キラキラ
俺の大好きな人。
かけがえのない人。
俺、この人がいなかったらきっと生きていけない。
グリムジョーも、ウルキオラも、
虚圏にはたくさん、大切な、大好きな人がいるけど・・・・。
みんなに対する大好きと、この人に対する大好きって全然違うものなんだ。
きっと、永遠に。
俺の日課はイールの部屋に遊びに来ること。
朝起きて、顔を洗って・・・・・すぐにイールのところに飛び出していく。
今日もいつも通り飛び出してきて、一緒にご飯を食べて、いろんなこと話して。
毎日来てるのに尽きない会話はいつまでも続く。
『ロイ・・・・』
『ん〜?なぁに?』
イールに名前を呼ばれるの、好き。
すっごい優しく呼んでくれるから。
すぐにイールのもとへ駆けて行くと、イールは俺の手を引いて、自分が座る足の間へと俺を座らせた。
後ろから包み込むように抱きしめられると、胸がキュンとなる。
背中にイールの温もりを感じて、前に回された腕をきゅっと握る。
ふいに髪にキスされて。
思わずピクンと胸が高鳴った。
イールはその後、俺の髪に鼻先を埋めて・・・・。
妙にこそばゆい。
『イール??どしたの??くすぐったいよ・・・・・・』
『・・・・・いい匂い。髪、ふわふわだな』
くしゃくしゃっと髪を撫でられて、首を引っ込める。
お腹の前で人形でも抱くように回される手。
イールは長い指を組んでいて・・・・・。
俺にとったら全部が羨ましいのに。
どんなに背伸びしても届かない身長も。
サラサラと風に舞う髪も。
その綺麗な指も。
大人っぽい仕草も優しい声も。
全部全部俺にはないから。
イールがすごく眩しいんだ。
『俺は・・・イールの髪のほうがいい』
『ん?』
『髪だけじゃなくて・・・・全部全部。イールの全部が大好き。俺なんか・・・・』
なんにもいいことないよ・・・
そう続くはずの言葉は、小さくなる声のせいで消えていく。
イールみたいになりたい。
イールは俺の憧れで、俺もいつかこんな風になりたい・・・・って。
『いっ?!・・・・・った・・・・・??・・・・・何するんだよ?!イール』
耳に痛みを感じて思わず声をあげる。
その痛みの正体は、イールが俺の耳を噛んだからなんだけど・・・・・。
なんでなにも悪いことしてないのに耳噛まれるのかわからない俺は当然怒る。
俺、イールのことちゃんと褒めたよね??なのになんで俺が噛まれなくちゃいけないの・・・??
『あのな、俺なんか≠ニか言うな』
『・・・・??』
『2度と言うなよ?わかったか?』
『・・・・・なんで?だって・・・・俺、ほんとにいいとこなんてないもん』
『はぁ?何言ってんだ。・・・・・カス』
『ほら、イールだってカスって言うじゃん俺のこと』
『やはり莫迦だなお前は。俺なんか≠ニか言うからお前はカスなんだ』
『意味・・・わかんない』
俺なんか≠チていうから俺はカス≠チてどういうこと??
俺になにもいいとこがないからカス≠ネんじゃないの?
悶々と考えて、ぷぅっと膨れている俺を、イールはまた髪をくしゃくしゃと撫でながらぎゅうっと抱きしめてくる。
肩口に顎を乗せられて、少し重い。
『お前は自分の魅力がまったくわかっていないな』
『俺の・・・・魅力??』
『俺がまったく魅力のないやつにこんなに夢中になるわけないだろう?』
頬にイールの形のいい唇が当たる。
顎をつかまれてふにふにと何度もキスをされて、唇にも。
顎をクイッと上げられて首にもちゅぅっとキス。
鼻先でくすぐられて、くすぐったさに身を捩ると、抱き上げられてイールの方を向かされて膝の上へ座らされた。
目を合わせられなくて、少し俯く。
イールはまた俺の顎を捉えて俯く俺の顔を上へ上げようとする。
俺は固く目を瞑った。
『なんで目瞑ってるんだ?こっち見ろ』
『・・・・・・』
首を横に振ってそれを拒否する。
イールは呆れたようにため息をついた。
それが少し怖くてビクッとすると、イールがそっと俺を抱き寄せた。
ビックリしたけど目を開けられなくて、そのままイールの暖かな胸に体を預ける。
『じゃぁそのまま聞いてろよ・・・・?』
『・・・・・?』
『お前は俺の全部が大好きだって言ったよな?俺だってそうだ。お前の全部が好きだ。ロイを愛してる』
『っ・・・・』
『このふわふわの髪も。小さい体も、純粋な目も。他にも言い切れない魅力がたくさんある』
『・・・・・・』
『俺にとったらお前がすごく眩しい。だから、俺なんか≠ネんて言うな』
『・・・・・イー・・・・・・ル・・・・』
俺はやっとのことで顔をあげてイールを見つめる。
涙ぐむ俺の瞳を、イールが親指でぬぐってくれて。
グスグスとなっている鼻先にちゅっとキス。
それに少し紅くなると、唇にも優しくキスをしてくれて・・・・・。
俺はぎゅぅっとイールに抱きついた。
俺が落ち着くまで、イールは黙って俺を抱きしめていてくれた。
俺が落ち着いた後、イールが教えてくれた。
自分で自分のことはわからないものだと。
他人のことはよく見えるから、他人の方が魅力的に見えるのだと。
だから、俺がイールを羨ましく思っているのと同じように、イールも俺が羨ましいと思うことがあるって。
他人と違ってて当たり前なんだって。
その人にはその人の魅力がたくさん溢れてるから。
だからイールは怒ったんだね。
俺なんか≠ネんて言っちゃダメなんだよね。
でも・・・・・・
『やっぱりイールはすごいね。そんなこと知ってるんだもん。俺、やっぱり自分の魅力なんてわかんないけど、イールが見てくれてるんならそれで十分!』
『あぁ。俺がずっと見ててやる。お前の魅力を1つずつお前に教えてやるよ』
『うん!!イール、大好き!!』
『・・・・素直なとこもロイの魅力の1つだな』
俺の方からキスを強請り、さっきよりも少し深く長めのキスをする。
唇を離した後、ぎゅうっと抱きついて・・・・・
抱きしめ返してもらったらすごく幸せ。
髪撫でてもらうのも、小さいキスも全部大好き。
今日もイールにたくさん甘える1日が、俺の日課。
大好きとはちょっと違うの。
イールみたいに大人じゃない俺には少し照れ臭い言葉だけど・・・・
イールのこと、愛してるから。
そう言ったら知ってる≠ネんて言われたけど・・・・・
わかってくれてても、言葉でも伝えたいんだもん。
イールに対する気持ちならどんな手段でも全部使うから。
イールが俺に言ってくれたり、体で伝えてくれるから。
それ以上に、俺も伝えたい。
特別な人・・・・・・愛してる。
end