式終了後、俺達は一度教室へと帰らされた。
当然俺は教室には帰らず、屋上に行く。
ココにいるほうがアイツの動きを見ることが出来るから・・・・・・。
頭から離れない綺麗な顔。
耳に残る声。
こんなにも誰かのことが気になるなんて、今までにはなかったのに。
一度だって、誰かのことを知りたいとか、俺を知ってほしいとか思ったことはなかったのに。
アイツだけは・・・・・今までのやつとは違う。
こんなにも・・・・・・・
『っと・・・・出てきたな・・・・』
ざわつく校庭を見ると、部活動に勧誘する2,3年の列の間を、1年共が通り抜けているのが見える。
1年が帰るときを見計らっていたのだろう。
その中をジッと見ているが・・・・・一向にアイツの姿が見えない。
もうほとんどのやつが校庭に出ていて・・・・・帰ろうとしているやつまでいるのに。
見逃すはずはない。
それに・・・・あれだけ目立ったやつだから、出てきたのならもっと周りも騒ぐはずだ。
俺は、1年の教室に向かった。
1年の教室の前には誰もいなくて。
校庭のざわつきが聞こえるほどに静かだ。
(アイツは確か・・・・・B組の列にいたはず・・・・・。)
B組の前へとやってきた俺は、勢いよくドアを開ける。
そしたら・・・・・ヤツがいた。
窓際の席で、ずっと校庭を見ていたアイツは、開け放たれたドアの音に驚きこっちを振り返る。
『・・・・・・誰?』
『二年。グリムジョー・ジャガージャック』
『・・・・・先輩・・・・?』
『お前、帰らねぇのか??』
『あんなに・・・・人がいるところに出たくないんですよ』
『へぇ・・・・・・』
あの人ごみはしばらくは引かない。
ということは、もうしばらくこいつと2人でいれるってことだ。
俺はニヤリと笑って、やつが座る席へと近づいた。
隣の席からイスを引っ張り出して、やつの正面に座ると、表情にはほとんど出さないが、迷惑に思っているだろうことはわかった。
俺に対してなにかしら反応をしめすのがおもしろい。
それに・・・・・・・コイツは俺を見てまったく怯えない。
こんなやつは初めてだ。
まっすぐに俺を見る、恐れも揺るぎもしない大きな瞳。
近くで見てもやはり綺麗な顔。
きめ細かい肌も・・・・・・・触れたいと思うほど。
『なんの用ですか・・・・?』
『ぁ?別に。ただ通りかかっただけだ』
『・・・・・通りかかっただけなのにドア開けますか?』
『へぇ・・・・・言うじゃねぇか・・・・ウルキオラ』
『・・・・・?なんで俺の名前・・・・』
『式の挨拶で呼ばれてたからな』
何度も伸びそうになる手を必死で押さえる。
触れたい。
この手の中に入れたい。
いっそのこと俺の手で・・・・壊したいと思うほどに。
だが・・・・それを許さない雰囲気。
コイツはすきだらけのように見せかけて・・・・・俺に一度だってすきを見せていない。
だから・・・・まだ行動に出るのは早い。
どうしても手に入れたいから・・・・・・。
テメーは俺が時間をかけてゆっくり落とす。
この学園で、俺のことしか考えられなくなるまで。
『なんの用だと俺に聞いたな?』
『・・・・・・』
『テメーが気に入った』
『はぁ・・・・・・・?』
『この綺麗な顔が気に入ったつってんだよ』
『・・・・・・??』
『俺に気に入られたんだから光栄に思えよ』
『意味がわかりません』
『今はわかんなくてもいい。・・・・・おっ・・・そろそろ人もまばらだな。帰れんじゃねぇか?』
『あぁ・・・・はい』
『じゃぁな、ウルキオラ』
俺はガタッと立ち上がって、ウルキオラを残し教室を出る。
綺麗な顔≠ニ俺が言った瞬間のやつの反応。
自分の顔が綺麗なんてこれっぽっちも自覚してねぇって顔だったな。
ほんとにおもしれぇやつ。
ますます気に入った・・・・・・ウルキオラ。
『グリムジョー・・・・・先輩』
ジャガージャック≠ニ言ったか?
確かこの学園の理事長の名前もジャガージャック≠ニ言った。
今朝・・・・一瞬だけだったが目があったのは、あの人だった。
あの髪の色、忘れるはずがない。
あの人が現れたときの先輩の反応から、あの人が只者じゃないってことはわかっていた。
理事長の息子で・・・・・しかしあの格好に先輩の反応からすると・・・・・人格はよくはないのだろう。
極力人とは関わりをもたないでおこうと思っていたのに・・・・・厄介な人に捕まってしまったな・・・・・。