その手で触って




『なにやってんだ・・・・・』

『ん〜・・・・・』


 さっきからずっとこの調子だ。

人の手をジッと見て、指一本一本を触って自分の指を絡ませて遊ぶ。

そのおかげで俺はパソコンのキーボードを片手で弾かなければいけなくなっている。

それでも離せと言えないのはまぁ・・・・・・惚れた弱味ってやつか?

言えないこともないが・・・・・言うと後が面倒になるからココは飽きるまで好きにさせておこう・・・・と思ったんだがな。

どうせすぐ飽きるだろうと思っていたが俺の読み違いだった。

十文字は飽きることなくずーっと俺の手を取って遊ぶ。

そろそろ片手でキーボードを弾くのも疲れたが・・・・・・。

画面から目を逸らして十文字を見るとどこか楽しそうで・・・・・。

やっぱり止めろと言えなくて俺は黙ってまたパソコンに視線を戻した。



 十文字も退屈なんだろうと思う。

初めのころは俺がパソコンをやっていると・・・・・

『俺にも構えよ・・・・』

 なんてことを言ってきていたが・・・・・。

いや、それはそれで可愛いが・・・・・・。

最近は少し大人しくなって、隣で俺の作業が終わるのを待っていたりする。

今日も初めは隣に大人しく座っていたはずなんだけどな。

いつのまにか手を取られてた。

そう考えていくと・・・・・ちょっとぐらい構ってやるか・・・・・と思えてくる。



 決してパソコンから十文字に視線は向けず、十文字が弄っている方の手の人差し指を軽く動かしてみる。

小さく声を上げる十文字。

もう一度・・・・・・・他の指も一緒に動かしてやると、視界の端で嬉しそうに笑う十文字が見えた。


あぁ、クソ・・・・・・・・・・可愛いな・・・・。


十文字が手を離した隙に、俺は十文字の髪にその指をもぐりこませた。

撫でると短めの髪が気持ちよく手の平を刺激する。

なんかちょっと・・・・・・・


『くすぐってぇな・・・・・・』

『俺も・・・・ヒル魔に髪撫でられるとくすぐってぇ・・・・』


 あぁ・・・・もう・・・・

わしゃわしゃと髪を撫でてパソコンの電源を落とす。

パタンと画面を閉じて、十文字の手をとり、引き寄せて自分の膝の上へと招く。

十文字は驚いていたが・・・・・・俺をジーッと見た後、キューッと首に手を回して抱きついてきた。


『ヒル魔ぁーーーッ』


 目一杯甘えてくる可愛いヤツを目一杯甘やかして抱きしめる。

と・・・・・ふいに耳にピリリとした軽い痛み。

犯人は決まって十文字しかいない。


『なにしてんだ』

『ヒル魔のマネ』


 言うと同時に満面の笑みを向けられる。

あぁ、俺の噛み癖か・・・・・。

俺はよく十文字の耳に噛み付いてやる。

耳だけじゃないが・・・・。


『っ・・・・・・あんま煽んじゃねぇよ・・・・・・』

『ヒル魔も耳弱い??』

『バーカ。テメーだからだ』


 そう言ってやると、してやったり・・・・・という顔。

そろそろ我慢も限界なんだけど・・・・・・。


『シていいか?』

『ダーメ。っていうか今は嫌だ』


 完璧にその気はないらしい。

こんなにあっさりとしているときは本当にする気がないときだ。

ただ甘えたい、引っ付いていたいってだけ。

このときにどれだけ攻めたってこの頑固もんは絶対ノってこない。

生殺しだな・・・・・・・。

それでも大人しくされっぱなしな訳はねぇ。

ちゅっと啄ばむようなキスをして、仕返しのように耳に噛み付いてやった。


『いてぇーって・・・・・』


 文句を言ってくる十文字と目を合わせて、謝るようにキス。

頬の十字傷をなぞるように唇を落とし、もう一度唇に戻る。


『なんで・・・・・飽きもせずに俺の手ばっか見てたんだ』

『ん〜・・・・』

『ちゃんと答えやがれ』

『キレんなよ・・・・・・んっとな、キレーな手だなって見てて・・・・』


 みるみるうちに紅くなっていく十文字。

何を考えていたのか・・・・・・・


『見てて・・・・なんだよ?』

『ぅ〜〜〜〜・・・・・言わなきゃダメか?』

『言わねぇならこの場で押し倒す』


 ニヤッと笑うと十文字は苦虫を噛み潰したような顔をして・・・・・・途切れ途切れに小さな声で続きを言った。


『そのキレーな指で・・・キーボードじゃなくて・・・・・・ぉ・・・俺・・・に・・・・さ・・・・さわ・・・って・・・・ほしい・・・・・って・・・・思っ・・・・


 十文字は絶対に40度ぐらい熱あるだろっていうぐらいに顔を真っ赤にして言った。

言い終わった後、恥ずかしかったのか、俺にガバッと抱きついてきて・・・・・。

俺はそいつが愛しくてゆっくりと背中を撫でてやった。


 やっぱり退屈だったんだな。

自分に触れなんて・・・・すげー独占欲。

キーボードにまで嫉妬するコイツが本気で可愛いと思う俺は重傷か??




『心配しなくても・・・・いっぱい触ってやるよ・・・・・・』


 顔を上げようとしない十文字の紅くなって熱を持った耳に直接言葉を吹き込んだ。

しばらく後、十文字はまだ紅く染まっている顔を上げ、恥ずかしそうに俺に向かって微笑んだ。



                                                                end






読んでくださってありがとうございます!!
チャコ様の誕生日祝い・・・・・・には大分遅れてしまいましたが、なにも出来なかったので;;
チャコ様にプレゼントです!!よければお持ち帰りください!!!
えーーー本当に遅くなってごめんなさい;;
そろそろ1ヶ月経つよ?!?!的な時期ですよね;;
でも・・・・・・なにかしたかったので;;
本当にすみませんでした;;
お誕生日おめでとうございます!!(本当に遅いな・・・・・お前)
こんなヒル十ですが・・・・・・;;
これからおよろしくお願いします!!!