いた。
『どうぞ。紅茶だから』
『あ・・・ありがとうございます』
 戸惑いながらカップを手に取り、口に運ぶ。
 ――――あ・・・・おいしい。
さすが雲雀さん・・・・・紅茶も上等??俺でもわかる。絶対そのへんに売ってないよこんなの。

『あの・・・今日は時間大丈夫なんですか?誰もいないし・・・・』
『うん。やっと片付いてね。他のやつは見回りに行ってるよ』
 俺の前に腰掛けて雲雀さんも紅茶をすする。
こんなに似合う人もいないと思うんだけど・・・・・・かっこいいな・・・・・。

『どうしたの?そんなに見て』
『えっ?あっいえっ・・・』
 指摘されたことに驚いて危うく紅茶こぼすところだった。
顔が熱くなるのを感じてパッと下を向く。頭上で雲雀さんが少し笑っているのがわかってそれがさらに俺の頬を赤く染めた。
『君は本当に可愛いね。・・・・・・どう?僕のものになる気にはなった?』
『なっ・・・え??』
 本当に急だった。
1週間もほったらかしにしてたくせにこんな急に・・・・・しかもそんなに軽く言われても困るって言うか・・・・・。
 戸惑いを隠せずにいると、雲雀さんは少しだけ微笑んで俺を見た。
『本当はもっと早くこの話したかったんだけど・・・・予想以上に忙しくてね。 この1週間ろくにゆっくり話も出来なかったでしょ?だから、今しかないと思ってね』

 それはわかるよ。
あんな数分話す間にこんな話されたってなんか嫌だし・・・・。だからってなんか今すごく急だったからいまいちついていけないというか心の準備が出来てなかったというか・・・・・。
『でさ、綱吉。僕のことどう思ってるの?1週間もあったんだし、なにか答えは出せたんじゃない?』
『ぁ・・・・』
 答えなんか本当はとっくに出てる。
でも・・・・・不安の方が大きかったから逃げてただけで・・・・・・。

『俺・・・・なんか信じられなくて。その・・・・雲雀さんが俺のこと好き・・・なんて・・・・。からかわれてるのかなって思ってて・・・・』
『からかってるだけのやつに毎日会いに来るほど暇じゃないんだけど?』
 真っ直ぐに俺を見つめる瞳。揺らぐことない、本気の証。
その思いを受け止めるにはあまりにも勇気がいって、俺はつい目を逸らせてしまった。

 ―――――嫌いなわけじゃないのに!!

 雲雀さんは勘違いしてしまったかな?俺がはっきり言わないから・・・・・。
もぅこんな俺には振り向いてくれない??

『信じられないなら、もう1度言おうか。・・・・・僕は綱吉が好きだよ』
『雲雀・・・さん・・・・』
『まだ信じられない?なら何度だって言ってあげる。僕は綱吉が』
『俺もッ・・・!!お・・・俺も、雲雀さんが・・・・好きです』

 雲雀さんの言葉を遮って叫んだ。
もぅ十分にわかったから。
この人から逃げられないことも、どれだけ愛されているかも。
いつでも本気なんだって、あの真っ直ぐな目が言ってるから。
だから俺も、精一杯真っ直ぐに雲雀さんを見返して言った。俺の気持ちも、本気なんだって。
 顔は真っ赤だし瞬きしたら目に溜まっている涙がボロボロ落ちそうで瞬きしないように目にグッと力をいれて見開いて。 相当ブサイクな顔してると思う。
それでも目は逸らさずに、ジッと雲雀さんを見る。
 俺のその姿がおかしかったのか、雲雀さんはクスっと小さく笑って俺達の間にあった机をひょいっと飛び越えて俺の目の前に立った。
そしてストンと片膝ついてしゃがみ、俺の目の高さに視線を合わせた。
『なに泣いてるの?泣かなくていいでしょ』
『・・・泣いて・・・・ない、です・・・・』
 鼻をズルズル言わせながらも泣いてないと言い張ってみる。
そんな俺を見て、雲雀さんはまた1つ笑うと、 そのまま俺を抱きしめた。
背中に回された手から温もりを感じて、思わずビクッとする。
心臓が速さを増して、自分の耳の横にあるみたいな。雲雀さんにもきっと聞こえてる。そして、その中に混じって雲雀さんの落ち着いた鼓動も聞こえる。
ふいに耳に吹き込まれる優しい声。
『ちゃんと僕に口答え出来るようになったね。最初なんて怯えまくりだったのに』
 確かにそうだ。
なんでも“はい”しか答えられなかったのに、何回か会って話しをしただけで慣れて行ったんだ・・・。最初ほど怖いイメージもなくなった。

 ゆっくりと体が離されてかわりに頬に両手が添えられる。
息遣いまで感じとれてしまうこの距離で赤くならないほうが無理。
『綱吉・・・・・やっと僕のものだね』
『雲雀さん・・・』
 優しく雲雀さんの形の整った唇が押し当てられる。
キスだと気付いたのは数秒、後のこと。
気付いてからパニクっても後の祭りで・・・・・。じたばたしている間にもぅ1度奪われる。
『綱吉・・・・目くらい閉じなよ』
『なッ・・・・だっ・・・・』
 そりゃ2回とも目見開いたまんまだったけどさ・・・・・。
あんなふいうちでされて目なんか閉じれないよ!!
そう言ってむくれると・・・・・
『じゃぁ・・・・・・・・・・・・・キスするから目、閉じて』
『そ・・・・ちょっまっ・・・』
『ほら、早く・・・』
 雲雀さんは待ってはくれず、近づいてくる雲雀さんを止めようと軽く手を前に突き出しながら目を瞑った。
そんな中途半端な手は軽くまとめられて、俺の胸の前に静かに収まると同時に3回目のキス。不本意ながら、今回はちゃんと目も閉じてたはずだ。
『雲雀さん・・・・・』
 強く文句は言えないもののとりあえず軽く反抗してみる。
そんな俺の気持ちに気付いたのか雲雀さんはよからぬ笑顔を見せてから
『言われてするのが恥ずかしいんならそういう空気読めるようになりなよ。慣れればわかるだろうし。目も自然に閉じれるよ』
 そんなの無理だよ・・・・・とは言わせてくれない。
俺、大変な人に捕まっちゃったかも・・・・・。
それでも、やっぱり幸せだなっていうほうが大きいんだけどね。

 きっと雲雀さんは俺を離さない。
俺も離さないし・・・・・・離れられないだろうな・・・。





☆オマケ☆
『5時間目が終わったのに10代目が戻ってこねぇ!!絶対なにかあったに違いねぇ!!俺の助けを待ってるんだ!!!10代目!!今行きます!!』
 今にも走り出そうとする獄寺を後ろからはがいじめにしながら山本が呟く。
『ん〜・・・・ツナのやつ・・・・・・・うまくいったんだな!』
『離せってアホ!!どういう意味だそりゃ!?』
『まぁまぁ。大丈夫だって。・・・だからさ、そんな寂しがらなくたって俺がいるだろ?』
『だぁっっ!!耳元でしゃべんじゃねぇアホ!!』
 ところかまわずいちゃいちゃバカップル。


                                                                        end