始まりの日々




『ん・・・・・ん?・・・・・どこだ??ここ・・・・』
 まだ半分開ききらないまぶたを擦りながらあたりを見回すが見たことがない場所。結構良い部屋だけど・・・・どこだよ??
『ぅ・・・ん・・・・』
 その声にビックリして隣を見ると・・・・犬飼が寝ていた。そこでようやく思い出す。
・・・・・昨日越してきたんだった・・・・・・・・。


 “一緒に暮らそう”と約束した日から、俺達の関係は崩れることなく続いていた。そして長かった2年が経ち、ようやく昨日この新しい家に引っ越してきたんだった。
もちろんちゃんと親にも言った。アレは高校3年の秋・・・・・・。

 まずは俺の母さんのところへ。犬飼を家に呼び、母さんに全てを話した。 反対されることもわかってたし覚悟もしてた。親不孝者だと思いながらも、反対されたら2人でどこかへ逃げるつもりでもいた。なのに・・・・・・・・俺の母さんときたら・・・・
『うっそ!!?天国にこんなカッコいい子が!?信じられないわ。こんな息子でいいんならいくらでも持ってってちょうだい!』
とかなんとか言って簡単にオッケー出しやがった。嬉しいけどさ!!息子としてはちょっと複雑だぞ!? でもまぁ・・・・・許してもらえて良かった・・・・・・。
 で、俺の母さんは犬飼がお気に入り。美形大好きだからな・・・・。
でも俺のだからな。わたさねぇぞ・・・。

 次は犬飼の家。お母様とお姉さま、犬飼に俺という4人での対談・・・・。犬飼の親と姉ってだけにものすごい美人・・・・。犬飼が根暗になったの解る気がした瞬間だった。だってすげー迫力・・・。圧力掛けられてるみてぇにビリビリする。
でも負けてられねぇし・・・気合を入れなおして全部を話すと・・・・・・犬飼のお姉さんがガタッと立ち上がって口元を押さえる。
やっぱこれが普通の反応だよな・・・。うちの母さんがおかしすぎるんだ・・・。っと思っていた矢先、次の言葉を聞いて俺は固まる。
『生ホモがこんなに近くにいるなんてッッ!!出かした冥!!』
 その後もきゃぁきゃぁ言って騒いでいた。犬飼をチラッと見ると、犬飼もなにかショックを受けているようで固まっていた。そしてお母様の方を見ると・・・・・・お母様は俺に向かってゆっくり微笑む。
『天国くん?ビックリしたでしょ?ごめんねこんな姉で。この子ホモ大好きなの・・・。 だから身近にいて嬉しいだけだから収まるまで無視してていいからね。あっそれと・・・私もあなたたちの事賛成だから。まさか冥みたいな根暗な子と一緒になってくれる子がいるなんて思ってなかったもの。これからも仲良くしてあげてね?』
『え?あっはい!ありがとうございまぁす!!』
 ってな訳で・・・・・俺達の心配は無駄に終わり、すんなりと認めてもらえた。つーか俺達の親ってどうなんだよ?こんな簡単に進んでいいのか!?ってか息子が道踏み外してんのに進めていいのかよ!?って感じだ。 すんなり認められて嬉しい反面悲しくなってくる。犬飼も同じらしく、2人で目を合わせて苦笑した。
 それからお互いの親も仲良くなって四人で食事とかも多くなって、だんだんといい感じの家族付き合いが出来るようになってきた。その中で将来の話とかもして、一緒に2人で住むんだって話もした。そしたら両方の親が“結婚式とか盛大に出来ない代わりにプレゼントとして家を買ってあげる”なんて話を進めだした。さすがに俺も犬飼も反対した。二人で安い家賃のアパートでも借りるつもりだったしそこまで親不孝なことするつもりもなかったのに・・・・。 それぐらいさせなさいっていう母ちゃんパワーはすさまじく止めることが出来なかった。そのままあれよあれよといううちに計画は進み、俺達が高校卒業間近になるころにはすでに家が出来上がっていた。そして中に入れる家具とかも見て、犬飼の姉ちゃんが“絶対ベッドはダブルね”とか張り切ったから要望どおりダブルベッド・・・・。まぁシングル二つ買うより安いから良いけど・・・・。ってまぁ必要な家具とか全部母さん達が買ってくれて・・・・・・犬飼といつかちゃんとお金返そうなって話をした。
 と言う訳で、怖いくらいに事が運び、今に至る。昨日は家の 自分達の荷物を全部こっちに運んで整理してという大作業の1日だった。そしてそのまま2人で倒れこむようにして寝てしまった。

 今、朝の8時。犬飼はまだスヨスヨと寝ている。気持ちよさそうに眠るのを見るのが少しムカついて頬っぺたを突っついてやる。犬飼は少しムッとなっていたが、起きる様子はない。クスッと笑って、仕方なく止めてやると犬飼はまた規則正しい寝息を立てて深い眠りに入っていく。
 やっと約束が叶ったんだな。昨日は忙しすぎてそれどころじゃなかったけど今日は喜びに浸ろうな?だってこれからはずっと一緒にいられるんだぜ?もう離れなくていいんだぜ? だから・・・・早く目覚ませよ・・・・・・バカ犬。可愛い嫁が1人寂しく待ってるんだから・・・・。
 可愛い寝顔を見ていると、思いが通じたのか唐突に犬飼の目が開く。俺はビクッとして一瞬固まったがとりあえず“おはよう”と声をかけてみる。けど犬飼の反応はなく、ただボーっと俺を見ている。俺はどうしていいかわからず、犬飼がどう出るのかとりあえず観察することにした。ってか目覚めてんのか?こいつ低血圧なんかな?
じーっと観察していると、やっと犬飼が口を開いた。
『なんで・・・・・・猿がいるんだ?』
『ん?犬飼??』
 なんか変じゃねぇ?まさかコイツも引っ越してきたこと忘れてんのか??
『コレまだ夢か?猿が俺のベッドにいる・・・・・・』
『ぉい犬??夢じゃねぇぞ??犬飼??っておぃッ!!!!何してッ・・・やーめーろーッ!!朝から盛んな!!』
 半ボケの癖に犬飼は俺の上にのしかかってくる。なんかいつもより力強ぇし。手も足も全部押さえつけられて身動きが取れない。
『犬飼!!ちょッてめ!!起きろよ!!!アホ犬!!』
 オマケにキスまでしてこようとする。なんでこんなにも目覚めねぇんだよ?!もぅガマンならねぇ!!
俺は近づいてくる犬飼に思いっきり頭突きをくらわせてやった。そんな強くはしてないけどゴンッと音がして犬飼が低く呻いた。そして俺を押さえつけていた手を離し頭を抑える。
『犬飼??悪い・・・大丈夫か??って・・・・てめーも悪いんだからな・・・』
『いてぇ・・・・。・・・・・?なんで猿がいるんだ?ここどこだ?』
 やっぱり解ってなかった。つーか犬飼は夢ん中でも俺を犯してんのか・・・・?と嫌なことを考えたが急いでかき消す。
『やっぱお前も忘れてんのか。昨日引っ越してきたじゃん?ココ俺達の新居vV』
 そう言ってやるとようやく思い出したようで、そうだった・・・と少し嬉しそうに顔が緩んだ。そして急に真顔に戻り、犬飼は俺に向き直ると、ギュウッと抱きついてきてついでにキスまでしてきやがった。
『なんだよ急に・・・?』
『とりあえず・・・・嬉しくてつい・・・な。キスはおはようのちゅぅ』
『ちゅぅとか言うなキショクわりぃ・・・でもまぁ、俺も犬飼起きんの待ってたんだぜ?改めて今日からよろしくなvV』
『そぅだ・・・・昨日渡そうと思って忘れてた・・・・。ちょっと待ってろよ・・・』
 犬飼はベッドから下り、横の棚の引き出しを開けると、小さい長方形の箱を取り出し、また俺の前に戻ってきた。銀色のその箱はものすごい高級感を漂わせている。犬飼はその箱を開くと、俺に中を見せてくる。なんだろうと思い覗くと・・・・・中には2つの同じデザインの指輪が入っていた。驚きぱっと顔を上げると、犬飼がフッと笑う。犬飼はその箱から1つ指輪を取り出した。
『左手貸せ』
 差し出された手の上に左手を乗せると犬飼はその手を取り、そっと薬指に指輪を はめてくれた。そして俺も箱から指輪を取り、犬飼の指にはめる。
『犬飼・・・ありがと』
『誓いのキスもしとくか?』
 コクンとうなずく俺に犬飼は優しいキスをしてくれた。嘘っぱちな結婚式でも俺達2人にとっては嘘なんかじゃなく、確かな誓い。この時を本当にずっとずっと待っていた。
『今夜は初夜か?』
『ッ!?・・・・・・バカ犬・・・ッ////』
『いまさら照れるな』
 そうだけど・・・・!!そうだけどさ!!もうコイツとは何回もヤってきたけど・・・・“初夜”とか言われたらなんか・・・・初めてのことみたいに聞こえて恥ずかしくなる。
真っ赤になって俯くと、犬飼はくすくすと笑って俺の髪を撫でた。
『そんな意識すんなよ。腹減ったし下降りようぜ?なんか作って?』
『む〜〜〜・・・・』
 犬飼に手を引かれ、寝室を後にする。
キッチンへ行き、とりあえず昨日買っておいたもので簡単に朝ご飯を作る。といってもパン焼いてサラダと目玉焼き作っただけ。それにコーヒーを添える。
『サンキュ。あ・・・なぁ猿。今日の晩御飯オムライス作ってくれね?高校のとき俺に初めて作ってくれたやつ』
『あぁ〜作ったなそういえば・・・。アレはあのときあれしか材料がなかったからだけど』
『マジでうまかったんだよなぁ〜猿と一緒になったら絶対最初に作ってもらおうと思ってた』
『そうなのか?昨日コンビニだったもんな』
 晩御飯の会話とか夫婦って感じだよなぁ〜。しかし犬飼も覚えてたんだなぁ・・・あのオムライス・・・・。てっきり忘れてると思ってたけど。 なんかそういうのって嬉しいな。

『つーか犬!明日試合だったよな?』
『ん?あぁ。練習試合みたいなもんだけどな』
 そう。犬飼は高校卒業してプロ野球選手になった。もちろん甲子園でのスカウト。しかも入ってすぐ2軍入り。やっぱこいつはすごいよな〜。さすが俺のライバル。あぁ、俺と犬飼は恋人(今は夫婦だが)兼ライバルだからな!一応俺にもスカウト来てたんだけど・・・けった。犬飼と一緒にプロの道進むのも良かったけど、俺はそれより犬飼の妻を選んだってこと。わ〜〜恥ずかしい!・・・つーか2人ともプロになんか入ったらせっかくやっと一緒になったのになかなか会えないかもしれないじゃん?まぁそれ以前に俺がそこまでプロになる気がなかったってのもあるけど。そんな訳で俺は専業主婦vV 疲れて帰ってきた犬飼の心と体を癒すのが仕事ですッ!!あと栄養バランス考えて料理つくったりとか?犬飼専属マネージャー!なんつって。でもマジ。犬飼ほっといたら食パンのみで1日過ごすからな・・・。そんなんで強くなれるはずねぇし。だから高校の時から俺が毎日弁当作ってやってたし。俺も結構購買のパン派だったのに犬飼のために弁当に変わったからな。俺自身の健康管理にもなってよかったけど。はぁ〜いい思い出だぁ。

『明日帰り遅くなると思うから。先寝てて良いぞ?』
『ん?別に。俺夜更かし平気だし。出来るだけ起きてるよ』
『・・・・・・おまえ言い出したら聞かないからな・・・。あんま遅くなるようだったらメール入れるからそのときは大人しく寝ろよ?』
『わかったよ。ほんと過保護なやつ〜。 あのベッド無駄にデカイから1人で寝んの寂しいんだよなぁ早く帰って来いよ?』
『出来るだけそうする・・・。まぁ寂しくないように今日はぅんと抱いてやるよ』
『またそういうことを・・・・・・明日試合なんだからさっさと寝ろよ///』
『じゃぁさっさとしたらさっさと寝れる』
『いい加減にしとけよバカ犬・・・・』
 俺がキッと睨むと犬飼はごめんなさいと大人しく謝る。
大人しくなった犬飼を見てから、俺は食べ終わった自分のと犬飼の食器を流しへ持っていくために重ねる。でもバランスが悪くて一気に運べそうもない。そうすると犬飼がスッと席を立って俺が両手に持った食器を持ってくれる。
『猿そこのコップ持って来いよ』
『え・・・?あ・・・うん』
 急なことに思考がついていかず唖然としてしまった。犬飼は俺から取った食器を持って流しへと 歩いていく。俺はテーブルの上に残された2つのコーヒーカップを持ち犬飼の後を追って流しに持って行く。
『サンキュ犬飼vV』
『あぁ。お前どんくさいんだから無理するな』
『なっ・・・この天才天国様に不可能なことはない!!』
『もうそれ聞き飽きた・・・・』
 ごもっとも。そりゃぁ高校から言ってるし。・・・・・いや・・・もしかしたら中学??小学校??いくらなんでも言いすぎか・・・。
ってかそんな急にかっこよくされても困るって言うか・・・・・・実はときめいちゃった!とか言えるわけねぇし・・・・・・。俺マジふいうち弱いんだよ・・・。
 ドキドキ鳴る胸を抑えつつ、俺は洗い物に取り掛かる。犬飼は俺が洗っていった皿を拭いていってくれる。なんかこんなのがくすぐったくて、あぁ一緒に住んでるんだって改めて実感する。
『終わった。サンキュ〜犬飼!』
『どういたしまして。・・・・猿』
『ん?なに・・・んッ!?』
 振り返るとふいうちちゅぅ。いや・・・ちゅぅなんて可愛らしいもんじゃない。体は逃げられないように固定されてるし、舌まで入ってきてるし・・・・。
『ん・・・・ふぁ・・・』
 散々口内を嘗め回したあげく、舌や唇に吸い付いてきてやっと唇が離れていく。気が抜けた瞬間足がガクンッと崩れて、倒れそうになるのを犬飼が支えてくれた。
『なにすんだよ急に・・・』
『手伝ったからご褒美もらった』
『なにがご褒美だ・・・・勝手にとっといて・・・・ってか頭に顎のせんな!痛ぇ!!』
 支えてくれてんのはいいとして顎ぎゅぅ〜ってされんのは痛い。なんとか足のガクガクも治まってきたから俺は犬飼の胸をぐーっと押した。さすが今でも鍛えてるだけあってビクともしないんだけど・・・・・。
『離せって!俺今から洗濯あるんだよ!!』
 そういうとやっと離してくれる。しかし・・・キスのオマケ付きだけど・・・。
おでこと頬っぺた、耳の後ろまでキスして最後に唇。ここは外国か、それともお前は外人なのか!?って言うほどキスしたあとやっとのことで解放してくれる。これに慣れた俺もどうかと思うけど・・・。
とりあえず犬飼にはテレビを見させて俺は洗濯に取り掛かった。男2人っていうだけあってそんなに量はない。色物と白いものを分けての2杯で十分。今日は良い天気だしすぐ乾くだろ。
鼻歌交じりにベランダに出て仕上がった洗濯ものを干す。ふと中を見るとソファに座る犬飼と目が合う。俺はとりあえず笑っといてまた洗濯物を干すのに集中した。
 なんとかかんとか初の洗濯を終わらせた俺は犬飼の隣に腰を下ろす。
『お疲れさん』
『うん!昨日母さんに洗濯の仕方教えてもらって初めてやったわりにはまぁまぁ出来たかな!!』
 疲れたぁ〜と少し甘えるように犬飼にもたれると よしよしと髪を撫でてくれた。
『あっ犬飼、晩御飯の買い物一緒に行く?留守番してる?』
『行く』
 即行で返事が返ってくる。まぁなんとなくそんな気はしてたけど・・・・。
今まだ11時だけど、昼ごはんも買わなければいけないのでさっそく近所のスーパーへ行くことにする。晩御飯のオムライスの材料を買い、後は昼御飯。犬飼に何が食べたい?と聞くとスパゲッティが食べたいというのでその材料も買った。飲み物も結構買ったから重くなったんだけど、俺力には自身があるからいいって言ってんのに犬飼はわざわざ重い方を持ってくれた。なんか旦那だな・・・って感じ?

 家に帰ってさっそく昼御飯の準備に取り掛かる。
パスタは茹でるだけだからいいとして・・・ソースも同時進行で作っていく。それがまぁまぁうまく出来て犬飼もうまいって言って食べてくれたしよかったと思う。
『暇だな・・・』
 食べ終わってしまったら特にすることもなくなり、 またソファでゴロゴロする。晩御飯の用意をするにはまだ早い。洗濯物も乾いていない。テレビもおもしろくない・・・・・。犬飼は暇とかいいつつも俺の髪触って遊んでるし。
『犬飼〜ほんっと暇〜』
『じゃぁデート行くか?』
『デート!?デートってどこに?』
『すぐそこの公園。あの広いとこ。キャッチボールしようぜ』
『キャッチボール!?いいかもなぁ!やりてぇ!!』
 犬飼の提案に大賛成。キャッチボールなんて久しぶりだ。引退してから1回ぐらいしかしてない。
というわけで、俺達はグローブとボールをもって広場に行くことにする。歩いて5分かからないところにある広場は結構いつも利用されるけど、今日は時間が時間だからかまだ人が少ない。さっそくキャッチボールを始めた。
『ぅわ!グローブはめんの久々〜。これ高校のときのそのままだし』
『俺も高校の持ってきた』
『思い出だもんな』
 俺達の始まりは野球だから。野球がなかったら俺と犬飼会ってないし。
それだけじゃなく、みんなで燃え尽きた青春だから。今でも鮮明に覚えてる。つい昨日のことのように思えてくる。キャッチボールなんかしてたら特に。またあのメンバーで野球やりたい・・・・・・。何度思ったか解らないほどだ。まぁやろうと思えば出来るんだけどな。呼びかけりゃすぐ集まる連中ばっかだし。そんなことを思いながら犬飼に1球1球投げる。
『猿キャッチボールうまくなったよな。最初なんかボロボロだっただろ?』
 そういえば最初は四方八方に飛んでいって・・・・ってか飛ばしてよく相手怒らせてたんだ。それがだんだん真っ直ぐ飛ぶようになってちゃんと相手のグローブに収まるようになった。引退してから全然やってないって言っても体が覚えてるもんなんだな。
『初めて犬飼に褒められたのいつだっけ?付き合って5ヶ月目ぐらい??お前が俺のこと褒めたから俺達の関係気付いてなかった野球部の連中が気付いて広まったんだよなぁ〜』
 あの時は褒められて嬉しかった反面普段いわねぇ事言うから ばれちまったじゃねぇかってムカついた気持ちもあったな・・・。
『あれは俺だけのせいじゃないだろ・・・・・。俺が褒めたときにお前が俺に抱きついてきたのも悪い』
『そんなことしたっけ・・・・?』
『またてめぇは自分のいい様に解釈しやがって・・・』
 そんなことしてたなんて全然覚えてない・・・。なんか俺結構やりたい放題やってるしな。
野球に触れてたらいろんなこと思い出す。今度絶対みんなで集まって野球だな。決定〜。
 そんな感じで懐かしい会話を楽しんでいるとあっという間に時間がすぎ気付けば3時間ぶっとうしでキャッチボールしていた。時計の針が4時をさそうとしているのでそろそろ洗濯物取り込んで飯の準備しなきゃだし・・・ってことで今日はこれでおしまい。まだまだ続けたかったし楽しかったけどまた今度来ようなと約束して家へと帰った。

 帰ってから急いで洗濯物を取り込み、御飯の仕度を始める。犬飼はまた俺の隣に来てじーっと見ている。たしかあの時も見てたな・・・・。
『またうまくなったか?包丁の使い方』
『そりゃぁ・・・・一応してたんだぜ?花嫁修業ってやつ』
 母さんにいろいろ教えてもらって料理もほとんど毎日俺が作ってた。だから作れるものも増えたし・・・俺自身も食べたことないものまで練習したしな。犬飼にうまいもん食わせたくて・・・。あれだけ毎日野菜だの肉だの切ってたら嫌でもうまくなる。
『へぇ〜。頑張ってくれてたんだな。俺のために・・・。サンキュ』
 “俺のために”ってとこを若干強調した気がする・・・・・・しかもお礼のちゅぅだかなんだか知らないがほっぺチュー付き。
犬飼今日機嫌良いみたいだ。まぁ結構充実した1日過ごしたしな。
『ってか犬飼はこれ見てて楽しいんか?』
 俺的には向こうでテレビ見てた方が楽しいと思うぞ・・・・・。でも犬飼は違うらしい。
『猿を見てたいんだよ。なんかエプロンとかしてて可愛いし』
『変なやつ』
 俺見てたって楽しくはないだろう・・・。ってか俺がおかしいのか?恋人・・・いやもぅ夫婦か。 だからってずっと見てたいもんなのか??良いけどさ別に・・・。
『なぁ猿・・・なんでエプロンとかしてんだ?』
『なんでって・・・・汚れるからだろ?・・・家から持ってきた』
『ふ〜ん・・・・・。裸エプロンとかしてくれるつもりか?』
『・・・ッ!?////する訳ねぇだろアホ!!』
 犬飼は“なんだ・・・残念”とかなんとか言ってる。当たり前だっつの!なんで俺が裸エプロンしなきゃなんねぇんだよ!?あれは女の子がやるからいいんだろうが・・・。
ほんとにコイツ訳わかんねぇ・・・。俺の身マジで大丈夫なんかな・・・?

 こんな感じで始まった新婚生活。
俺まだまだ犬飼のこと知らねぇみたいだし・・・(まさかあそこまでエロいと思わんかった・・・)これから大変なことになりそう・・・だよな?