Jealousy
獄寺の中心はいつでもツナで・・・。そんなこと最初から解ってた。解ってて付き合いだしたけど・・・日に日に俺の心の余裕がなくなっていってる。こんなんじゃ獄寺に呆れられるな・・・。
いつもと変わらぬ学校。野球の朝練から始まる清々しい朝。・・・のはずが、今日は少し違った。朝練までは同じだった。違ったのは教室に足を踏み入れてから。パッと目に付く自分の恋人、獄寺はいる。でもいつも近くに居るはずのツナの姿がない。不思議に思い、自分の席で機嫌悪そうに眉間に皺を寄せて座っている獄寺に話しかける。
『よぉ獄寺、ぉはよ!今日ツナどうしたんだ??』
『10代目は風邪を引かれて今日はお休みだ』
『ツナが風邪!?大丈夫なのかぁ??』
『少し熱がある。朝看病するために俺も学校を休むと言ったら怒られた・・・』
機嫌悪ぃな・・・ほんとに獄寺の中心はツナなのな。・・・って、いけねぇよなこんな考え方。
『そんなすねんなよ』
『すねてねぇよ!!バカ本!果たすぞ!!』
獄寺がまたどこからかダイナマイトを取り出す。ほんとに短気だよなぁ。さすがにタバコに火付けるまではしなかったけどな。
『ハハッ!教室で花火はまずいって!・・・学校終わったら一緒にツナんち行こうぜ?なッ?』
『ッ・・・。お前にしちゃぁ良いこと言うじゃねぇか。お前と一緒なのは気にくわねぇケドしゃぁねぇな』
嬉しそうな顔しちまって。やべぇ。すっげー妬ける。でもまぁ今日はツナいねぇし。3人でいるのも楽しくて好きだけど、たまには2人きりってのもいいよなvV今日1日楽しまなくちゃもったいねぇよな??
俺は得意のプラス思考で今日を思いっきり楽しむことにした。
1時間目から3時間目までのつまらない授業が終わって4時間目は数学。先生が黒板で説明してるけどさっぱりわかんねぇ・・・。あぁ〜暇だなぁ・・・獄寺でも見とくか・・・。
獄寺の席は廊下側の列の前から3番目。俺は窓側から3列目の一番後ろ。ここから獄寺はよく見えてお気に入り。一番後ろだから何しててもバレないしな。
俺は獄寺の観察を始める。
獄寺ってあんなふうに見えてちゃんと授業聞いてんだよなぁ。寝てるとこ見たことねぇし。おもしろくはなさそうだけど・・・。こんな問題簡単なんだろうな。あ・・・あくびした。可愛いなぁvV あっ。獄寺当てられた。簡単に答えちまうし・・・。先生の顔おもしれぇ〜。すっげー悔しがってる。獄寺が頭良くなかったら完璧にごちゃごちゃ言われてるけどな。先生達やりずれぇだろぅなぁ。
『・・・本・・・・・・山本・・・・・・おい!聞いてるのか山本武!!』
『ぅあッ!?』
やべぇ〜・・・獄寺のこと見すぎてて聞いてなかった・・・。
『今大事なところだ。ただでさえお前は危ないんだからしっかり聞いておけ!ついでだ、(2)の答えを教えてもらおうか?』
『え〜っと・・・(マジわかんねぇんだけど・・・)』
『みろ、聞いてないからそういうことになるんだ・・・』
あ〜始まった。この先生うるせぇんだよなぁ。参ったな・・・。まぁ授業潰れるしいいか!バカにされてちょっとムカつくけど・・・。
『聞いてるのか山本!だいたいお前は『うるせぇよ・・・』』
先生の声とかぶせて誰かが声を発する。それは確かに俺の恋人の獄寺で・・・。
『なッ!?獄寺!?なんだお前は!』
『うるせぇって言ってんだよ。わかんねぇやつに教えてやるのが先生なんだろ?そんな小言言ってる暇あったら一問でも説明してやったらいいだろうが。・・・・・・まぁ、お前の教え方じゃわかるもんもわかんねぇけどな』
『なッ!!?何をッ』
キーン・・・コーン・・・カーン・・・コーン。ちょうどタイミング良くチャイムが鳴る。先生は獄寺相手に言い返せないと思ったのか委員長に号令を促す。そして逃げる様にせかせかと教室から出て行く。
俺はその一部始終を他人事のように見ていた。でもよく考えたら獄寺は俺を助けてくれたんだよな??それがわかった瞬間嬉しくて嬉しくて死にそうだった。だってあの獄寺が・・・俺のためにあんな怒ってくれたんだぜ?
俺はガタンッとイスを倒して立ち上がった。そして獄寺の席へ走る。
『獄寺ぁ〜ッ!!』
『なッ!?なんだ!?』
俺がすごい勢いで獄寺のもとに来たのがビックリしたのか獄寺が少しひき気味になるが、そんなことかまってられない。
『マジサンキュなvV俺すっげー嬉しいvV』
『バッ///なに言ってんだ!?俺はアイツの教え方が下手くそすぎてマジムカついただけで・・・ッ』
『うんうん。そうなのな〜。俺もすっげームカついたけど獄寺が言ってくれてスッキリしたぜッ』
『だからッ!!別にお前のために言ってやったんじゃねぇんだからな!!勘違いすんじゃねぇぞ!?』
・・・・・・マジでなにやってんだ俺は・・・。俺があそこで止めに入んなくても山本ならいつものノーテンキで上手く交わせただろうに・・・。でもあの野郎ぜってーろくな事言わなかっただろうし・・・。山本に悪口言っていいのは俺だけだ。他のヤツがバカにすんのは許せねぇ。
『でもあのうるさい小言から逃がしてくれたのは獄寺だしな!サンキュvV』
『・・・・・・///ぅるせぇって・・・飯行くぞ・・・///』
『ぉうvV』
俺は上機嫌で、先に出て行く獄寺の後を追った。
購買に寄ってパンと飲み物を買って屋上へ向かう。いつもの如く誰もいない屋上。それはまぁ俺たちが立ち入り禁止なのに入っちゃってるから誰も居なくて当たり前なんだけど。
改めて思う。2人っきりなんだなぁって。これから先、学校で2人っきりなんて何回あるかわかんねぇ。これってやっぱチャンスなんかな?
俺と獄寺はいつも座る位置に行き、フェンスを背もたれにして隣同士に座る。買ってきた焼きそばパンの袋を開けてかぶりつく。獄寺も隣でメロンパンにかじりついている。かなりの量のパンを買ったけど今が食べ盛りな俺たちにとっては一瞬。買ってきたパンが全部なくなって、獄寺は食後の一服・・・かなんかでタバコをふかし始めた。俺は雲1つない真っ青な空を見上げる。
『ぉい。なにボーっとしてんだよ?』
『ん?あぁ。悪ぃ』
『そういえば10代目の見舞い一緒に行くっつったけど今日野球ねぇのかよ?』
『今日は都合よく急に休みになったんだvV自主練するつもりだったけどツナが休みっつーんならお見舞い行かなきゃだろ?』
『へッ。解ってんじゃねぇか。ファミリーはボス第一だ』
また・・・嬉しそうな顔。ツナの事でしかしない顔。
俺にはしてくれねぇの?笑いかけてくれねぇの??俺って獄寺の何?恋人??そう思ってんのは俺だけ?獄寺からしたら俺は友達??それ以下か?
苦しい・・・考え出したら止まんねぇ。こんなにも獄寺が好きなのに!!
『なぁ・・・獄寺』
『なんだよ』
『俺のこと・・・好き?』
『・・・ッ!?はぁ??なに言い出すんだよ急に!?』
『・・・・・・』
そういえば獄寺に“好き”って
言われたの何回あるっけ?
俺たちが付き合いだして5ヶ月。告ったのは俺から。正直フられると思ってたから、“好きだ”って言った後に頷いてくれたのはすごく嬉しかった。ツナにもちゃんと付き合ってるって言った。軽蔑されると思ったけど、ツナは俺たちのお互いの気持ちに気付いていたらしく、案外すんなりと受け入れてくれた。それから2人で遊びに行ったりもしたし・・・そのとき獄寺に“好き”って言ってもらえてすごく嬉しかった。その後も何回か言ってくれたことはあったけど、最近言ってくれねぇよな?
今はどう思ってるんだろう?
『フ〜・・・・・・・・』
獄寺がタバコの煙をゆっくりと吐き出す。俺はそれにビクッと体を緊張させた。
『ぁのなぁ・・・・・・今日は朝からなんかボーっとしてるなぁとか思ってたら・・・・・・なにいろいろ考えてんだ?バカじゃねぇの??なんか思うことあるんなら言やぁいいだろーが。なに考えてんのか知らねぇけどな・・・俺はッ・・・ちゃんとお前が・・・・・・好き・・・・・・ッなんだからな///』
肝心なとこが小さかったけど2人しかいないこの屋上ではその声は十分だった。
俺は感極まって横に座る獄寺に抱きつく。
『ぉまッ!!?何しやがる!!離せアホォッ!!///』
『獄寺・・・もっかい言って・・・・?』
絶対離してなんかやるもんか・・・それぐらいきつく抱きつく。
だって今離したら絶対言ってくれない。だから離せない。
『あぁ〜ったく。わかったから!!とりあえず力緩めろ!!いてぇよ』
『あ・・・悪ぃ・・・』
『・・・んで、言ってやってもいいけどな・・・その前に。なに考え込んでたんだよ?聞いてやるから話しやがれ』
こういうときの獄寺は強い。下手に抵抗すると大変なことになるから俺は全て話すことにした。
ツナに嫉妬してるなんて呆れられるかもしれねぇケド・・・。朝から考えてたのもバレてるみたいだし・・・。
・・・・獄寺ってちゃんと俺のこと見ててくれたのな。もぅちょっと早く気付けたらこんなに悩まなくても良かったのかもなぁ。
俺の思いは全部話した。話してる間、獄寺の肩にもたれながら。(めずらしく許してくれたんだよなぁvV)案外本人に打ち明けるとスッキリするな。1人で悩んでた自分がバカみたいに思えてくる。でも獄寺は結構真剣に聞いててくれてた。もっと話してる最中も“バッカじゃねぇの?”とか言われるの覚悟してたんだけどな・・・。
話し終わってしばらくの沈黙のあと、獄寺が口を開く。
『・・・・・・ほんとにお前バカだな。普段なにも考えないくせにたまぁ〜にそうやって考えたりするからろくでもねぇ方向に行くんだよ』
『ハハッ。だよなぁ〜やっぱ俺らしくないか』
『最後まで聞けって。俺は10代目をお慕いしてる。10代目に対する感情は“尊敬”だ。でもお前は違う。俺は・・・好きでもないヤツと付き合ってやれるほど暇じゃねぇしそんな中途半端なことしねぇ。・・・・俺はちゃんと“山本が好き”だからお前は何も考えなくていいんだよ。わかったか!?///』
『ぅんぅん!十分わかったvV俺も獄寺がすげー好きvV』
久々に言われた“好き”は俺の気持ちを大きく変える。なぁ獄寺、俺はお前の一言でこんなにも左右されんだぜ??
さっきまでの気持ちはなんだったんだろうって思う。今ならこの屋上の上からマイクでもメガホンでも使って
“獄寺隼人は俺、山本武の可愛い大事な恋人です!!てめーら手出しすんじゃねぇぞ!?”
って自身もって叫べる・・・。まぁんなことしたら一生口きいてくれないどころか秒殺だろうけど・・・でもそれぐらい嬉しいな。
そこで丁度昼休み終了を知らせるチャイムが鳴る。グラウンドでサッカーをしていた連中が走って教室に戻って行く。それをぼんやりと眺めていた。俺たちも戻らなければいけないはずなのに・・・動けない。
獄寺も動こうとしないところをみると、俺と同じ気持ちなんかな?
“もう少しこのまま2人でいたいな・・・”
その証拠に俺が獄寺の膝を枕にして寝転がっても何も言ってこない。俺の好きにさせてくれてるのが嬉しくて俺は獄寺を見上げてヘラッと笑う。
『なに笑ってんだよ・・・』
そう言って俺のおでこを手のひらでペチッと叩く。全然痛くなんかねぇけど。獄寺の顔も・・・全然怒ってなくて・・・・・・。ツナに見せるような笑顔じゃねぇケド、俺には俺だけの特権があるのな。獄寺に膝枕とかしてもらえんの俺だけだよなvV
顔のニヤケが止まんなくてこのままじゃまた獄寺に怒られるから誤魔化すために目を閉じる。口元が緩むのは隠せないけど・・・。獄寺はそんな俺に気付いてるんだと思う。頭上で軽くため息が聞こえた。
・・・と思ったら俺の髪に手が触れる。優しく髪をすかれるように撫でられて、俺はビックリして目を開けた。パッと目が合うと獄寺は顔を真っ赤にして目を逸らす。ここで茶化したりしたらもう撫でてくれないだろうことは十分にわかる。だから俺はもう一度目をつむった。もう一回撫でて欲しくて。
獄寺は間を置いてから、しゃぁねぇなぁっと言うようにもう一度俺の髪に手を置いて撫でてくれた。
そのまま俺たちは5,6時間目をサボり、屋上でずっと2人で過ごした。特に何をするでもなかったけど・・・2人でいてこんなに落ち着いて過ごせたのって初めてだな。すげー幸せだった。
やっとみんなが帰り始めて落ち着いたころ、俺と獄寺は荷物を取りに教室に戻った。
『よし!!10代目のお見舞い行くぞ山本!!』
『ぉうvVコンビニ寄って肉まんでも買っていくか』
『おでんも買っていこーぜ!!』
そんな話をしながらコンビニに寄って、肉まん3つとおでんを買ってツナの家へ行く。
呼び鈴を鳴らすといつもと同じニッコリ顔のツナの母さんが迎えてくれた。
『あらあら来てくれたの?だいぶ元気になったからもぅ大丈夫だと思うわ。上がってちょうだい』
『お邪魔しまぁすvV』
俺と獄寺はさっそく行きなれたツナの部屋へと行く。ドアをノックして中に入るとベッドに寝転ぶツナがいた。
『2人とも来てくれたの?ありがと』
『10代目!!大丈夫ですか!?』
『案外元気そうだなぁ〜良かったvV』
『大丈夫。朝熱あったけど今は下がってるし』
『そぅですか。あっ肉まん食べますか!?おでんもありますvV』
『わざわざ買ってきてくれたの?ありがとvVみんなで食べよう』
それから肉まんを食べて、おでんをつまみつつくだらない話をして笑う。いつもと同じようにしゃべってた・・・・つもりだったんだけど・・・・。
『山本と獄寺くんなんかあったの?今日はなんか仲良いね』
『!?』
『っなに言ってんですか10代目!!?』
『なんかいつもと空気違うなぁって』
ビックリした。ほんとにいつもと変わらず獄寺も俺に突っかかってきたりしてたのに・・・ツナってやっぱすげーのな。
『お・・・俺っ・・・トイレお借りします!!!』
獄寺がすごい勢いで部屋を出て行く。余計怪しいって・・・。バカだなぁ〜あいつ。
『山本嬉しそうだね。なんかスッキリしたって顔してる』
『そんな顔にでてるか??』
『だって最近山本元気なかったし。でも解決してよかったね』
そこまで気付かれてるとはなぁ〜・・・。マジで参った。
『やっぱツナすげーわ。さすがボスだなvV』
『ゃ・・・やめてよっ!!そんなんじゃないって。でも・・・俺2人のこと応援してるから』
『・・・・サンキュvV』
話し終わって丁度獄寺が戻ってくる足音が聞こえる。俺はツナと顔を見合わせて笑う。獄寺が少し恥ずかしそうに部屋に入ってくる。
『獄寺くん戻ってきたしゲームでもしよっか』
ツナの提案でまた3人でバカ騒ぎが始まる。
ツナに嫉妬したりとかするけど・・・なんだかんだ言ったって俺は3人でいるの好きだな・・・。これから先もずっとこうやって3人でいられたらいいのに。でももちろん俺の隣は常に獄寺で・・・・・・vV
end