ふと気がつくと、ロイがソファで寝ていた。
さっきまで漫画を読みながら騒いでいたはずなのに・・・・・。


 ロイが俺の部屋に来たのは2時間ほど前。
暇だとか言って入ってきた。
俺は丁度、お気に入りの本を読んでいたところで・・・・・。
その本があまりにもおもしろいところで、中断したくなくてロイの相手をしてやらなかった。
かまって欲しかったのか、まとわりついてきたりもしていたが・・・・ 無視して本を読んでいたらいつのまにか大人しくなっていた気がする。
結局俺は最後まで本を読んでしまって、気付いたらロイが寝てしまっていた・・・・・ということだが・・・。


 読みかけの漫画を放りだしたまま、すっかり寝てしまっているロイ。
そのソファの横に行って座り込み、ロイの寝顔を覗き込むと、なんの夢を見ているのか、幸せそうに笑っている。

『黙っていると可愛いのに・・・・』

 思わず出してしまったその言葉は半分嘘。
起きていて騒いでいるときもロイは十分可愛いと思っている。
でも・・・・こうやって静かに眠っているロイもまた、確かに可愛い。
 普段から幼い顔をしているロイは寝顔はさらに幼く見える。
甘えたな虚<ホロウ>。
“暇だから”とやってきたのに、さっきかまってやらなかったことを少し悔いる。
それでもきっとコイツは、何度でも俺のところに来るんだろうな。
謝罪も込めてそっと柔らかい髪に指を絡める。
顔にかかる髪をすくように撫でると、まるで起きているかのように口元を緩める。

『イー・・・・ル・・・・・だぃ・・・す・・・き』
『っ!?・・・・ロイ??』

 ふいに呼びかけられ、起きていたのか、もしくは起こしてしまったのかと焦るが、寝言だったようで・・・。
夢の中で俺と遊んでいるのか?
そんなに幸せそうな顔で・・・・・。楽しいか?
現実と、どっちが楽しい?
夢の俺のほうが優しいか?
 夢の中の自分にまで嫉妬するほど・・・・・ロイのことが大切で。
好きで好きで・・・・・愛しくて・・・・・。
それなのにどうしてもっと優しくしてやれない?
なにを差し置いてもロイが1番だと言ってやれない?
 結局俺が・・・・俺のほうがロイに甘えているからか。
どれだけ突き放してもロイは自分のもとに帰ってくると、ロイの優しさに甘えているからか・・・・・。

『ごめんな・・・・・ロイ』

 眠るロイにそっと口付ける。
柔らかな唇が触れて・・・・・離れた瞬間、ロイの目も開けられて・・・・。

『ん・・・、イール?どうしたの?』
『悪い・・・・起こしたか?』
『ん〜?違うよ〜。夢の中でね、イールがいっぱい謝ってるから・・・どうしたんだろう?って・・・・それで起きたらイールも浮かない顔してるし・・・・・なにかあったの?』
『・・・・・・。いいや、何もない。・・・・愛してる、ロイ』
『うん!俺も!!ん?イール夢の中でも言ってくれたね』
『・・・そうなのか?』
『うん!いっぱい言ってくれたよ』

 “なんか幸せ〜”と笑うロイに、さっきまでのもやもやがすーっとどこかに流れていく。
俺も幸せ・・・・・そう思えるほどに。
ふとロイを見ると、あくびをひとつ。
そして、こしこしと目を擦っている。まるで小動物。
今すぐ食ってしまいたい。
でもそういうわけにも行かず、眠いならベッドに連れて行かなくては風邪を引くと思い、立ち上がる。

『寝るか?』
『んーーー・・・・・イールはもう本読み終わった?』
『ん?あぁ。読み終わった』
『じゃぁイールとしゃべりたい。・・・・ダメ?』

 小首をかしげるロイ。
ずっとしゃべりたいの我慢してくれてたんだな・・・・。
“ダメな訳ないだろう”と隣に座ってやると、ロイは嬉しそうに俺に擦り寄ってくる。
その肩を抱いてやって、もう一度唇を合わせる。
擦りすぎて紅くなっている目の下を優しく撫でてやりながら、反対の目の下に口付けると、くすぐったそうに身をすくめるロイ。
逆の方も同じようにしてやって、最後にまた唇に戻る。

『イール・・・ちゅうもいいけどさ、話しようよ』
『じゃぁなにか話せ』
『出来ないだろ!キスばっかして邪魔してくるくせに〜!!』
『わかった。聞くから怒るな』

 そう言いつつ、何度もキスを繰り返してやった。
あんな可愛いの見せられたら我慢なんて出来るわけないよな?


                                                                    end