TIME




『獄寺〜?どしたんだボーっとして』
『・・・いや・・・。別に・・・』
『・・・・・気持ち良くなかった?』
『なッ・・・/////んなこと聞くんじゃねぇ!!』
 2人裸でベッドの中で寝転んで、頭の下には山本の鍛えられた右腕。残った左手はさっきから俺の髪をすくように撫でている。
それが気持ちよくてボーっとしてただけで・・・気持ち良くなかったわけじゃない。むしろ気持ちよかったし・・・///
なのにこの不安そうな顔・・・。普段ノーテンキなくせに。俺は山本のこの顔にすこぶる弱いらしく、こんな顔をされると放っておけなくなってしまう。
『・・・・・んな顔すんじゃねぇよ・・・。・・・よ・・・よかった・・・から・・・///
 大きい声じゃ言えないけど・・・・・・恥ずかしすぎる。でもここまでよく進歩したと思うぜ俺は。付き合い始めのころなんか反発したらしっぱなしだったしな。何回山本傷つけてたかわかんねぇ。それでも今付き合えてんのは俺の天邪鬼な性格を 解ってくれてた山本だからだと思うし・・・・口には出さねぇけど一応感謝してる。ほんとにコイツと付き合ってよかったって思ってる。コイツのおかげで俺もこんだけ成長したし・・・。
『最近獄寺素直になってきたなぁ〜。可愛い』
 言葉と同時にキュゥッと抱きしめられる。その瞬間に体に走った腰の痛みに思わず声を上げてしまった。その声にビックリしたのか、山本は抱きしめた腕を緩める。
『!?悪ぃ・・・どっか痛かったか??』
『いッ・・・あんま動かすなって・・・腰痛ぇから・・・』
 そう言うと山本はもぅ一度“悪ぃ”とつぶやき、おでこにキスを落とす。
抱きしめられんのもキスされんのも始めは耐え切れないほど恥ずかしかった。なのに今は当たり前のように受け入れられるようになった。慣れって怖いな・・・つくづく思う。
だからこそ先が欲しくなる。おでこちゅぅだけじゃもの足りない。もっともっとして欲しい。そんな思いが通じたかのように山本は俺の口にもちゅっと唇を合わせる。俺の体を気遣ってくれてんのがよくわかる優しいキス。
『獄寺・・・』
『・・・・なにニヤけてんだよ?』
『ん〜?可愛いなぁって思って。ヤってる最中とはまた違う可愛さだよなぁ』
『てっめ・・・ちょっとは恥やがれ!!』
『ほんとのことだぜぇ?』
 裏表のないいつもどおりの笑顔で、でも言ってることはいつも本気で・・・。性質(たち)が悪い・・・。
 そしてまたさっきのように俺の髪を撫でる。
『・・・・・なぁ・・・俺の髪、撫でんの好きなのか?』
『ん?あぁ。柔らかいし。獄寺も実は好きだろ?撫でてる時大人しいもんな!』
 やっぱりコイツは知ってやがるんだ。俺がなにされんのが好きなのか全部。
『俺はどこに触んのも好きだけどな!嫌か?』
『・・・・・・嫌じゃねぇけど・・・・』
 撫でられんのも触れられんもすっげー好きだなんて言ったらコイツはもぅ俺を1秒たりとも離さねぇ勢いで俺に触れてくるだろうな。 ちょっとそんなのもいいかも・・・・って思ってしまう俺はもう重症なのか?
ってまぁいちいち言わなくてもコイツは容赦なく触ってくるけど・・・・。今もずっと俺の体撫でてるし。ちょっとくすぐってぇ・・・。
『ッ・・・山本・・・・あんま背中触るな・・・』
 俺が少し息を詰めたのに気を良くしたのか、山本は俺の背骨を指で辿るようにゆっくり腰まで下ろしてくる。
『ゃ・・・めッ・・・』
 ゾクゾクと体に電流が走ったみたいな感覚がして思わず山本にぎゅぅっと抱きついた。
『ハハッちょっといじめすぎたか?腰平気かぁ?』
『平気なわけねぇだろバカやろう・・・・もっといたわりやがれ・・・』
 と抱きつく腕に力をこめると、山本悪ぃ悪ぃと抱きつく俺の髪をまた撫でなだめる。
山本の胸が小刻みに震えている。コイツ・・・・・・。
『なに笑ってやがる・・・』
『あっバレてた?』
『当たり前だ・・・』
『だって獄寺がこんなに甘えてくんのってこのときぐらいじゃん?だから俺嬉しくってさ〜』
『うっ・・・・・・んなこといちいち言うんじゃねぇ!』
 顔を上げることが出来なくて山本の胸に顔を押し付けた。くすぐってぇとかごちゃごちゃ言ってたけど知らねぇ。今の俺にそんな余裕ないし。それに・・・嫌がってる訳じゃなさそうだし、だからそのまま押し付けて顔を隠した。
俺が黙っているとだんだん山本も静かになってきて・・・無言で抱き合うだけになる。無視しすぎたか?と少し不安になって山本を見ると、山本がそれに気付いて頭を撫でてくれる。
『どしたんだ?寝ていいぞ?』
『・・・?眠いわけじゃねぇけど・・・・』
 俺が疲れたと思ったのか優しく言われるとその通りに 甘えたくなる。なんかコイツもちょっと眠そうだし・・・。
『獄寺抱いてるとさ・・・なんか安心して眠くなるんだよなぁ〜』
 そんなこと言われるとなおさら・・・。どうやら俺は甘えるのも好きだが、甘えられるのも好きらしい。もちろん山本限定だけど・・・・・・。だから俺はもう一度山本にキュッと抱きついて目を閉じた。それを見た山本も同じように目を閉じ、夢の中へと堕ちていった。
 再び目を開けたとき、大好きな人が目の前にいるのを思い浮かべながら・・・・・・。

                                                                         end