今日、恋次が俺の家に泊まりに来ている。
さっき早めの晩御飯を済ませて、今恋次は風呂に入っていて俺は1人寂しく部屋でマンガを読んでいた。
それにしても長い風呂だ・・・・・。恋次が風呂に入りだしてもぅ40分ぐらい経つ。髪長いから時間かかんのかな?俺どんなに長く入ってても30分かかんねぇんだけど・・・。
そう思った矢先、階段をリズムよく上がってくる足音が聞こえる。明らかに恋次の足音だ。俺はドアの方を見て、ドアが開かれるのを待った。
すぐに足音がやみ、ガチャっとドアが開く。
『あ〜さっぱりした。一番風呂もらって悪ぃな』
『・・・・・・いや・・・・別にいいんだけどよ』
 風呂上りで熱いのか恋次はパンツ1枚。バスタオルを首に掛けてガシガシと髪を拭いている。真っ赤な長い髪にどうしても目がいってしまう。鍛えられて引き締まった体にも一応目はいくけど・・・・見慣れてしまったためどうも思わないが・・・ 髪は・・・・降ろしてるのがめずらしいから・・・。
『ん?なんだ??一護』
 俺がじーっと見ているのを不思議に思ったのか、恋次が首をかしげながら俺を見返す。
『髪・・・・やっぱ長いなぁと思って・・・』
『あぁ〜だいぶ伸びたしな』
 言いながら前に垂れ下がっている髪を右手でバサッとかき上げた。
かっこいい・・・・・・・・と思ってしまった。腰に手を当ててうっとうしそうにするその仕草にドキドキしてしまった。水気を含んで少し重そうな髪の隙間から覗く鋭い目で見られるとドキドキは最高潮に達する。
普段1つにまとめていてめったに見ることが出来ない下ろしている髪。それだけでも かっこいいとときめいてしまっていたのに、そんなかっこいい仕草をされたら俺の心臓も限界を超えてしまう。
なんか違う知らない人を見ているような気がして、俺の隣に腰を下ろした恋次を直視できない。
恋次は俺の異変に気付いたようで、恋次と逆を向く俺と目を合わそうと覗き込んでくる。俺はそれをさらに避けてそっぽを向くもんだから恋次も意地になってくる。
『一護。てめぇなんでそんな避けやがる?さっきは じーっと見てると思ったら・・・』
『なんでもねぇって!!』
『嘘つくんじゃねぇ!じゃぁなんでこっち見ねぇんだ?!俺なんかしたかよ?』
 恋次は俺を自分の方に向かせようと必死になって俺の肩を掴んでくる。なんでこんなバカ力なんだか知らねぇがすっげー痛いんだけど・・・。
肩が外れそうなほど強い力で引っ張られ俺は観念しておとなしく恋次の方を向く。
『別に・・・恋次がなにかしたとかじゃなくて・・・・いや。したのか?』
『はぁ?!俺のせいか!?何したってんだよ?俺覚えねぇんだけど・・・』
 飯食ってからも別に普通だったし・・・・そっからすぐ俺風呂入ったし・・・・・とかなんとかブツブツ言いながら恋次はなにやら真剣に考え出した。
『やっぱ風呂先に入ったの怒ってんのか?!』
 全然検討違いなこと言い出すし・・・。
『違うって!・・・・・・そんなんじゃなくて・・・髪・・・』
『はぁ?髪??』
 コレがどうしたんだ?と不思議そうに指で人房つまみ、頭の上にはてなマークを浮かべている。
『・・・・・下ろしてんのめずらしいから・・・・知らないやつみたいな気がする・・・』
『めずらしいって・・・・・・俺ヤるとき下ろしてるだろ?』
『ぅ・・・・ッるせぇな!!!そんなん見てる余裕ねぇんだよ!!!』
 確かに下ろしてるけど・・・。こんなにはっきり見たのが初めてだっつってんだよバカ恋次。
『へ〜・・・でも一護でもそんなこと思ったりすんだな・・・』
 少しニヤニヤしながら恋次はさっき暴れたときに下がってきて目にかかる髪をまたかき上げる。それを直視してしまった俺は またドキドキが止まらなくなる。なんでコイツこんな色気あるんだよ・・・・・・。
『・・・・・・それ』
『ぉ?なんだ??』
『俺の前意外で髪かき上げたりすんな』
『はぁ?なんでだよ?』
 他のやつが見て恋次に惚れたら困るから・・・・・・そんなこと恥ずかしすぎて言える訳ねぇ。こいつ自分のこと全然わかっちゃいねぇ。
『なんでも!!やんなよ!?』
『・・・・・一護がそこまでやだっつーんならやらねぇけど・・・。理由なくちゃなぁ〜・・・』
 マジムカつく。こいつもしつこいから絶対聞き出すまで 容赦ねぇんだろうな・・・・。どうやっても聞き出してくるに違いない・・・。どうせ言わされるんだし妙なことさせられないうちに言っといた方が賢いのか??前も内緒事しててなかなか言わなかったら大変なことになったもんな・・・。口に出すのもおぞましい。思い出したくもねぇ・・・。
『黙ってちゃわかんねぇだろ一護。なんだよ理由』
『・・・かっ・・・・・・・かっこいいからに・・・決まってんだろアホ・・・///』
 今の恋次の顔おもしれぇ。鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してる。いわゆるアホ面。コレをかっこいいと思っちまうんだから相当だな。
『他のやつの前でそんなんされて惚れられたら困るからな・・・・////・・・ッ言ったからな!!やんなよ!?』
『・・・・・あ・・・・あぁ。わかった。やらねぇよ。つーか俺まず人前でめったに髪下ろさねぇし』
『あ・・・・・俺言い損??』
 そうだよ・・・わざわざ言わなくてもよかったじゃねぇか・・・・恥ずかしい思いして・・・・・バカみてぇ。つーか俺バカか?考えたらわかるじゃねぇか・・・・。あぁ〜〜・・・最悪、顔熱い・・・。
『まさか一護からそんなこと聞けると思ってなかったぜ?サンキュ』
『うるせぇなもぅ!!そんなかき上げるほどうぜぇなら切るかくくるかしろよな!?』
『切るのは無理だなぁ〜・・・かっこいいとか言われたらなぁ。くくるのは髪乾いてからな。つーかもぅ今日は下ろしたまんまだけどな。寝るから』
 何回もかき上げるの見れるぞ?なんてわざとらしく髪を触りながら言ってくる。俺はその髪を軽く引っ張って耳元に唇を寄せる。
『無意識にしてんのがかっこいいんだよバーカ』
 やっぱ言わなきゃよかった。恋次もなんか“そんなんじゃぁ意識しちまって出来ねぇだろうが!!”とかごちゃごちゃ言ってるし・・・。でもたぶん恋次癖みたいにやってると思うからまた見れるだろうな。見逃さないようにしないとな。
あっ・・・ほらいきなりやってる。くそ〜って“無意識ってどうすりゃいいんだよ?”とか考えながら もぅ無意識でやってんじゃん。バカなやつ。それがおかしくてたまらなくて俺は笑いを堪えきれず、笑いながら恋次の髪をぐしゃぐしゃにする。
『てっめ!なにすんだよ!!しかもなに笑ってやがる!?』
『お前ほんとおもしれぇ〜!!うん。恋次かっこいいよ』
『な・・・ッ・・・なんなんだよ・・・』
 訳がわからず混乱する恋次をほっといて、俺は恋次の髪に鼻先を埋める。ほんのりとシャンプーのいい香りがする。
そして恋次の髪をかき上げてみる。右耳と変な形の眉毛と刺青が見える。なんかかき上げんの楽しいな。俺自分のじゃ出来ないから新鮮ではまりそう。
 恋次はそんな俺の好きなようにさせてくれる。黙って俺がすることを見ている。
俺はかき上げて覗いた恋次の 右目の目じり辺りに軽くキスする。恋次はくすぐったそうに右の目を閉じた。
『どうせなら口にしろよな』
 言うと同時に唇が重なる。ついばむ様なキスが妙にくすぐったくて、俺はその変に恥ずかしい気持ちを隠したくて恋次に抱きついた。
『なぁ一護。俺はその・・・・・髪かき上げたときしかかっこよくないのか?』
『はぁ?』
『どうなんだよ?』
 また俺をからかっているのかと思って恋次を見ると、恋次の顔は真剣で余裕もない。それが可愛くて俺はまた笑ってしまった。
笑うと余計に余裕のない顔になってきてさすがに俺も悪いなぁと思ってきた。
『そんな顔すんなって。男前台無しだろーが。・・・・・・かっこいいよ、なにしてても。ただ余計にかっこよく見えたってだけで・・・』
 そう言ってやった瞬間の驚いた顔と嬉しそうな顔はやっぱり男前で、照れてまた無意識で髪をかき上げた恋次はさらにかっこよかった。
そうやって俺は何度もお前に惚れさせられるんだよ・・・・・・な?