ホワイトクリスマス
一週間程前から商店街を中心にどこの家も緑や赤、金とかイルミネーションで染まっている。すっかりクリスマスムードだ。
教室でも女子達がうるさいくらいに彼氏へのプレゼントどうするとか、マフラー出来たかとか、ケーキ作りたいとかどうのこうの毎時間しゃべりたくっている。
あきないのだろうか?まだ一週間も前だというのに。ってか彼氏がいたらそんなもんなのか?
俺も一応居るんだけど・・・・・男だが・・・。
一応プレゼントを買おうとは考えてた。でもまだいいかとか思ってたんだけどもう考えなきゃいけねぇもんなのか??
俺遅すぎんのかな・・・?こういうのって・・・どうしたらいいんだろうか・・・?
『あの・・・・十代目・・・・今日お家にお邪魔してもよろしいでしょうか?』
こんなこと相談できるのは俺達のことを知ってる十代目しかいねぇ。きっと十代目ならいろいろ教えてくださるはずだ!!
そう思った俺は山本が友達に呼ばれて少し席を外している間にこっそりと十代目に耳打ちする。今日も山本は練習があるはずだから、十代目と2人になれるはずだ。
『別にいいよ。どうしたの?また山本のこと?』
俺に合わせて声を小さくしてしゃべってくださる十代目。なんてお優しいんだ・・・。
しかし図星をつかれ、俺は真っ赤になって俯いてしまう。
そのうちに山本が帰ってきて俺も十代目も何事もなかったかの様に振る舞い山本を含めてまた3人でしゃべった。
『お邪魔します!』
学校が終わって部活がある山本は置いてきて俺と十代目は一緒に下校する。まぁこれはいつもと変わらないんだが・・・。
十代目をお守りするのが右腕の仕事だし。しっかり護衛を含めての一緒の登下校。
そして通いなれた十代目の部屋へとお邪魔する。
『で?どうしたの獄寺くん』
『えっと・・・十代目にご相談が・・・・』
『俺でいいなら聞くけど・・・・』
『はぃ・・・。あの・・・・クリスマスプレゼントって・・・・もぅ考えなきゃいけないんでしょうか?』
『え?クリスマスプレゼント?』
『はぃ・・・。俺、もうちょっと先でいいかって考えてたんですけど、クラスで女子がもぅいろいろと考えてるもんだから俺遅いのかなって思って・・・』
『う〜ん・・・・自分のペースでいいんじゃないかな?そういうのって。確かに女子は早くから準備始めてるけど・・・獄寺くんは獄寺くんのペースでいいと思うよ?』
焦って用意するより、余裕持った方がじっくり悩めたりもするしね。と続ける。さすが十代目。十代目に相談して良かった。
急に肩の荷が取れたように軽くなった気がする。そっか、別に焦ることねぇんだ。
『ありがとうございます十代目!!!』
『別にお礼言われることしてないけど・・・。それより、なにあげるか決まってるの?』
『一応・・・・・リストバンドとスポーツタオル
やろうかって考えてるんです・・・。俺の知ってる店で結構良いの置いてて・・・・』
『そこまで決まってるなら悩む必要ないじゃん。もぅ早めに行って買っといたほうがいいんじゃない?売り切れとか困るし』
『そうっすね・・・・・じゃぁ明日にでも行ってきます!!』
そう十代目に宣言してハッと時計を見ると5時。まだ余裕で店が開いている時間だ。俺は決めたことすぐやらねぇとなんか
落ち着かない。だからもう今から行くことにする。
『十代目、バタバタしてすみません!俺やっぱ今から行ってきます!!!ほんとにありがとうございました!失礼します!!』
『う・・・うん!気をつけて・・・』
俺は十代目の家を出て一度家に帰りお金を取ってから店へと向かった。
『獄寺くんも山本も似たもの同士だなぁ〜』
実は2日前・・・・夜の7時ぐらいに山本から電話がかかってきて今日獄寺くんにされたのと
同じ相談をされていた。もちろん山本にも同じ様にアドバイスした。すると獄寺くん同様山本もさっそく次の日買いに行ったみたいだ。
『なんだかんだ言っても獄寺くんも山本のこと大事なんだよね』
2人の本当の気持ちを一番に理解しているのは実はツナだったりする。
『はぁ〜買えた。絶対山本にはコレが似合うだろ。つーかこれしかねぇな!!ほんとすっきりした。十代目はやっぱり偉大なお人だ』
店で散々悩んだあげく頭の中で山本がつけている姿を
何度も想像した。そして一番似合うなと思った物を買った。だけど実は不安だったりする。気に入ってくれるだろうかとか、やっぱあっちの方が良かったかもとか。
そんな不安を抱きながらも日はどんどん流れ、今日は終業式。クリスマスイブだ。でも今日は今から練習があるらしく会えないらしい。明日のクリスマスは練習休みだから・・・ということで朝から一緒に遊ぶと約束をした。
『悪ぃ獄寺!!待たせたか??』
『おっせーぞ!寒いし早くどっか入らねぇ?』
10時駅前待ち合わせ。山本が来たのは10時1分だったけど・・・・・・俺9時55分からいたし。憎まれ口の1つくらいいいよな?いつもよりソフトに言ったつもりだし。
『ごめんって!どこ行く?』
山本もさほど気にするわけでもなく話を進める。だから俺もスルーしてその話に合わせる。
『ん〜・・・・・なんか食べたい』
『そういや俺も朝からなんも食ってねぇや。軽く食べれるとこでも入るか』
意見一致でとりあえず喫茶店からスタートする。時間はたっぷりある。
そこから服屋とかアクセサリーとかズラッと並ぶ店を順番に見ていって、ゲーセンも入ったりして・・・・なんか山本がUFOキャッチャーやけにうまくてくまのぬいぐるみもらったりして・・・・。店を全部回ったころにはすっかり日が暮れてしまっていた。
そろそろ晩飯食うかって事になって、ファミレスに入って腹ごしらえ。今日のこと振り返ったりしながら一緒に笑って、これからどうしようかってことになった。
時刻は7時を回っている。帰る気はさらさらない。
『俺ん家来るか?俺1人暮らしだし泊まっていってもいいしな』
『ほんとか?じゃぁお言葉に甘えて・・・・』
ってことであっさり俺の家で過ごすことに決定。山本の家だと親父さんいるし。なんかクリスマスに家に上がりこんだりしたら恋人ですって感じで・・・・ハズいし・・・・。
『お邪魔しま〜す!へ〜案外きれいなのな!!』
『案外ってなんだよ』
そういえば山本を家に上げるのは初めてだ。つーか人を家に上げるのが初めてだ。キレイにしててよかった・・・。
『適当に座っててくれ。飲み物持ってくる』
俺は荷物を置いて台所へ行く。
さて・・・・・問題はいつプレゼントを渡すかだ。デートしてる間も考えてた。でも外では絶対渡せないと思ってとりあえず家に呼んだけど・・・・。タイミングだよなぁ〜・・・とにかく落ち着いてから。落ち着いてから渡しゃぁいいんだ。どうせ山本泊まってくし。
心を落ち着かせてからコップに入れたコーラを運ぶ。好きなだけ飲めるようにペットボトルも一緒に持っていく。
『サンキュvV悪ぃな』
『あぁ・・・これ、なくなったら勝手についでいいから』
『おぅ』
そこで会話が途切れる。シーンとした空気が漂い、
あの山本でさえもそわそわと落ち着かない雰囲気を出している。
そしたら急に山本がなにやら叫びだした。
『あぁ〜〜!!もぅ!!獄寺!!!』
『ぅあ!?なな・・・・なん・・・だよ??』
『これ・・・・。・・・・メリークリスマス』
差し出されたのはキレイな包装紙で包まれてリボンまで掛かっている箱らしきもの。
『俺に・・・?』
『当たり前だろ?開けてみてくれよ』
そういわれ丁寧にリボンと包装紙を取るとやっぱりそれは箱に包まれていた。さらにその箱も開けると、中にはシルバーアクセサリーが入っていた。
指輪とネックレス。十字架のデザインで俺好みの・・・・。
『獄寺いっぱいアクセサリー持ってるしどうしようか迷ったんだけど結局・・・やっぱコレが一番いいかなって思ってさ。気に入るかわかんなかったけど・・・・』
きっと俺と同じように考えて悩んで、何度も迷って買ってくれたんだろう。それだけでも十分嬉しい。
『サンキュ山本・・・俺、これすっげー気に入ったぜ?』
『ほんとか!?よかった!!』
心からホッとしたような嬉しそうな顔で笑うから、俺まで嬉しくなってくる。・・・・って俺も渡さなきゃだめじゃねぇか!!
すっかり忘れるとこだった・・・。
『山本・・・・俺からも。メリークリスマス』
『獄寺も用意しててくれたのか!?』
『あたりまえだろ・・・』
『開けてい?』
俺はコクンとうなずく。山本はさっそく包みを開けだす。その間も俺は緊張で張り裂けそうだった。山本は俺好みの物ちゃんとくれた。でも、もし山本がコレでがっかりしたら嫌だ・・・・・・。そう思うと怖くて怖くて見てられなくて、俺は顔を伏せる。
音だけが頭の中に入ってくる。包み開けて、今箱開けた・・・・・。見てるんだよな?どうなんだろ・・・?なんかごそごそやってるけど・・・・
まだ中に包装してあったのか??反応ねぇし・・・。
俺は恐る恐る顔を上げた。ゆっくり山本を見ると山本は手をかざして俺に見せてくる。
『どう?似合う??』
山本の手首にはリストバンド。俺の想像してた通りやっぱりよく似合ってると思う・・・。俺的には。でも山本はどうなんだろ?
俺はとりあえず聞かれたから、コクコクと頷く。そしたら山本は満面の笑みを浮かべて・・・
『俺もそう思う!さすが獄寺。俺のことちゃんと解ってくれてんだなvV俺このデザインすっごい好き。こっちのタオルも。マジサンキュな!大事に使うから』
自分が必死に選んだもの
・・・気に入ってもらえたらこんなに嬉しいもんなんだ。それに・・・やっぱり何もらっても嬉しいんだ。一番嬉しいのは・・・何もらったかじゃなくて、その人が自分のためにどれほど悩んでくれたんだろう・・・ってことなんだ。
『俺も・・・・・これずっとつけるから・・・』
泣きそうなほど嬉しい気持ちって・・・こういう感じかな?俺たぶん今までで一番嬉しい。山本もそうだといいのに・・・。
『ひぁ・・・ッ・・・・んっ』
『獄・・・寺っ・・・・』
あれからすぐお互い余裕もなく体を重ね合わせた。山本の顔もいつものへらへら顔はどこにもなく、いつになく真剣で・・・。
『ゃ・・・まも・・・俺・・・もっ・・・ムリ・・・っ』
『わかってる・・・・俺も・・・・だから・・・・・・一緒に・・・・な?』
急に腰の動きが早くなって俺は山本にしがみ付いた。そして2人同時に果てた。
『なぁ獄寺!!ちょっと起きて来てみろよ!』
水が欲しいという俺に台所から水を持ってきてくれた山本がカーテンを開けて窓の方に手招きする。俺はダルイ体をなんとか起こして山本のところへと行き山本と同じ様に外を見る。
―――――雪だ・・・・・。少し冷えると思っていたら空から雪が降ってきている。
『すっげーきれいだなぁ』
『あぁ・・・』
『積もったら明日ツナん家集合してチビたちと雪合戦だな!』
『バーカ。お前とやったらみんな死ぬっつの!』
本気でガチガチの雪球投げられたらひとたまりもねぇ。山本は確かになぁ〜とかってノーテンキに笑ってるけど
笑えねぇよ。雪って結構痛いし。でも・・・・・・
『積もったらいいな・・・』
『そうだな。え〜っと・・・なんて言うんだっけ?今日みたいなクリスマス』
『・・・・??あぁ。ホワイトクリスマス?』
『そうそうそれ!!なんか今日俺の中で今までで一番最高なクリスマスかも』
そういわれて俺はすっげー嬉しくなった。だから山本をグイッと引っ張って唇にキスして、俺もだって囁いてやったら、山本もすっげー嬉しそうな顔になって・・・ぎゅっと抱きしめあった。
来年もまたコイツとホワイトクリスマスが過ごせますように・・・・・。
end