お試し期間作戦
結局一睡も出来ないまま・・・。あんなにはっきり目覚ましの音聞いたの初めてかもしれねぇ・・・。しかも一回目で止めて起きたの人生で初めてかもしれねぇ・・・。
俺はボーっとしながらも飯は食おうとテーブルにつく。目の前には日本の伝統的(?)朝ご飯。ご飯と味噌汁と焼き魚・・・さんまか?・・・と納豆とかまぁなんか和食。
いつもなら飛んで喜ぶのに・・・そんな余裕すらない。
昨日・・・寝てない代わりに答えが出たのか・・・・・・・出てない。わかんねぇままだ。幸いにも今日は野球の朝練が休みだ。朝から顔合わすことはねぇ。それだけが救い。クラスも違うし普段もめったに会わねぇから学校での接触はないだろぅ。問題は放課後の部活だ。どんな態度取ればいいんだ・・・?
気にしねぇでいつも通りケンカ吹っかけるか?・・・・・・出来る訳ねぇ。かと言って普通にしゃべるとか普段でもしねぇ。ムシか??ムシしかねぇのか???なんか自らムシってヤダよな・・・。陰険っぽいし。じゃぁどぉすりゃいいんだよ??
『天国なにしてんの?早く食べないと遅刻よ?』
『あ?あぁ・・・ってヤベッ!!もうこんな時間か!?』
時計を見ると8時15分。もう家を出ないと間に合わない。俺は味噌汁とご飯を一気に口の中に放りこんでカバンを持ち『行って来る!!!』っと全速力で玄関まで走りそのままの勢いで家を出た。
『ん?つーか走んなくても間に合うって。なに走ってんだ俺』
自分で自分に突っ込み走る足を止める。なんか全部空まわってんな・・・。歩きながらそんなことを思う。
犬飼の告白の返事。なんでここまで真剣に考えてんのかは、やっぱ告白する勇気がどんだけ大きいか知ってるから。男からの告白なんて笑い飛ばして聞かないふりにすることぐらい出来る。『何言ってんだ。気持ち悪ぃ冗談言ってんじゃねぇよ』って笑い飛ばせば十分だ。でもそんなんすげー失礼だろ?相手の気持ち全否定してることになるんだから。女の子に告白するのにもすっげー勇気がいる。でも男に告白すんのって
もっと勇気いるだろ。フラれる確立の方が高ぇのに・・・。フラれるどころか気持ち悪がられるかもしれないんだぜ?
そうやって考えるから・・・生半可な気持ちで返事できない。だからこそ悩んでるんだけど・・・。答えってどぅやったら出るんだろぅな?
そんなことを考えながら歩いているとドンッと何かにぶつかる。何かって言っても人だろぅけど・・・。俺が下向いて歩いてたから謝ろうと思って顔を上げるとそこにいたのは・・・・・・・・・。
『あ・・・・・ぃ・・・犬・・・飼・・・』
散々悩まされている相手。本人。どうしよ??なんだよ今日の俺運勢最悪なのか!?絶対12位だろ!?バツ2個ぐらいついてるだろ!?こんな偶然100年に1回ぐらいしかねぇだろ!!バカやろう!!!!
『・・・よぉバカ猿』
『ぉ・・・おぅ・・・』
なんだよこいつ余裕ぶっこきやがって!!そぅ思うけど口には出せない。いつもなら思ったことそのまま言えたのに・・・。
とりあえず行く目的地が同じだから一緒に歩く。無言のまま。昨日の部室の中みたいだ・・・。
そしてまた昨日と同じように静寂を破ったのは犬飼だった。
『寝てないのか?』
『な・・・ッ!?』
『目の下・・・真っ黒だ』
そんなに解るほど真っ黒なのだろうか?寝ていないのがバレて少し恥ずかしくなる。
『・・・そんなになるまで考えなくていいだろ』
『ッ・・・!!誰のために悩んでやってると思ってんだバカ犬!!これでも必死に考えてんだ!もうちょっと待ってやがれ!!』
俺は何を必死に叫んでるんだ?犬飼もビックリしてるし・・・。でもなんかムカついたんだ。なんかわかんないけど・・・余計に答えを出さなくちゃって思えてきた。
『・・・・ぷッ・・・バカ猿・・・。でも・・・サンキュ。返事、待ってる』
『・・・・!?///』
笑った・・・。いや。最初のぷッ・・・じゃなくて!最後に・・・微笑んだ・・・あの犬飼が!!俺に!!昨日は顔真っ赤にして照れて今日は微笑んだ!!・・・・・なんか・・・なんだ??俺の体・・・ドクドクいってる。耳の近くに心臓あるみたいに・・・音でかすぎ・・・。隣にいる犬飼にまで聞こえるかも・・・ってぐらいにドキドキしてる。これ・・・なんだ??
結局そこから数分もたたないうちに学校に着き、下駄箱で分かれた。俺の心臓はおさまることを知らずずっと鳴りっぱなし。教室についてもしばらくおさまらなかった。
そしてあっというまに昼休み。いつもならチャイムが鳴る五秒前には飯を広げているのに、チャイムが鳴り終わっても席さえ立たない俺を心配したのか沢松が俺の席まで来る。
『おい天国〜?どうしたんだ?朝から変だぜ?お前また誰かに恋したのか?』
『・・・・・はぁ!?恋!?違う!!恋じゃねぇ!』
『ほぉ〜・・・その反応・・・。なにかあったな?この沢松に隠し事とはいい度胸だなぁ〜天国〜?』
く・・・ッ。はめられた・・・。くそぉ・・・こうなった沢松はマジでしつこいからな・・・かくしても無駄か。
俺は意を決して昨日あったことから俺が考えてることまで全てを話した。
『なるほどなぁ〜。あのプレイボーイがまさか天国を好きなんてなぁ。つーか天国。お前も好きだろ?』
は・・・?今なんつった?俺にはよく聞こえなかった。特に最後の方。聞こえないフリでそっぽを向いているといつも持ち歩いているスタンガンを首元に突きつけられる。
『てめぇ。無視してんじゃねぇ・・・』
・・・気を取り直して・・・。
『つーか沢松。なんでどこで俺があのクソ犬を好きだと思うんだ?俺一言も言ってねぇぞ?』
『お前ほんと自分のことになると鈍いよな?あんだけ思っといてどこが好きじゃねぇんだ?』
あんだけ思っといてって?俺犬飼のことなんか思ってるか??
頭の上にはてなマークを浮かべる俺に沢松は大きなため息をついてから切り出す。
『一番解りやすいのは・・・ドキドキしたことだ。男相手にドキドキなんてそんなするもんじゃねぇだろ。しかも止まらないぐらいに』
『う・・・ッ』
『自分でも自覚あんだろ?認めちまえ』
ポイントを正確につかれ言われるとどぅも反論が出来ない。これでもぅ俺は認めたことになるんだろうな・・・。
『でもよ!!そんな簡単に、はいそうですかなんて行くかよ!ほんとにそんな意味で好きかなんてわかんねぇし・・・』
『まぁ確かにな(ぜってぇそんな意味で好きだろうけど・・・。)ここで1つハンサム沢松様に良い提案がある』
ハンサムとか様とかいけすかねぇ単語は聞き流し、その提案とやらがなんなのか先を促す。
『・・・・・・付き合っちまえ』
『・・・・・・。・・・・表出ろゃ・・・・・・』
俺はガタッとイスから立ち上がり沢松の胸倉を掴む勢いで詰め寄る。
『まぁ落ち着け天国。まだ最後まで言ってねぇ。座れ』
聞いてからでも遅くはない。殺ろうと思えばいつでも殺れる。そう思いしかたなく座る。
『まぁ付き合えっていっても別に本気で付き合えって言ってる訳じゃねぇ。お試し期間だ』
『お試し?』
『あぁ。どぅせお前は頭で考えたって無駄なんだ。そしたら行動しかないだろ』
まぁ確かに。俺は今まで考えるより行動だったから実際こんな考えることなんていままでなかったんだ。
『一度無意識にでも付き合えたらって思ったことがあるんなら大丈夫だろ?ってかあんま付き合ってるって意識とかなしで友達感覚でいろいろしてみりゃいいじゃねぇか』
『それいいかもな沢松!!サンキュ!!!こんなときだけ役に立つな!!』
『こんなときだけは余計だ。まぁ頑張ってこいよ』
天国は気付いてないだろうケド・・・・今まで考えるより即行動だったお前があんだけ考えたんだ。そんだけ相手のことが大事・・・・・・好きってことだろ。なんであんなに自分のことに無頓着なんだかなぁアイツは・・・。
沢松に相談して良かったかもな。これでちょっとは進めそうだし。やっぱ考えててもなんも生まれねぇよな。今日の部活が終わった後犬飼に言ってみるか。
妙にスッキリした気分だ。悩み事がちょっと解決しただけでもかなり楽になるもんなんだなぁ〜。
俺は午後の光があまりにも気持ちよすぎてそのまま5、6時間目は爆睡だった。
睡眠不足が少し解消し、俺は元気よく部活に顔を出す。半分ぐらいの人数が部室にいて、それぞれ着替えている。その中に犬飼もいて・・・・・・。俺はこそっと犬飼に近づき、みんなに聞こえないように囁く。
『今日、話があるから一緒に帰んぞ・・・・』
犬飼は一瞬ピクっと反応したが、そのまま平然を装いながら、小さく『わかった』と返事をした。それを聞いてから俺も着替えに入る。
そっからの時間はものすごく早かった。いや、早く感じた。あっという間に練習は終わり、みんな着替えて帰っていく。俺は犬飼と一緒に出ると怪しまれるので先に出て門のところで待っていることにした。
しばらくすると犬飼が出てきて、少し照れくさくて目を逸らしながら『帰るか・・・』と切り出す。歩き出すと犬飼も歩いて、朝来た様に二人で並んで帰る。またまた沈黙。今回は俺から切り出した。
『あのさ・・・あのことなんだけど・・・俺正直よくわかんなくてさ。付き合うとかあんまピンとこないし・・・。でもさ、お前のこと嫌いじゃねぇから。だから・・・・一週間、いや、別に二週間でもいいけど、俺に考える時間くれね?
その間の期間中は遊びにいったりしてさ、もっと犬飼のことちゃんと知りたいっていうか・・・けんかしかしてねぇからいまいちよくわかんねぇし・・・どう?』
『猿がそれをしてくれるんなら俺は嬉しいけどな。俺も猿のこともっと知りてぇ・・・』
『よし!交渉成立!期間は・・・一週間以上三週間以内ってとこか?部活あってなかなか遊べねぇもんな』
『そぉだな』
『じゃぁきまりな。明日からよろしくな!さっそく土曜日の昼から、遊ぼうぜ?どうせ暇だろクソ犬』
『よろしくな。あぁ。とりあえずあいてる』
ってな訳で、メアド交換してそれぞれの家へと帰る分かれ道で別れた。
明日からのこと考えてわくわくしてる自分がいるんだけど・・・。俺ちゃんとはっきりした答えだせんのかな?
第2話・完